第22話 貴重なマスク

「あれ?渡してないんだっけ?おまえにマスク。あげたよな?」


「貰ってないよ。誰と間違えてんのよ」


「黒いマスクと交換しただろ、前」


「してないでしょー。『忘れた』って自分で言ってたじゃん」


「黒いマスクくれなかったっけ?オレにおまえ」


「くれたよ。あげたよ」


「あげたよな?」


「あげたよ?」


「黒いマスクなあ?」


「うん」


「うーーーん?」


「うん?」


「そっか、オレ、黒いマスクとホットアイマスク貰って、あげてないのかおまえに」


「うん」


「そうだよ、小さいマスクがないんだよな、今な」


「そうだよ。『忘れた』って言ってたじゃん」


「だよな。見たら大きいマスクはあるんだけど小さいマスクはないんだよ。お子たちじゃ大きいマスクじゃアレだろ?」


「私が欲しい、私が。お子のはいっぱいあるのよ」


「あるの?」


「うん」


「あ、じゃあ、おまえのマスクやるよ」


「うん、ありがとう」


「うん、とってあるから大丈夫」


「大丈夫?まだあげてない?」


「あげてない、あげてない」


「しのにあげたっけな?って思ったの?」


「うん、おまえにあげたって思ってた。車に積んだんだ、そうだ、思い出した。で、おまえに渡そうと思って、忘れちゃうから、車に積んどこうと思って積んで渡した気になってたんだ。だから積んであるんだ。こないだほら、忘れたじゃん、だから忘れないように積んだんだ」


「優しい!可愛い!!」








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る