第36話その先に待ち構えるは
アエリアがナターシャの首筋に剣を突き付ける
が、ナターシャはそれに対して盾を割り込ませる
割り込んですぐに貫き切り捨てられる盾で僅かに稼いだ時間で、しゃがみこみ剣の軌道から避けるとそのままの動きでアエリアの腹部にその拳を放つ
カーネリアは晩年得意としていたのは拳闘術である。剣よりも小回りが利く自らの拳を鍛え上げたのだ。それを今ナターシャが放つのである
腹部に拳が突き刺さる瞬間に、アエリアもまたナターシャと同じく盾を割り込ませてわずかな時間を作り出して自らはその場から後ろに飛んで回避する
「さて、久々再開と全力で戦えた気分はどうだった?ナターシャ」
「貴女がアレの記憶を持っているのは間違いが無いようね…そうね、楽しかったわ。この時代で今まで全力を出せる相手なんて居なかったから」
二人は具現化している聖剣魔法を解除する
「そうだな、しかし先日ギィルとか言うウエスコーの男がいてな、いい線いっていたぞ?普通の聖剣魔法では無かった様だが、戦力としては十分だったな…」
「ええ、何それ、教えてよ!」
アエリアはナターシャに先日のギィルとランスロットの戦いを話す
どうやらランスロットはギィルの事を話してはいなかったようだ
その後二人は懐かしい話に花を咲かせた。
予想通りナターシャはアエリアの元に参戦する様である。
その日ナターシャはアエリアの屋敷に泊まる事になった
◇
その翌日
いつもの様に、すっかり鍛錬場となった庭にてアエリアとナターシャは花の世話をする。
ナターシャは庭師でもあるルドルともすぐに仲良くなった
「ほんに、ナターシャ様はお花すきなんだな」
「ええ、昔から家の花は私が面倒をみていたのよ。今は出かけることが多くて庭師のタンザに見てもらうことが多いけれどね」
アエリアからしてみると、あのカーネリアが花を愛でるなど違和感しかないのだが、それはやはりナターシャとして産まれ育っていたからだろうなと思う
マリアが言うには武家には珍しく、武芸の出来ない人間だって様であるからだ
まあ、武芸が出来ないどころかカーネリアの記憶が蘇った事でトライエルド家で最強になってしまっているのであるが
その秘密を知っていたのはランスロットのみであった
そしてここでマリアも知る所になる
兄妹仲良く並び、基本となる魔力による身体強化の訓練中である
ランスロットは天然で出来ていた為、それが逆に原因で伸び悩んでしまっていたのできちんと教えて貰っている様だ
「ランス兄さん、いつから母さんの事知ってたの?私てっきり病弱だから療養で田舎に居たんだと思ってたんだけど……」
マリアの疑問はもっともだ、元気であればもっと遊んで欲しかった、構ってほしかったのだし
「15年くらい前だろうか?ライが産まれてその後にお母さまから指導と言うか、剣を受け始めた」
「そんな前から!?」
「ああ、だが師事した訳では無いな。聖剣魔法は教えてくれたが、それ以外は全くだ。試合をして毎回ぼろ雑巾のように負けていたからな」
「ランス兄さんが強かった理由、分かったわ……。知らなかったのは私だけ?ライや父さんも知ってたの?」
「いや、多分俺だけだ。家族には見つからないようにって言われていたしな」
「そうなんだ……まあ、今もルドルと庭いじりしてるの見ると全然違和感ないけど、アエリア様と戦ってた方が違和感強いんだけどね。しかも対等とか」
身内にヤバい人がいた
それが母親だっただけなのだが、その衝撃は抜けきらない様だった
ランスロットとマリアはここ、アエリアの屋敷で鍛錬する様になった
それは母であるナターシャがここに住むとか言い出したからである。
ただランスロットは職務もあるため、月のほとんどは王宮に行くことになるのを残念がっていた。
まあそもそもランスロットは母との対戦が年に数回あるだけだったので、それでも日数は増えるのだが
基本的にナターシャも田舎の方へ引っ込んで居たのだから、それが近くなるのはありがたかった
そしてランスロットが王宮へ仕事に行き、庭にてマリアとマトラ、ラライラが訓練していた時の事である
執筆のジンが一人の兵士を屋敷に招き入れた
「マトラ様あ!」
泣きそうな表情をしたその兵士は名前をガレットと言った
「ガレット!?なんでここに?ノーチェスに居なかったの!?」
それはノーチェス軍でマトラの部下だった兵士だ
「はい、王よりの密命により、私と他に100名ほどこちらに使わされておりました」
それはアエリアがただの軍事訓練としたあの後の事だったらしい
マトラとラライラの安否が判明した後、どうやら護衛として100名ほどが選抜されてアエリアの屋敷に派遣されていたのだとか
その道中に、ノーチェスが消えたと聞いて一度ノーチェスに引き返すが噂通りノーチェス首都は消えていた
そしてどうするかの話し合いが行われて彼らは散り散りになり大陸中を彷徨う
しかしノーチェスは見つからず、再び集結する事になったのはドワーフの里で武具が作られ始めたと聞いたからだと言う
そしてようやく彼らはアエリアの屋敷に辿り着いたのだ
マトラとラライラの元へ赴いた理由、ラライラが王族だったことが大きい
彼らは忠誠心熱い兵士、騎士であるからだ
「ノーチェスの第二都市であるアレイスの領主が城にぜひとの事もあります。そちらに来ていただけませんでしょうか?」
つまりはノーチェス国の再興である
首都と首脳陣が居なくなったからといって、そこの国の住人までいなくなったわけではない。たしかに人口は7分程になってしまったが、それでもいなくなった人々よりは多いのだから改めて国を治める必要がある
そして治める人間が居なくなったために無法地帯となりつつあるノーチェス
であれば、この大陸に唯一残っている王族の血であるラライラの重要性は大きい
「わ、わかりました…」
説明を聞いていたラライラはそう答える
それを聞いていたアエリアとナターシャは…
「なぁアエリア、どうだろう?ちょうどいいのではないか?」
「さすがだなナターシャ、私もそう思っていた所だ。ちょうど足掛かりになる国が、一つばかし欲しかった」
「なんか不穏なお話が聞こえたんですけど…」
マトラはそれがどういう意味か分かっている
彼女はそれなりに優秀なのだ
しかしその答えは口に出さない
結果がこれから見えるから
「よし、戦力増強だ。ナターシャ、ノーチェス軍らを頼めるか?」
「任されよう。アエリアはマトラとラライラ、ガレットの三人居ればいいか?」
「そうだな、それでアレイスを貰い受けに行こうか」
その先に待ち構えるはアイレスの領主である
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