第23話アリエッタの絵本
アエリアとマリアがツィーグでヴィスワインを入手している頃ー
マトラとラライラはこっそりとノーチェスに戻って来ていた
マトラは孤児出身で、幼い頃より王国にある孤児院で育っている。
そこでは十分な教育が受けれたし、食事も十分に与えられていた
孤児院には感謝している一方で、親に興味はない
なぜなら両親の記憶はない。棄てられていたと、そう聞いている。
孤児院での学習で優秀な成績を収めた、特待生としてそのままノーチェスの王国立学習院へ進む
そこで才能が開花した
最初は風属性が得意だった
風刃(ウィンドカッター)は今でも得意な魔法である
そのまま複数を射出して、暴風(トルネード)を疑似的に再現して、そのまま飛行(フライ)を覚えるまでわずか一週間だった
その後も、火属性、土属性、水属性とどんどん覚えれた
進路で悩むことはなかった
軍に入るものだと思っていたから
ただ、ノーチェスではもともと魔法使いが少ないためか、魔法教本が少なく、どうしていいかと思っていた時に師匠に出会う
師匠は魔法はからっきしだったけど、その分魔法書物の取集家とでもいうのか本を大量に持っていた
古書の類も多く、片付けをさせられた時は自分でやれと思ったけど、片付けの為に手に取る本すべてが希少な本だったのを覚えている
アリエッタの絵本も大量にあって、懐かしいと思って読み返すとあることに気が付いた
「師匠、これって絵本ですよね?」
「そうだな。それがどうかしたか?」
「いえ、その…」
「今の知識があるマトラが読むと、違った見え方がしたか?」
その通りだ、と思った。これは絵本なんだけど、書いてあることが所々実在するであろう魔法や魔道具を使用していると思われる描写が多くある
それらは途方もない効果を発揮しているが、軍で教えられた魔道具の知識を合わせるとはっきりとその状況が見て取れる
「は、はい。特に古い絵本になればなるほど、これは実話ではないかと思えます」
「そうだな、実話だろうな」
それに読み比べれば明らかに古い絵本は…絵本じゃない?
「やはり!」
「だがしかしだ、それが実話だとするならばエルフは実在し、そしてドラゴンや大精霊という存在が実在していたということだ」
そう、古い絵本にはそれらの存在が書いてあるのだ
マトラが読んでいた絵本には登場しないあ亜人達が
「あと…滅んだ国の名前ですね…今残っている国名って、いくつかの小国だけですよね」
国名も知らないものであるとか、すでに滅んだとされる国々の名前がかいてある
「ああ、残っている国々では今でもアリエッタゆかりの地という事で観光も盛んだ。それに遺物もそれなりに出土しているという」
「すごい…じゃあこんな霊獣も、本当にいるんだ」
まるで子供の様にキラキラを目を輝かせていたマトラ
それから師匠とともに歴史書を、絵本を研究する生活をしていたある日の事だった
ラライラと出会う
正確には、ラライラの魔法の師匠として着任する
そして第一王女という事も明かされるが、防衛、護衛上の観点からラライラがマトラに対して様を付けて呼び、マトラはラライラを呼び捨てするという事にされた
第一王女が居るという事は知ってはいたが、周知されていないことだったのでその時はなぜだろうと思っていたし、その理由は今でもわかっていない
それになにより、ラライラがマトラをものすごく気に入ってしまった
孤児院で年下の世話に慣れていたマトラだが、まさかラライラにこんなに気に入られるとは思ってなかった
ある日、ラライラから聞いたことがある
第一王女であるラライラには居場所がないのだと。かつて育った島ももう帰れないと
だからマトラと一緒に居られるのであればそこを居場所としたいのだと
何を言っているのだろうかと思っていたが、素直に従うことにした
いつの日か、わかる日がくればいいと思っていたから
◇
「あーもう、アエリア様とか今頃おいしいもの食べてるんだろうなぁ…」
「そうですよねぇ、うらやましいです。ミオマ領ってごはんすごくおいしいところってイメージあるんですよねー」
「わかる。アエリア様の屋敷のお野菜とか、全部ミオマ領のものだったらしいわよ」
「ほんとですかーだからあんなに美味しかったんですね!マトラ様もめずらしくいっぱい食べてましたもんね」
そういわれて少し照れくさくなるマトラ
「ラライラだっていっぱい食べてたじゃない」
「えへへ・・」
「それにしてもまさか帰って来てるのにこんなにこそこそとする羽目になるとはね…」
今二人は王都でフードを被り、薄暗い影を選んで街中を歩いている
何故こんなことをしているのかと言うと、街に着いてすぐに狙われたのだ
ラライラが
そこはマトラ、本来の役目である護衛の出番である
マトラの方が偉く見せる作戦で、ある、マトラ様呼びも通じず何故かラライラ1人が狙われた
それ故に、その立場を知るものの反抗だと気づき、顔を隠すようにこそこそとしているのである
「ほら、見えてきたわよ。師匠の家」
そこは薄暗い路地の突き当たり、大きな屋敷の裏口である
魔法で鍵を掛けてある為、マトラは右手をかざして魔力を流し込む
カチリ
音を立てドアが開くと、こそこそと中に入って言った
アエリアがマトラに頼んだものは実は2つある。
一つは既に入手済みで、それは鉱山で打ち捨てられている鉱石である。
とても綺麗なその鉱石はその扱いの難しさからゴミ扱いされている、オリハルコン
こらは直ぐに手に入った
マトラは魔法の袋を所持していたので、1トン程度を袋に詰め込んだ
かなりレアなアイテムだが、魔法師団団長という事もあり、所持していた物である
そして、頼まれたもう一つは
アリエッタの資料である
なるべく古いもの……と、言っても全21巻の絵本だったりもするのだか
本ならば師匠の家にあるのを拝借すれば簡単だと思って来たのだが……
「あれ?10巻までがごっそりない……なんで!?」
どうやら一筋縄ではいかない予感がして来たマトラだった
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