第33話Lancelot vol.1 origin
ランスロット・トライエルド 男・独身 28歳
幼い頃より天才的な剣の才能を持っていたが、それはあくまでも天才という位のものであった
十年に一度の逸材とか、そう言われる程の天才だった
ランスロットを天才たらしめたもの、それは一重に魔力による身体強化が意図せず出来ていたからである
幼い頃にガリエス流を習い始めて直ぐにその才能は覚醒する
3歳で剣をもつ、この頃は天才とは呼ばれず
父がやる剣の練習を見て興味を覚えたようだ
6歳の頃父に剣の才能があるとして指導らしきものを受け始める
8歳になるとガリエス流の道場に入門、不思議とすぐに年上に勝てる様になった
12歳の時には、ガリエス流道場の師範に勝つ
天才と呼ばれる
そして、15歳の時には当時の道場の最高であった師匠に勝ってしまう。目指すべき頂きは未だ遠いとサウセス中にあるガリエス流道場をまわる
16歳の時には当時ガリエス流で最強と謳われていた父に勝つ事になる
父は我が子の才能にたいそう喜んだ
18歳の時に騎士団に入り、20歳では王国最強と呼ばれ、その道で知らぬものは居なくなった
その戦いぶりから無敗の、神速のランスロットと呼ばれるようになる
そんな呼ばれ方をしていた彼は未だ上を見ていた
一体何が彼をそれほど上を目指すのか…それは誰も知らない秘密があった
ランスロットには8歳年下の妹のマリア、12歳年下の弟のライザッハがいる
父の名はライアン
母の名前はナターシャ
母、ナターシャは体が弱く、あまり出歩くことは無かった
それでも3人も子供を儲けたのだから大したものだと思うー
ランスロットの強さの秘密が、それが魔力による身体強化
彼はそれを無意識に出来るようになっていた
それが目覚めた時、なぜみんなそんなゆっくり動くのか不思議だったのを覚えている
13歳の時には父の背中が見えた
さすがだと思う反面、こんなものかとも思えた……
しかしそこで自身以上の、強き天才と出会うまではー
◇
28歳の時ランスロットはもはや王国軍では敵無しとなっていた
アレを倒す…超えるにはまだまだ力が足りないと思っていて未だ毎日は鍛錬の日々である
そんな最中、王都でのある茶会に招かれる
普段であれば断るところであるが、主催者がわが家族がお世話になっている貴族であるがため、望んで出席した
そう言えば、その昔そこに助けた娘が居たなと思い出す
そしてアエリアと出会った
美しい、などと言うと語弊があるかもしれない。ランスロットは強き者でなければ賞賛しないのであるから
その身に纏う雰囲気、そして姿勢、全てが完璧で理想のまさに化身の様で……
気づくと、手に持っていた物を落としていたし、その後の記憶も曖昧だった
アエリア、彼女の歳は8つ程下だと言うのにその姿は頭から離れなかった…
アエリアとの関係は悪くないと思う
だから、なるべく彼女の傍に居たいと思うがランスロットの立場が故に自由は効かない
特にノーチェスとの戦争だなんだのと言う状態では戦場に行かざるをえないのだから
しかし、幾つかの奇跡により戦争は回避された
一体何が?とは思ったがさして自分には興味が湧かない
今出来ることは強くなりたいと言う事だけだ
自分は思ったよりも、負ける事が嫌いだったらしい。
どうにも勝てない相手に勝ちたいだけで、ここまで精進できるとは我ながら笑ってしまう
ひとまず、色恋などはその後だと思ってひたすら鍛錬をしていたがもう28か…アエリア様は無理だとしても、誰か見つけた方がいいのかもしれんな。自身がアレを越えられないのだとすれば次世代に託す他ないのだし
そしてランスロットはやはり自分がと思い直す
アレに勝つためには奥の手が必要だと思い、何かを探し始めた
◇
ツィーグにある道場支部に、それなりに出来る奴がいる
何年か前からこの時期になると出向いて稽古をつけに行く
そこに居たのはタラントと言う男であった
貴族であると言うのに、その剣は鋭く、また守りも硬い
聞けば惚れた女を守るための力を手に入れたいと精進していた
珍しく、ランスロットは彼を羨ましいと思い、そして共感した
「今年はまた、一段と腕を上げたな」
「あ、ありがとうございました…ランスロットさん」
「なにか奥の手があるのなら使えよ?使い慣れない奥の手は……役に立たんからな……」
それは自分にも言えるなと、少し可笑しかった
◇
まさかアエリア様がここに来ているとは!
領主の宴に何となく参加した
それはタラントが守りたい人と一緒に行くと言うから興味が出たのだ
そして、マリアが居てもしやと思うとアエリア様も居た……正直参ったなと思った。想いを振り切る為に来た側面もある田舎で出会うとは
そしてー
襲撃される
「死ねえ!」
男がキラキラと光る剣を振り落とすー
それを、ランスロットは魔力で強化した剣で切り落とした
「くそ、ありえねえ!聖剣を簡単に切るだと!?」
男は驚愕する
「聖剣?もしや顕現させているのか?だとしたらそれは失敗作だな…貧弱すぎる」
ランスロットは未だ聖剣顕現もしていないのだから、その状態で戦えるランスロットは紛れもない天才と言える
そして次々と出てくる男達
その全てが、タラントよりは強い男達だったと思う
「これ程の使い手がここまでいるとはな…世界は広い」
しかしその全てを容易に打倒し、剣をしまうと
「はっ、つ、強がるのもここまでだ。お前は無敗らしいが、あの人に、やられ、ちまえ」
「俺が無敗な訳あるか……これだとあの人と言うのも大して期待できな……ん?なんだ、剣戟の音!?」
少しばかり遠くから剣が響き合う音が聞こえた
その音の方角へ走ると、そこを護るように他の兵士がみえたが、ランスロットはすぐさま無力化して進む
タラントと見知らぬ男が向き合っているのが見えた
タラントが聖剣顕現している!?
あいつめ、やるじゃないかとランスロットは少しばかり嬉しくなる
タラントが操る聖盾に対し、男の持つ聖剣、あれはマズイとそこに割り込む……が、さらに新手の男に吹き飛ばされた
「おーおー。アレくらいじゃ沈まねぇってか?まぁいい、俺の名はギィル・ガランドルだ。おめぇさんを排除しにきた」
「ギィル?」
「知らないのは無理はねぇ、だがコレからこの名が世界に轟くぜぇ…二人目の大陸統一者としてな」
こいつは強い。そうか、あの人とはコイツのことか
先程軽く触れ合っただけでヤバいと感じる強さだった
その男の使う聖剣魔法は明らかに自分の聖剣顕現よりも上だった
あの人にこんな失態を見られでもしたら笑われてしまうだろう
それに、あの人ならきっとこう言うだろうな
「魔力を喰らうね、なら喰らわせなければいいだろ?」
しかしそんな真似は自分には出来ない
だから、あの人に対しては奥の手にもなり得ない本気を使うー
「聖剣開放」
突如として自分でさえ、目眩がする程の力が漲る
未だに直線でしか制御出来ない力が漲っていく
一足、踏み出すだけでギィルの前に辿り着く
そのまま突き出した剣で首を跳ねると、魔力が尽きた
勝つには勝てたが、やはりまだ未熟だ…
それにこの程度の力では、あの人にはまだ届かない……
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