彼氏からの偏見がすごすぎて困ってます
ジョリアン
第1話 プロローグ
「あちゃー、もうこんな時間なんだ。今日はこの辺で終わりにさせてもらうね!それじゃ、バイバーイ!」
そう言って、わたしはOBSの配信終了のボタンを押した。
「ふぅ〜、疲れた。でもやっぱり配信楽しいなー!」
そう言いながら、私はテーブルの左に置いていたりんごジュースを飲む。うん、美味しい!
私の名前は花菱栞織。
アルバイトをしながらこうして空いた時間を見つけて配信をしているフリーター。
でも、大多数のフリーターと違う所もあるんだよ。
「ただいまー。帰りながらさっきの配信見てたけど、相変わらずだなーオマエ」
いきなり家に入って来たけどこの人は怪しい人じゃないよ。
この人の名前は、佐和田修二。
国立附属大学病院の医者で……私の彼氏。
これが他のフリーターとは違う私のアドバンテージ。
安定した生活は、彼のおかげで成り立ってるって言ってもいいかな。
修二とは、大学が同じだったの。付き合い始めたきっかけは、その大学の学園祭で、私が歌うことになっちゃって、ステージの上で歌ったんだけど、それに惚れちゃったみたい。
私の理想は、自分の好きなことが出来て、安定した生活を送れることだったし、ちょうどよかったってのもあって付き合い始めることにしました。
今ではこうやって同棲生活を送ってます。
学校の友達とも連絡をちょくちょく取り合ってるけど、私と修二の関係、ていうか主に私に対して思うことがあるらしくて、結構言われてるんだよねー。
特に言われてるのは…
『お前家に引きこもってパソコンの前にずっといるとかニートかよ。株でもやってんの?』
『そうじゃなきゃ、修二くんと釣り合わないよねー。』
とか、医者になった途端にこれだから金にしか目のない人たちだけど。
別に、良いじゃんね?
向こうは私に惚れてる、こっちは安定した生活を送りたい。
お互いwin-winなわけじゃん?
他人からとやかく言われたくないんですけどー。
ま、いつもこんな感じで生活できて良い感じ。
まぁ、全く不満がないわけじゃあないんだけど…。
「何ブツブツ言ってんの?それじゃ、ご飯作るけど何が良い?」
「オムライス!わたし、修二の作るオムライスが一番好き!」
「またかよ。本当に好きだなー。うし、分かった。ちょっと待ってて」
そう言って彼はフライパンに卵を落としながら今日の配信について話始めた。
「ずっと思ってたんだけどさ、オマエの配信ってなんか変なの湧くよな。出会い厨だかなんだかそんなやつ。」
「あー、まぁ湧くね。でも今回はたまたまだよ。私基本ゲームしかしないから、変なコメント来てもスルー出来るんだ」
「そんな狙いもあったんだ。セコイねえ…。でも思うんだけどさ、連中ってなんでああいうコメントするんだろうな?」
「私に聞かれても分かるわけないでしょ。他の人の枠見に行ってもちらほらいるし、そういうネタ的連中ってだけじゃないの」
「いや、俺もそうだとはおもうんだけどさ。普通この歳にもなったら、彼氏くらいいるって思わないのかな?一人身な20代30代そして40代女性なんてそんないないでしょ」
「いや、いるでしょ普通に…」
…みんなもなんとなく分かったと思うけど、この彼の偏見がちょっと苦手。
大学の頃から真面目でそれも相まって文化祭での刺激に充てられたって感じかな。
付き合ったのはいいんだけど、医者になって余計にこの偏見に拍車がかかって来て、最近ちょっとお手上げなんだよね…。
「でもさぁ…」
「とにかく!わたしはわたし!よそはよそ!いいの!私が良ければそれで良いじゃん!独り身もいる!でも私には修二がいる!それで良くない?!」
……勢いで変なこと口走った気がする〜〜〜!
