身内の恋愛ってそっちの事ね。ってなるパターン
姫蘭の後を追って、白鯨と光が密会しているカフェまで向かう。密会と言っても何か事情があってのことだと思うし、あの男に限って光とどうこうという話ではないだろう。
「ブラコンだって思うよね。」
「え……?」
わざわざ俺に車を出させて駅前のショッピングモールまでの道を走っていると、不意に車内で声を掛けられる。バックミラーで見てみれば、姫蘭がうつむいて涙を流していた。
そんな彼女を、悠は背を擦って宥めている。
「白鯨が高校時代の事、まだ引きずってるのか?」
「……うん。」
白鯨の女性恐怖症の原点は高校時代、派手な女グループからいじめにあっていたことにある。そのことが原因で引きこもりになり対人恐怖症を患った。今では回復の予兆を見せているが、女性に対する警戒心は変わっていない。
もっとも荒んでいた高校2年生の時期。
姫蘭は当時小学校に入学したばかりのころだった。
女の子特有の早い反抗期と、白鯨が血のつながった女性にまで冷たくするさまを見て、姫蘭は兄を侮蔑した。それに輪をかけるように白鯨自身も彼女を拒絶した。
幸い、その確執は姫蘭が中学時代にいじめを受けたことをきっかけに解消されたようだが。
「あんなことがあったからお兄ちゃんのことが心配なんです。姫蘭は、お兄と一緒じゃないと不安で不安でしょうがない。また誰かに何かをされているかも……」
「けど、光はそんな娘じゃないよ。それは、姫蘭が一番わかってるよね。」
悠が姫蘭を抱く。ボロボロと大粒の涙を零すが、そんな様子を隠してやっているようだった。
「着いたぞ。白鯨たちもちょうど出てきたみたいだ。」
白鯨たちも車で来たのか、獅子龍家の共用軽自動車に二人が乗り込もうとしている所だった。
駐車場に止めた瞬間、姫蘭は飛び出して白鯨に飛び込む。
「お兄ちゃん。光と何してたの!?」
「姫蘭!?どうしてここに……。」
「よお」
「量殿に悠殿。二人が連れて来たんでござるか?」
光の手の中には綺麗な包装がなされた箱が握られていた。
「姫蘭、覚えてないかもしれないけど……。昔いじめられてた私を助けてくれた姫蘭が、私に友達って言ってくれた記念日。毎年二人で祝ってたけど、サプライズしたくて……。」
「お、覚えてるよ!!なのに、今日誘ったら予定あるって。だから、私、忘れちゃったのかなと思って」
涙を流す二人の少女の挟まれ白鯨はおろおろとするばかりだった。
助けを求めるような目でこちらを見られても、何もできないぞ。
「ねぇ、来年からは私も混ぜてよ!!」
「もちろん。次からはサプライズとかじゃなくて普通にお祝いしてよね!!」
「二人は、来年も友達でいてくれるの?」
「「当たり前じゃん」」
こんな駐車場で、感動するドラマなんて……。
合理的に考えれば、白鯨を連れ戻すだけでよかった。姫蘭を連れてくる必要はなかった。その手段を取らなかったのは、俺が合理主義じゃなくなったからだろうか。
そのことを、昔の知り合いが見たらどう思うだろうか。
エピローグ
「え、私が師匠の彼女?あり得ないよ。」
「グサッ」
「私年下の彼氏いるし。」
……あれ、俺達仕事をしているという立場は同じなのに、光より遅れてる!?
同じような危機感を姫蘭と悠も感じているようだった。
「あれ、量くん?なんか、たのしそ~」
その時気付かなかったのだ。
俺たちの背後で笑っていた金髪の女のことを……。
……to be continued
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