日常

今日も激しく左右に揺れている。

乗り物酔いを起こしそうだ。

8両編成の電車で先頭から3両目の座席に座っている。



僕は岐阜県に住む大学2年生。ごく普通な学生だ。

勉強もスポーツもまあまあできる。

人からはよく「翔はなんでもできるよな」と言われることが多い。



でも少しだけおっちょこちょいなところもあって、

「お前、天然すぎ」と言われることも多々ある。



今日も大学へ授業に行くため、

いつもと同じ電車で、いつもと同じ時間、いつもと同じ座席に座って、

左耳にBluetoothイヤホンを付けて電車の遠心力に振り回されながら現地まで向かっている。


AM 7:23

男性駅員のアナウンスが入る。



「次は○○駅○○駅」

「お出口は右側です 足元にご注意してください」



アナウンスが終わり、心の中で会話が始まる。

――いつもの駅員さんが運転してるのか。



座席から離れ、扉の前に移動する。

いつも通りすぎてなんだかデジャヴのようだ。

本当はボソッと独り言のように口元を動かしたいが、電車内ではさすがに恥ずかしい。



やっぱり心の中で自己解決してしまう。

――今日の授業もいつも通りに終わるのかな。


久々に声かけるかも。

左耳に付けていたイヤホンを外し、おばさんに声を掛けにいった。

「おばさん、おはよう。今日は作業早いですね」



おばさんはハッと僕を見て、にっこりしながら僕に答えた。

「あら、翔ちゃん! おはよう」

「今日もいつも通りの時間に作業してるわよ。」



僕は駅内の中心に立っている大きな時計を見た。AM 7:34

――ホントだ。


「本当だ、いつも通りなはずなのになんだか落ち着かなくて……。」

照れ隠しをするようにおばさんに話した。



「翔ちゃん、頑張り過ぎなのよ」

「そんな真面目に頑張っていたら、せっかくの大学生活がもったいないよ」

おばさんは苦笑いをしながら、でもなんだか心配そうな顔で僕を見つめた。



「そっ、そうかな? 頑張り過ぎなのかな?」

「そうよ。頑張り過ぎも良くないわよ」



そんなに頑張り過ぎてないんだけどな。。。

疲れてるのかもしれないな。



とりあえず今は大学に行かなきゃ。

「おばさん、そろそろ行くね!」



おばさんはいつものように、

こっちまで口角が上がりそうになるような笑みを浮かべて僕にこう言うんだ。

「気を付けて行ってらっしゃい。」

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