非道い恋の結末【閲覧注意】
笑いもない、教訓もない。
非道い男の非道い恋の唄。
マッチングサイトで出逢ったタレントの卵。
彼女はいわゆるヤミヤミ気味。
自分を表現するのが苦手な女性だった。
彼女とは会う度に喧嘩した。
性格の相性が猛烈に合わなかった。
その度に関係断絶。
しかし縁は切れなかった。
身体の相性が猛烈に合っていた。
何回目かの断絶後。
ケータイに不在着信があった。
【通知不可】
特に意に介さなかった。
関係を絶っても。
またどちらからともなく連絡し再会する。
喧嘩し、関係を持ち、また喧嘩し、離れる。
そんなことを何度も繰り返していた私達。
「もっと素直になってくれれば付き合える」
ある日私がそう伝えてから、彼女に変化が見られた。
自分を素直に表現するのが出来ない彼女。
それでも自分の気持ちを不器用に伝えてくれるようになっていた。
しかし結局喧嘩になりまた断絶。
関係が進むにはもう少し時間が必要そうだ。
人肌恋しくなったとある休日。
久しぶりに彼女のSNSを覗いた。
彼女も芸能人の端くれ、SNSの毎日更新は当然の日課。
離れた相手の近況がすぐに分かる便利な時代だ。
しかし、この時は更新が10日程停まっている。
“あれ?めずらしいな”
ひさしぶりにメールを送ってみることにした。
返信を待つ間、彼女のSNSの最後の投稿を何気なくタップして開く。
これから帰宅する旨、検査の数値が芳しくないという報告、自撮りの写真。
そして、別の人からこんな一文がRTされていた。
「彼女はこの後亡くなりました」
なんて非道い悪戯だろう。
RT主の名前をタップすると、とある講師のアカウントであることが分かった。
講師の最新投稿は、教え子への哀悼の意だった。
非道く手の込んだ悪戯だ。
彼女の芸名で検索してみると、ある芸能事務所がヒットした。
彼女の宣材写真も確認したので間違いない。
彼女の所属事務所だ。
記載の問い合わせ先に電話をかけてみる。
電話口の担当者に「友人」と説明し、彼女の活動状況を確認する。
「○○さんの通夜は既に終わっており、ご実家の方に既に戻られて、、、」
なんて非道い嘘を吐く担当者だろう。
非道すぎるだろ。
非道いって。
…………。
非道い嘘は、嘘じゃなかった。
呆然としながら電話を切る。
その際に過去の着信履歴が目に入った。
【通知不可】
非通知とは違う見慣れない通知。
着信日時は、彼女のSNS最期の投稿の直後だった。
日時が偶然かぶった、無関係な着信だったのかもしれない。
でも、彼女からだったのかもしれない。
もしかしたら、病院からだったのかもしれない。
この電話に出ていたら、何かが変わっていたのかもしれない。
分からない。
わからない。
わかんないよ。
今でもわからないんだよ。
今になってこの日のことを思い返せば。
事務所の方は実家の連絡先くらいは教えてくれたかもしれない。
そうすれば死因も分かったかもしれない。
事故か病死か自殺か事件か。
でもそんな風に頭は回らなかった。
分からないことだらけ。
なくしてから気付くことは多い。
この日ほどそのことを痛感した日はなかった。
・彼女は私の大切なひとだった
・こんな私を受け入れ続けてくれた彼女に、私は何か与えられたのだろうか
・私が文句をつけ続けた彼女の欠点なんて、私が許せば何も問題じゃなかった
・私は彼女の墓参りに二度と行けない。どこにあるかすら知らないから
・講師の書き込みがなければ、私は大切な人の死にすら永遠に気付けなかった
最後の1つに気付いた時ゾッとした。
生まれ変わった彼女には、今度こそ大勢に愛される人生を謳歌して欲しい。
【非恋の離別体験 完】
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