未来へ
バブみ道日丿宮組
お題:来年の事故 制限時間:15分
未来へ
「私は絶対にお母さんたちを止めてみせる」
少女はそう力む。その瞳には強い意志を感じられた。
「だが、お前がいなくなるんだろ? いいのか」
「いいの。お父さんがいなくなっちゃうのは嫌だから」
そうかとしか俺には言えなかった。
来年に事故で親友がいなくなるなんて話、到底信じられなかった。
むしろこの部屋に居候してる少女がその娘だという話も信じられなかった。
しかし、俺しか知らない暗証番号でこの部屋に入ってきたということはそれなりの情報通か、天才児ということになる。面倒事はやっかいだが、未来の結婚指輪というのがそれを許してくれない。
何でも親友の遺言で娘は俺にしか嫁がせないといういわくつきのアイテムを使ってしまうことになるらしい。
「でも、この指輪がある限り未来は変わらないんじゃないのか」
そう……少女と遭遇した時に結ばれた赤い糸のような指輪は、俺と少女にある。外すことはできず。一定距離離れることすらできない。
あるときをすれば、一定距離の契約が緩くなるらしい。
少女はその時がいつなのか想像ついてないようだが、俺にはわかる。
きっと効力は親友が死んだ……時なのだろう。
あとこのことは本人たちにいうことはできないようだ。その場合は違う形で死ぬだけで解決にはならない。
交通事故にあうのが、通り魔にあうに変わるぐらいの変化らしい。
「それでも私は未来からやってきた。旦那様には申し訳ないけど、諦めて」
そういう少女は悲しそうな顔をしてる。
後悔ないはずなのに、どこかまだ迷いがあるそんな様子。時間だけがただ過ぎてく。その時間の中で、生きてる親友のデートや学校生活を覗く。
自分は本当にそうしてしまっていいのか、良くないのか。
身体と心が完全には制御がうまくいってないようだ。
「……」
少女は直接俺には話さないが、寝言は何度も聞いてるからわかってる。
夢の中、未来で幸せに過ごしてる自分の姿を何度も見、話もした。夢は止めずに諦めろと告げてくる。来年に事故で死ぬのは少女の父親で、母親とそのお腹の子供は助かるのだと。
「大丈夫、いくら未来が決まってるからってそう簡単に同じことが起こってたまるかよ」
乱暴に少女の頭を撫でる。
「旦那様の手は未来と一緒で、大好き。でも、パパに会いたい。未来でも会いたいの」
事故に合わなければ親友が死なないのか。
俺にはわからない。
人はいつでも死と隣合わせ。
1秒毎に300人以上死んでる世界だ。
その1人になってもおかしくない。
「……わかってる。願いができるだけ実現するように俺も願ってるさ」
こんな可愛いお嫁さんと別れることになっても、やっぱり親友が死ぬのは俺も嫌だしな。
だが、運命は結局決まり通りにしか動かない。
そして数年が経った。
未来へ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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