ポケットモンスター

 今でも年齢問わず世界中で大人気の「ボケモン」だが、遡ること二十五年前――平成六年二月二十七日に、記念すべき第一作目である「レッド」「グリーン」の二種類が発売されたところから、かの伝説は始まった。


 あの当時の爆発的人気ときたら、もはや社会現象というレベルだった。

 現在の新作が発売される際の入手困難の度合いとは、とてもじゃないが比較できない。それは同世代の人間なら理解できるはず。

 ちなみにコロコロコミックス限定で発売された「ブルー」は、そのあまりの販売数の少なさから、所有してるだけでクラスのヒーロー扱いされるほどだった(当時のクラスに一人だけ青を所有していた男子がいた)


 今でもハッキリと覚えている――

 どのお店に立ち寄ってもたったの一つも在庫が見つからず、今のようにSNSが普及してるわけでもなかったので、いい年齢の大人たちがあっちへ行ったりこっちへ行ったりと子供の為に東方西走していたものだ。


 私の父親は、「ゲームは子供に悪影響を与える」という建前を振りかざし、その実はただ自分の為にお金を遣いたかっただけだと、子供ながらに気づいていた。

 しかし、そうは言っても欲しくなるというのが子供というもので、本音を隠そうとしても隠しきれてなかったのだろう。

 母方の叔父が、わざわざ東京と神奈川の販売しているであろう店舗に直接電話をかけまくっていた。

 そのうちの一店舗にたまたま在庫があると聴くや否や、すぐさま飛んで買いに行ってくれたのだ。

 そこまでしてくれた叔父には感謝したし、その叔父になにも感謝しなかった父親には軽蔑したが。


 その後、私は生まれて初めてゲームという世界に没頭した。小さな画面に集中してるときは現実の事をなにも考えなくてすむし、時間も潰せる。

 なんて素晴らしい発明なんだ!と拍手喝采を贈っていたが、ある日とんでもない事実に気がつく。


「これって……誰かとポケモンを交換しないと図鑑が埋まらない……?」


 当時はまだポケモンを交換するのに有線ケーブルを使用しなくてはならなかった時代だが、そのと交換しないと手に入らないポケモンがいることを幼い私は知らなかった。

 

 ゲームですら友達が必要だなんて、本当に人見知りに優しくない世界だなぁ……と、ポケモンレッドをそっと置いた私は、叔父に申し訳無いと思いながら不貞寝するのであった。

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