第59話アシュトー
アシュトー
今の彼に家名はない。ただのアシュトー
エルフの里で生まれた、純エルフである
年齢はアルネリアよりほんの少しだけ年上の17歳だ
とはいえエルフの寿命はとんでもなく長い。それこそ病気や怪我で死なない限りは永遠とも言われている
そんな彼だが、実のところ400年前に死んだ人間だ
転生でエルフになるなど、今更と思っている
彼は前世では貴族の息子で、情報収集を得意としていた
そして彼はアリエッタらと戦場を駆け抜けた仲間でもあった
◇
「おかえりアル、その顔だとまた情報は正しかったみたいだね」
「うん、ちいさな子たちが沢山死んでいたよ…」
「そう…」
「ああ、本当に厄介だよ、信仰ってやつは」
今アルネリアとアシュトーは孤児を保護している
それはある調査の過程でそうなっただけだ
「悪魔召喚ね…本当にそんな事が出来ると思ってるのかな」
「さあね。真偽は分からない。そしてこの思想がどこから持ち出されてきたのかも不明だ」
「大陸の距離が近くなったせいでいろんな問題が起こる…ほんと、お母さんはこうなること想像すらしてないだろうね」
「想像してたら新大陸なんて行ってないさ。あれはそういう女だもの」
そうアシュトーはかつての友を評価している
大陸の距離が近くなる、それは移動手段の発達にある
アリエッタが新大陸への移動手段を求めた
それにより、多種多様な移動手段が産まれているのである
最初は船を開発していた
しかし、そのための素材や人材を集めるために陸路を馬車で移動していたのだが、それでは大量の荷物が運べない
それで別で陸路を素早く移動し、大量に荷物を運ぶことが求められた
鉄でできた箱に、車輪をつけ
さらに港町へむかう列車が作られた
これはかつて、国境があった時には出来なかった事だ
そして、次に空路。そらを飛んで移動する
大きな山脈からは大量の鉄や鉱石が発掘された
それを運ぶ手段として空を飛ぶ船を作り出したのだ
それらを組み合わせ、港にすべてが集まる速度が向上する
最大距離の場所でかつてふた月も三月もかかっていた移動
それが今は一週間ほどで可能になっている
街と街の移動であれば、かつて1週間かかっていたというところでも1日あれば十分に移動できるし、早い場合は半日もかからなくなった
まだ民間に発表されていない技術も多く生みだされている
それらとも別に、情報の伝達手段も発達しつつあるのが現状だ
今では召喚鳥以上に早く手紙を届ける事が可能なのだ
「この近くにある地下遺跡で発掘された何か、が分かればいいんだけどね」
「そうだね。でもあそこは広大だと聞いている…それにそこに、かまけるには途中で助けた子供達から目を離すことになってしまう」
「魔族というのも気になるね。なんなんだろう?」
「どうも見た目は人近いらしい、けどなんでも角が生えているとかっていう話」
「見たこともない魔法を使うとも言うよね」
それはアエリアの行った大陸に存在する種族であることなど、とても今の二人には想像できない
またアエリアもそれを知るまで新大陸を進んでいないというのもあるのだが
「なんにしても今は保護した彼らを護っているだけでも十分だろう」
「そうだね、ギィルなんて成長がすごいと思う」
「それを君が言う?アルはとっくに聖剣魔法なんてマスター出来てるじゃないか」
「それは近くでよく見てたから」
近くで見ただけで覚える方が異様なのだと本人が気づかないのだから、アシュトーはもうこれ以上言うのはやめておいた
アシュトーの記憶が戻ってから、すぐにアエリアに会いに行った
そうするとすぐに新大陸に行くと言う
その際に、娘を頼むと言われたこともあったし、なんにしてもエルフに転生したことでうんざりするほどの時間が出来たと思ったからそれを了承した
今は自身の修行も並行しつつではあるが、アルネリアを見守っている
そしてその娘はあのアエリアの娘というだけでは説明がつかない程に、天才だった
途中、ギィルという子供を拾って保護施設を立ち上げ、そしてそこにどんどん子供を集めた。攫われて、売られていた子供達だった
すると次第に、妙な集団に行きついた
それが魔族を信望するという集団だった
見慣れぬ魔法を使う、そしてその力を惜しげもなく与えてくれたと、捕まえた男はそういった
そしてその強さ、と言ったらいいのか魔法は見慣れぬだけではなく利便性も高く、そして威力のある魔法だった
これらが広まった時、今の統一された大陸は再び崩れる可能性をはらんでいるとアシュトーは進言し、各元王国の支配者たちは各々調査に乗り出しているが未だに手掛かりは少ない
「はぁ‥‥これでフランリッタが居たらもっと楽に調査も可能なんだけど」
それはかつての仲間の名前
アシュトーのコンビだった人の名だ
しかし転生しているかもわからないが、自分が出会った転生者を考えるにその可能性は高い
それにきっと、彼女ならばこの事態に首を突っ込んでくるからいつか会えるだろうとは思っている
「とりあえずさ、子供たちに生きるための強さを得てもらおう。なんだか嫌な予感もしてる、次の世代を育てなきゃ」
「あとは今開発してる技術の隠蔽も、だね。便利で限定的なものはどんどん民間に広めればいいけど、戦争に変化起こしそうなものはね・・・」
そしてその危惧は現実にはならなかった
それどころかどんどん民間に降ろされていくことになる
それはこの大陸にかつていたと言う、魔物が溢れ出ることでそのきっかけとなった
ギィルがアルネリアに拾われて、わずか1年半と少し後の出来事である
その時、アエリアは新大陸で最初の戦争をたった二人だけで終えた所であった
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