僕の練習

バブみ道日丿宮組

お題:ぐちゃぐちゃの小説練習 制限時間:15分

僕の練習

 思い通りのイメージが浮かばないときがある。

「……」

 授業中ということもあるが、この教師の話は聞くだけ無駄だ。

 ただ教科書の中身を読み、いかにも重要そうなワードを黒板に書いてく。

 コンピュータが代行できそうなことをやってる。

 あちらの国ではもう教師というのはいない。

 なんでも個人端末を手渡されてカリキュラムをこなすというものだ。

 とはいえ、担任がいないわけでなくきちんと出欠確認はするし、相談なども受け付けてくれる。勉強という部分だけを機械が受け持ったということだ。

 そのため、引きこもりになった子供も学習ができるという。

 担任との通話、チャットも可能で不安時に連絡もできるし、親に緊急回線として電話をかけてもくれる。ちなみに担任との通話は拒否することもできる。その場合は理由を書かないと緊急時マニュアルが発動するという徹底ぶり。

「……」

 そんな未来の授業をニュースで見たら、この国の遅れ具合はあくびが出てしまう。

 いつまでもノートに文字を書く文化を続けるのだろう。

 確かに僕もノートに物語を書いたりするが、あくまでイメージトレーニング。ぐちゃぐちゃにまとまっていないアイディアを書くだけのいわばメモ帳だ。

 スマホの持ち込みは禁止だから、こうする以外の方法がないのが苦痛だ。電車の中で浮かんだことも学校に付く間、家につく間に消えてしまう。

 

 ぐちゃぐちゃのアイディアはすぐにメモをするように。

 

 それが小説家である僕の母のアドバイス。

 実際に書いた物語を読んだこともあったけど、やはりアイディア不足と言われた。もう少し人を観測して、物体という概念の世界に入り込めと。

 つまり、自分が機械のように相手の思考を読み、それを書き連ねる。

 自然にその手が動くまではそうしないと脳みそが鍛えられないってさ。もちろんアウトプットだけでなく、毎日紙の本を読みなさいとも。

 これは文字を追うことと、指が紙に触れることによって脳が刺激されるんだって。電子書籍もいいけど、大事なものは紙媒体がいいらしい。

 そういう母の仕事部屋は電子書籍化されてしまって、本というのはほとんどない。

 なんでも学習端末があるから、それに言葉を調べてもらうから自分の手はそのまま動き続けられるからと。あと本はその学習端末に音読してもらってるとか。こっちは寝てる時にその言葉の世界に入るために使うらしい。

 僕も試したいといったが、機械そのものが母専用機となってるため無理だと言われた。

 で、結局今は新しい物語を書くのを1人でやってるわけだ。

「……ふぅ」

 歴史の授業も残り半分。

 僕は、今日教師が語ってる人のイメージをひたすら文章にしてく。

 何をしてたかを踏まえて、頭のなかで動かしてく。

 相手は昔の人であってもやることは変わらない。むしろ変化がないのが人。

「……」

 さすがに敵は自軍にあるとかいって、反逆する人の思考を書くのは頭がぐちゃぐちゃしてくるから、オリジナリティにあふれてく。

 しかたないといえばしかたないけど、また母に笑われてしまうな。


 こんな人物だったら、すぐに討ち取られてしまうだろうってさ。

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