第2話
無事退院して、その後家族総出で迎えに来てた母さん達に俺の言動で感動されてしまった。
確かに記憶を辿れば中学生くらいから反抗的な態度しか取ってなかったから分かる。
仲良しだった異性の兄弟が急に態度が悪くなったかと思ったら、また急にもじもじしだしたら面白いだろう。
うん、いや、まぁあれだ。俺の感覚からすると今の俺の姿に似た美女美少女に取り囲まれたって訳だ。そんな状態で前世で一生モテなかった俺が照れずに対応できるだろうか? いや、出来ない!
それでも、今世の俺の気持ちも残ってと言うか。まあどんな状況か自分じゃよく分からないけど、家族って思いは残っているから少し安心した。
ぶっちゃけよう。そうじゃなきゃ言葉出なかった。無言で照れるしかなかったところだ。
そしたら、もしかすると違い過ぎる俺の態度に怪しまれたりしたかもしれない。……いや、今もすげぇ違うはずだから意外と怪しまれてないかもだけど。
ともかくだ、前世の記憶が今世の僕を乗っ取ったって状況が俺の見解だけど。幸いに家族には受け入れられたって事にしよう。
そもそも今世の俺は現状に悲観して俺に全てを託したって思っているし、だから絶対にもう体の主導権を譲らない。
どうすれば譲らなくて済むのか、そもそもずっと俺で居られるのかとか不安もない事はないのだけど。
前世の記憶が蘇るなんて摩訶不思議な事態が起きているんだ、もう俺じゃ詳しい事なんか分からないし。逆に分かりそうな連中のモルモットにもなりたくないので、この件は怪しまれないようにする以外は気にしない事にした。
なにせ、本当に人権を無視したモルモットになりかねない世界な気がしているからな。
殺処分怖い……。
因みに、女性は精液バンク経由で妊娠でもOKだそうだ。だから実際滅茶苦茶な扱いを受ける場合はあんまりないんだって。勿論それも0じゃないけど。
逆に男で精液バンクって手段で殺処分回避って出来るのかなって思って、自室にあったパソコンからネットで調べてみた。そしたら、一定以上のなにかしらの結果を出すか、ハーレムがあるかが条件なんだって。
あはははは、男には辛い世の中だなぁ……いやまじで。
「はあ、ともかく。どうやって挽回するかだよな」
殺処分は絶対嫌なので、口にしながら今後の対策を考える。
元々前世の頃からモテたいって思ってたんだ、だから殺処分が無くても同じような考えに辿り着いていただろう。
単にそれよりも真剣でひっ迫しているってだけだ。
うん、気楽に考えたかったよ。ほんと死活問題だから、モテなきゃ。
「とは言え、誰にでも愛想振りまくのは却下だな」
もしかするとビッチは釣れるかもしれない……が、幸か不幸か俺は県内トップの進学校に居るみたいだ。
いる事自体は幸で、学力順位的には不幸って感じだ。
パラパラと教科書を見てある程度分かるのは分かるからほっとしているけど、今世の俺の順位はちょうど中間くらい。で、前世の俺は勉強が苦手って訳で。
これ相当努力しないと今の順位も維持できないと思う。
死にたくないから頑張るけど。どう考えても落ちこぼれたらなおさらモテなくなりそうだからな。
「かと言って運動神経も並みって感じだし、行動とかで稼ぐしかないな」
体力測定の結果も丁度クラスの真ん中くらいだったのを思い出し、ため息交じりにそう呟いた。
問題は行動で稼ぐしかないのに、毛嫌いされてしまっている現状だ。
挨拶をガン無視してた結果されなくなったし、なにか口を開けば暴言で返していたのでプリント集めすら声を掛けてもらえなくなっているみたいだ。
うん、自業自得過ぎて悲しい。ってか今世の僕が目の前に居たらぶん殴る。ボコボコにしてやる。
そうは思っても今世の僕が目の前に出てくるわけもないので、どうやって女の子にモテるか作戦を練る方へと意識を戻す。
「あー、良い作戦が浮かばねぇ」
自分の頭の悪さにため息がこぼれる。
凡人の俺の頭ではこの世界の男性諸君に敵う気がしない。
