非常によくある転生譚
ちょせ
第1話トラック転生とはこの事か
その日は雨で視界が悪かった
何十年に一度の大雨とはこういうものだとばかりに大粒の雨がバチバチと音を立てて私にぶち当たる
「いたたたたた!なんで雨が痛いの!?てかもうびしょ濡れ!早く帰りたい!寒い!」
パシャパシャと水溜まりを踏みながら帰路を急ぐ
靴の中どころか下着までもうぐっしょりなのは言うまでもない
大きな病院の角を曲がった瞬間だった、私の足はつるりと滑る
鉄製の側溝蓋が一瞬視界に入る
ずしゃぁー!
道がまるでプールのようになっていてそのままずべべべと滑って……
プワァァァ!
大きなクラクションを鳴らしてトラックが突っ込んで来ていた
雨でブレーキが効かないの?
ハイドロプレーニング現象だなぁーとか考えてる場合じゃない!?
轢かれる!
グシャァ
そんな音が頭の中で響いた気がした
すごく体中が痛い…あ、痛みが無くなった…
これ、死ぬんだと思う……
◇
「井上はるかさん、はるかさん?」
「んあ?」
呼ばれて私の意識は覚醒する
見回すとなんか浮いてた
足元では先程のトラック、あと救急車?
こんなに病院近いのにと思ってみたらさっきのトラックとぶつかったのか……
あれ?私は?轢かれた私は……
「ごめんなさい!私の手違いで…そのぉ、あなたは死んでしまいました…」
そんな事をなんか目の前の女の人は言い出した
よく見たらなんか光ってて神々しい気がする
ふうん、ははーん、ほほーう。
これはアレだね、神様のミスで異世界転生するアレだ
そんでチート貰って異世界転生するんだわ
「ええと、その通りなんですけど…許してくれるの?」
「あはは!おっけーおっけー!グッジョブ!でもむしろミスって何なんですか?」
よくミスって聞くけど、どうせ大したことないんだよねえ
「それが、本来ならトラックにぶつかる寸前にそのエネルギーで異世界に転移してもらおうと思ってたんですけど、タイミングをミスってしまい、気づいたらトラックにぶつかって死ぬ寸前だったって言うか、死んでまして」
「おっと、これは話が変わってきましたよ」
足元を見れば、トラックの下からモザイクがかかるレベルでやばい事になってる私の体が運び出されていた。雨のせいもあり、かなり広範囲が真っ赤になってる
「いやぁ、それなのに許していただけるなんて、はるかさん心が広いですね!」
本来なら死なずにそのまま行けてたのか…その方が気が楽だった気もするね……さっきヤバいくらい痛かったし。でもまぁ今の体はこっち?だしそのまま異世界いけるんならいいか
「あとは転生特典が本来ならてんこ盛り行けてたのが生き返らす為にかなり減ったくらいですね!」
おい!いい笑顔だな?可愛いからって調子乗りやがって!生き返らす為に特典減るとかは聞いてないぞ!
「え?じゃあ死んどきます?」
おいおいおい!あんたのミスで死んだのに死んだままでいいとかふざけんなよ!てゆうかまだ生き返ってないの私!?
「まだ魂の状態ですよ。わがままだなーどうしろって言うんですか」
「くっ、さっき迄と態度ちがうじゃん…でもそうね、ちゃんと生き返らせて特典てんこ盛りで異世界転移させてよ」
「だからそれは生き返らせる時点で無理なんですって……でもそうですねー、転生ならなんとか特典てんこ盛りで行けますよ?」
「転生?てことは、その世界で生まれ直すってこと?」
「ですです、生まれも自由に行けますよ!貴族だろうが王家だろうがただの村人だろうが好き放題行けますね」
ほっほー。いいねいいね、一瞬どうしようかと思ったけど私ほら、クレーマーじゃないからさ
許せちゃうよね
でも悩むなー貴族とか王族は責務ありそうだし、教育とかめんどくさそうだし
村人はなんか労働力とかにされそうてゆうか、それしかないよねぇ…
あれ、まって。そもそもなんで私異世界に行くの?選ばれた理由はわかんないし、目的は何なのかしら
それによってどこに生まれ変わるか重要になるよね
「察しがいい娘ですね…」
「おっと、罠だったか」
「いえいえ、選ばれた理由はなんか高貴な魂の気がしたってやつです。目的は魔王の討伐ですね。魔王がえらい張り切って人類滅亡させようとしてるんで、バランスとるために今回の魔王は始末しておきたいんですよ」
「へぇ‥‥え、まって私そんな世界に赤ん坊で生まれるのヤバない?」
「でもチート特典あるのでなんとか出来ると思いますけど」
「でも万が一ってあるじゃん。もしそこで私死んだらどうなるのよ?」
「そうしたら次の人送り込みますけど?」
「おーい。死に損かよぉ…うーん…産まれ選べるんだよね?」
「ええ。女神に二言はありません」
「チート特典もてんこ盛りなんだよね?」
「はい!」
「ようし、んじゃぁ転生でいく!今の時代の15年でいいから過去に生まれさせて」
「でもそれだと生まれは選べませんよ?」
生まれが選べないとはいえ、チートあるんなら大丈夫だよねー
「うん、それでいい。チートあるならどこ選ぼうとも同じ気がするしね」
「了解しました。それじゃ、行ってらっしゃい!」
すると足元が輝き、だんだんと体の上にその光が昇ってくる
消えていく自分の体を見ながらふと思った
あ、ちょっとまってよ!特典が何なのか聞いてない!
そこまで考えたところで意識は途絶えた
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