第54話:叙爵
皇紀2222年・王歴226年・早春・ロスリン城
「叔母上、本当に宜しいのですか」
「構いません、この件は皇帝陛下が強く望まれた事です。
皇国政府も皇帝陛下の御威光を受けて、前向きに検討して賛成しています。
ただ、公爵家や選帝侯家との力関係もあります。
名誉侯爵としてならば、何十万人の領地を持たれていても関係ないのですが、正式な皇国子爵家を興すとなると、千人くらいの領地にして欲しいとの事なのです」
「首都の近くにある領地から、千人程度の領地を分家させて、エレンバラ皇国子爵を名乗ってもいいとう事ですね」
ふむ、これまでの皇帝陛下や皇国に対する忠勤を評価してくれているのだろう。
皇国子爵位を得る事で不利になるのなら断らなければいけないが、別にないな。
首都地方に近いバーリー地方とフェアファクス地方は、俺の実力で切り取った領地だから、カンリフ公爵も文句は言わないだろう。
そのごく一部をエジンバラ皇国子爵と名乗ろうと、エジンバラ王国侯爵のままでいようと、現実の勢力争いには何の関係もないからな。
「はい、そうなのです、いかかでしょうか、名誉侯爵殿」
「喜んで御受けさせていただきます、叔母上。
それと、いい加減爵位ではなくハリーと呼んでもらえませんか。
実の甥と叔母ではありませんか、何時までもよそよそしいと哀しくなります」
「まあ、それでは、ハリー殿と呼ばせていただいてもいいのでしょうか?」
「はい、是非そのように御願いします」
「ではハリー殿、皇国子爵叙爵の話しはこれでいいとして、姉上からの頼まれていたことに関して話したいのですが、いいですか」
なるほど、城に来て直ぐに軽く挨拶をしてから、準備のために奥に入っていったが、その間で姉妹で話し合ったのか。
普通なら姉妹一緒に仲良く俺と話をすると思っていたのに、一人で話しをするのは皇帝陛下からの使者だからだと思っていたが、違ったのだな。
母上は俺と面と向かってだと話し難い事を、叔母上に頼んだのだ。
普段の言動から大体何を頼んだのかは想像がつくが、困ったな。
「はい、喜んで聞かせていただきます。
私からも叔母上に頼みがあったので、丁度よかったです」
「まあ、ハリー殿から私に頼み事など初めての事ですね。
姉上に頼まれた事を話す前に、是非お聞かせ頂きたいわ」
叔母上が母から頼まれた話を後回しにしようとしている。
叔母上としても、できれば避けたい話なのだろう。
爺様に母上の計画を邪魔してくれと言っていたから、俺がこの件に乗り気でないことを悟っているのだろう、賢い方だ。
だが、先に叔母上に頼みごとをしてしまったら、借りができてしまう。
先にきちっと断ってから、御願いすべきだ。
「いえ、いえ、母上が叔母上に頼んでまで実現したい話です。
私の頼み事など後回しにしなければいけません、どうか先にお話ください」
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