例えば誰にでも親切にするとしよう……そんなの殺処分なんてある世界だ、大抵の男は実践している。ってか、マジで紳士的な奴ばっかりでなんで今世の僕はこんなに暴君だったか意味が分からない。
確かに暴君っぽい奴はクラスに半数くらいいるよ、たぶん同じように甘やかされて育ったからだろう。
でも、ごく一部の容姿が特別整っている奴ら以外ゴミを見るような目でしか見られてないからな。
そう言えば前世の俺が読んでた小説じゃ男がチヤホヤされてたけど、俺もそういう世界がよかった。少なくとも生死が掛かってるとか嫌すぎるんだが。
嘆いていても現状は変わらない。
さっさと切り替えて考えよう。
親切作戦は必ず実行するとして、はからずともギャップ作戦にも繋がるわけだ。
簡単に言えば不良が優しい人がする当たり前の行動を一つ取るだけで、キュンってさせちゃうやつだ。
うん、これもぶっちゃけ上手くいかないと思う。
何故なら暴君の振りをして実は優しいって作戦って、結構いるんだよ。だからこそ暴君っぽい奴がクラスの半数にもなっているわけで。その内の半分以上はギャップ作戦だと思う。
そして、成功しているっぽいのは容姿が特に整っているメンバーで……同じ土俵で比べるならそりゃより好みの男子選ぶよねって話であり。
割と受けの良くない中世的な見た目の俺がやってもねぇって話に帰結してしまうって事だ。
じゃあ別の作戦っていきたいところだが……勉強や運動を頑張るってのはよほど後先考えない男以外は当たり前にやっているわけで、県内トップの学校でやってない男をっているのかよって正直思う。
うん、やっぱり県内トップの学校って寧ろ足枷多くないか? 今更変えられないからあまり考えないようにしてたけど、寧ろ最低レベルの学校に行ってた方がモテてた気がする。
いや、それもそれで大変か? 正直分からん。
「ほんと、唯一仲良かった幼馴染に振られるって詰んでるよな。まあ、仕方ないけど」
ずっと仲良しで幼稚園の頃にはおっきくなったら結婚しようね、なんて約束した女の子。宮城みやぎ明美あけみと言い隣のクラスの大柄で、だけど胸が小さいのがコンプレックスの子だ。
身長は168センチあり前世の俺の身長があれば丁度良かったと思う。なにせ振られた理由の一つが弟としか見れないだったし、今の俺の身長が低いのもあるだろう。
まあ、一番の理由が同じクラスに好きな人が居るからだったから、仮に身長が高くてもダメだっただろうけど。
で、唯一笑顔で挨拶してくれて雑談もしてくれてる女の子だったって訳だ。
んで、記憶と未だ僅かに残る感情的にたぶん好きってよりこいつなら行けるって思いで告ったぽいんだよな、今世の僕って。
「いや、それは流石に失礼すぎるだろうよ」
なおさら今世の僕に体を返したくない理由になった。
だから、なんとなく幼馴染は好きになっちゃダメな気がする。
いや、当然今まで良くしてくれたし、本当に良い子っぽいから。恩を返せるくらいには親切にしたいし大事にしたいと思う。が、それは幼馴染としても出来ると思うし。
先ずは彼女の恋路の応援をしたいと思う。
「けどなぁ。どうやって応援するかだよな」
ただただ嫌な奴だった俺は同性の友達は0だ。異性も幼馴染を除いたら友達0なわけで。
あれ? って事は俺って――
「超寂しい奴じゃん……」
モテる作戦を立ててたら別の問題が浮き彫りになってしまった。
これって、先ずは友達作るところからじゃね?
でも、それで幼馴染を利用するのだけは絶対にしないようにしよう。
これは今世の俺って言うクズとは違うって、俺は絶対にそう証明したいからだ。
うん、って事は……。
「やっぱ良案なんてそうそう思い浮かばないんだよなぁ」
深いため息と共にそう言葉を吐き出して、気持ちを切り替える為にも勉強に取り掛かるのだった。
うん、モヤモヤと生産性のない時間を過ごすより、少しでも前向きに頑張らないとな。
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