第51話ロッツの街3

奴隷商ーそれはアエリアの最も忌避する職業である

ただ、それがこの大陸でも同じかどうかは限らないので今はまだ慎重に動く

それにこの街で騒ぎを起こして目立つのもどうかというのもある


「その割には衛兵につっかかるんですよね、この人」


「忘れろ」


「まぁいいですけど、暴れないでくださいよ、ほんとに。調査しづらくなりますし」


そういいながらアエリアとメイフルの二人は奴隷商のある建物に入っていった


「あ、いらっしゃい。労働力をお探しで?」


それは小ぎれいにした女性であった

てっきり強面の男性がいるものだと思っていたが違ったようだ


「ええ、ちょっと聞きたいことがあるんですけど…エルフって知らないですかね?」


「エルフです?おとぎ話の?」


「おとぎ話?」


「違いました?エルフって名前の奴隷さんは聞いたことないですけどね」


とぼけているという風ではなかった


この大陸ではエルフの国そのものが隠蔽されているし、外をであるくのはハーフエルフばかりだ

だから純粋なエルフを見たことのある人間は極端に少ないのだろう


「いや、知らないならいいんだ。それとは別だが、綺麗どころが入荷したという話はないか?」


これはアエリアが言った

エルフを知らないのであれば、噂だけでも知らないかと聞いている

奴隷商もここだけではあるまい

おそらくは他にも店があるわけで、その店の色を出すため奴隷のやり取りがあると考えたのだ


「綺麗どころ…ねぇ、うちの扱ってる奴隷さんたちは男ばかりだから…そういう話なら、西にあるエンドッテさんの店かしら?あそこは女性が多かったと思うわ」


「そうか、ありがとうよ…」


そして二人は店を出る


「ふう、暴れないかとおもってひやひやした」


「あそこの店はまっとうの様だったからな。最初に労働力と言った、それに奴隷と呼ばす、奴隷さんと言っている。であればおそらく借金で身売りでもした者がいる店だろう」


「ああ、そういう」


「私は奴隷は嫌いだが、中には仕事が出来ぬ者、失敗した者もいるだろう。であれば売れるものは売ると、自分を売るものが居てもおかしくはない」


それに、あそこに在った張り紙、それには細かく条件も書いてあった

それらはすべて奴隷に配慮していることがうかがえたのだ







西にある、エンドッテの奴隷店


店に行く前に軽く聞き込みをしてどういう奴隷を扱っているのかを調べた

結果、アエリアが殴り込みをかけて暴れた


メイフルには着いてくるなと言って外に待たせておいた


その店は、地下に店を構えていた事もあって表では謎の地響きが繰り返しあったことから地震ではないかと噂になった



そして、そこで探していたエルフ一名を確保することに成功する



「テメェ、ナニモンだよ・・・うちの護衛を一人残さず叩きつぶしてくれやがって…」


「なんだ、まだ威勢がいいではないか。もう少ししばいておこうか」


「くそ、やめてくれ!話す、話すからよ!」


「最初からそう言えばいいのだ。攫ってきた者を扱う奴隷店など私がすべて叩き潰してやるけどな…それで、どこから入手した?」


「あれだよ、シンドの街にあるギンドールっつう冒険者チームがあるんだ。そいつらが連れてきた。おれんとこにゃ一人だけだが、他はどこに連れてったかは知らねぇ」


「なるほど、そいつらの人相を描いてもらおう、知っているのならたまり場もな」


「ああ、わかったよ…つうかよ、信じてほしいんだが俺ぁそのエルフにひどい事なんてしてねぇからな…」


奴隷商のいう事に、助けたエルフはうんうんと頷いた

それを見たアエリアは少しだけ優しくしてやろうと思った


男は人を呼ぶと、人相書きを描かせ始める


「正直よ、綺麗だってのはあるんだが…なんかその娘を見てると心が洗われるみてぇな気もしてな…エルフって聞いて、おとぎ話のエルフにあこがれてたってのもあったんだ。そんな存在がほんとに居た。それだけで俺ぁ嬉しかった…だから、ほとぼりが冷めるまでうちでかくまおうと思ってたんだ」


「ほとぼり?」


「攫われてきたっつたろ、これで俺が解放したところでどうせすぐにまた攫われちまう…だから商談中だって事にして売らずに置いといたんだ」


「そうか…まぁ心が洗われたというのであればまっとうな仕事をするといい。どうしても奴隷商を続けたいのであれば、身売りしてきた者だけにするんだな」


「わぁったよ…姉ちゃん、あんたほんとになにもんだ?どうにも恐れ多い感じが棲んだが…貴族とか王族じゃねぇだろうな…」


「ふん、勘はいいんだな。今は王族ではある…この国の、ではないがな」


「ちっ、当たりかよ。ついてねぇな」


「なにがツいてないんだ?殺されてないんだ、ツいているじゃないか」


「どこの国の王様かしんねぇけど、ろくでもねぇのは確かだからな…俺ぁ隣のフーリンの国からこのグランツェストに逃げてきたんだ。治安が良いって聞いてよ…でもよ、この国も腐ってやがった。王族はどの国のやつらも最低だ」


「ふむ、その話…興味あるな。詳しく教えておいてもらおうか」



こうしてアエリアはまず一人を助け出したのだった


しかし、これからしばらく調査は難航することになる

そして助けたエルフを国へ送り返すと、すぐさま再び今度はその冒険者がいるというシンドの街へと行くのであった

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