顔を見たら修二も驚いたように顔を真っ赤にしていた。
めっちゃ恥ずかしい……
「い、いや。なんかごめんね?ほら、オムライス出来たし食べよう!」
「う、うん。こっちこそなんか恥ずかしい事言ってごめん…」
その後の夕飯は二人とも恥ずかしさのあまり黙って食べた。
……オムライスは美味しかった。
「あ、そう言えば今日ってこの後、あの番組始まる時間じゃなかったっけ?」
「いっけない忘れてた。ありがとね、修二」
そう言ってテレビをつける。
毎週欠かさず見てる番組だ。
『はーい!皆さんこんばんはー!今日も張り切ってみなさんの嬉し恥ずかし彼氏彼女エピソード聞かせてねー!それじゃ、行ってみよう!』
「さっきのはきかせられないな。」
唐突に修二がそんなことをいってきた。
「当たり前でしょ!あんなエピソード誰かに聞かれたら恥ずかしくて死んじゃうから!」
そんな話をしながら、番組を見ていておなじみのコーナーが始まった
『それでは、皆さんお待ちかねのあのコーナー行ってみようか!テレフォン恥ずかしい話~!このコーナーは今までお送りいただいたお便りの中からランダムに連絡先を選んで、逆凸をするというコーナーです!さ~て今回は誰にしようかな~っと。………これだ!えーっと、PNドクターシュウジさんにお電話したいとおもいまーす!』
「「え」」
私たち二人の空気が凍った。
「ちょっと待って。なんでこっちにかかってくるの。修二、連絡先をちゃんと偽造したんだよね?」
「いや、ごめん。まさかかかってくると思ってなかったから普通にがっつり携帯番号書いちゃった・・・」
「ちょ!?何してるの!この人、今の彼氏彼女の状況を根ほり葉ほり聞いてくるんだよ!いつも!さっきみたいなことがあった後に電話なんてしてる場合じゃ…」
そういった瞬間に修二の携帯が鳴り始めた
『お!コール音がなりましたねぇ。最近は、携帯を解約した人が多いのか、使われてない番号ばっかりの人がいてつまらなかったのですが、今回は面白いエピソードが聞けそうで楽しみです!』
「冗談じゃないって!どうするの!?」
「いや、さすがに出ないわけにはいかないよ。栞織だって企画倒れは避けたいでしょ」
「それはそうだけど・・・」
修二に何かを言いかけようと顔をあげたときには、既に電話に出ていた
「もしもし」
『もっしもーし!今お電話大丈夫ですか?私、先日お便りいただいた番組の─』
「あ。はい知ってます。今、俺も彼女と番組見てます」
───ばかー!!!!
『おっとでしたら話は早い。しっかし同性カップルですか~。いいですねぇ。同性カップルまでいく人なかなかいないんですよ~?』
「いや、それはないでしょう。付き合い始めたらたいていどっちかの家で生活始めませんか
?」
『えっ』
えっ
「そもそもカップルなのにどうして別々の家で暮らす必要があるんですか。付き合ってるのにそんなの耐えられるわけないじゃないですか。だから私が転勤になっても彼女にはついてきてもらいます」
──いや!私のバイトとかの都合も考えてほしいんですけど!
『いや、あはは。面白い人ですね~。それでは早速いくつか質問があるんですけど』
「その前に俺も司会者であるあなたに質問があるんですけど」
『えっ』
えっ。何言うつもり?
「毎日この時間に配信してますけど、暇なんですか?この番組してるってことは、一応彼女さんいるんですよね?でもその割にはいってることが憶測の域を出ないというか、リアリティに欠ける言動が多くて、正直そろそろ企画自体を辞めたほうがいいと思うんですけど」
ちょっとちょっと何いってるのこの人――――!!!!!
恐る恐るTwitterのハッシュタグをのぞいてみると
『うわぁwwwwみんなが思ってたこと聞いちゃうんだこの人wwww』
『司会者のノリは好きだけど、確かに毎日配信してるよね。でも彼女いるにしてはなんか違くない?』
『彼氏さんGJ』
GJじゃなあああああああああああい!!!!もしこの番組、大学の同級生が見てたらどうするの!あーもう早く電話切ってよ!
『はっはっは。面白いこと聞きますねぇ。私が?ええもちろん彼女いますよ。いるに決まってるじゃないですか。配信に関しては彼女も知ってますよ。』
「彼女の声を聴かせてください」
『えっ』
ちょっとちょっと──!
「彼女の声を聴くまではあなたの質問には答えません。企画主のあなたのことが信じられないんです」
『くっ…この…』
電話口が静まりかえってしまった
『ああそうだよ!彼女いねえよ!彼氏彼女の面白エピソードをおちょくって優越感に浸ってるだけだよ!悪いかよ!お前らバカップルなんて滅んじまえ!』
絶句してしまった。まさかずっと見ていた人が心の底でこんなことを思ってたなんて
「やっぱりそういうことでしたか。週一とかならまだしも毎日よくもまぁ配信できるなって思ってたんですよ。毎日配信してる人はたいていネットのことばかりで彼女いない人って相場が決まってますからね」
──いや、私もほぼ毎日配信してるけど、彼氏いますけど!?
『あーもうやってらんねぇ!今日の配信は終わり!解散!おつかれ!』
電話も切れて同時に配信も終わってしまった。
「……修二」
「……ごめん」
「ごめんじゃないでしょ!どうしてくれるのよ!私が楽しみにしてた番組をめちゃくちゃにして!」
「いやまさか本当だとは思わなかったんだ。ネタかなって思って。やっぱり、配信者って持てないんだなあ・・・」
「いや偏見だからそれ!配信してても彼氏彼女いる例が目のまえにいるでしょ!」
「……あ」
「あーもう!本当に最悪!気を付けてよね!」
「本当にごめんよ。お詫びに今度ディズニーデートしようよ」
「わかった。食べたいものがあるから、それに付き合ったら許してあげる」
今週末ディズニーデートいくことになった。
彼氏からの偏見がすごすぎて困ってます ジョリアン @jorian0702
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