Episode0
第1話 威 Prestige
春が訪れ、桜の花が散り始める頃、俺は中学生となった。
今日は入学式。クラス表の張り紙を見る新入生ども。まあ、俺もその一人だけど。
一応、同じクラスに知っている奴がいるかを一通り見る。
最悪な1年間になりそうだ。きっと、面白ネタという事で俺と本田のことを皆に言いふらす事だろう。
マジで悪いことをした、ゴメンな本田…。
入学式が始まり、校長やPTA会長のありがたいお話が長々と続く。
これは俺の考えだが、こいつらの話は子供に聞かせる事ではなく、来賓に対し、「あの人のスピーチは最高だった。」と思わせるためなのでは? と考えてしまう。だってさぁ。小学校の卒業式で校長が言っていたけど、切磋琢磨なんて言葉知らねえし!
そして今回もそうだ。訳のわからない4文字熟語をたくさん綴っている。しかも、ろれつがカミカミですよぉ。
そして入学式は滞りなく進行する。
在校生、新入生。挙げ句の果てには会場全員での起立と着席の繰り返し。日本人は軍隊のような一致団結が好きな民族なのであろう。
最後に校歌を熱唱する。
「大きな声でお願いします。」
と言われるが、俺はこの中学のマニアじゃ無いので、校歌の熱唱は避ける事にした。てか、初めて聞くしね。
入学式が終わり、教室へと戻ると、早くも一軍女子がグループを確立させていた。
男子もなんとなく、グループができているようだ。
楽しい学校生活を送るためにはグループを作るのは必然だが、あいにく俺には興味がない。
好きなゲームもないし、好きなテレビ番組もない。グループに入っても話すことが無いわけだ。
そんな事を考えていると、早速、江川のオンステージが始まった。
「成瀬ってさ、六年の時に本田にラブレターを渡したんだよ。」
一瞬、静まり返る取り巻きたち。
「へぇー。」
江川の取り巻きはあまり興味がないようだ。
「それよりさ、昨日の〇〇見た?」
「見たー! ちょーカッコよすぎ!」
どうやら俺の恋バナなど、皆には興味がなかったようだな。ははは! ざまあねえな。
「そうなの?」
名札に
「うん。まあ…。」
「勇気あるね。私にはできないよ。成瀬はすごいね。」
あれ? なんだかホッとするな。ラブレターを渡すことって馬鹿がやることだと思い込んでいた。
別に俺を誉めている訳では無いだろうけど、ものすごく救われた気がするな…。
「ははは…。ありがとう。」
「付き合っているの?」
小声で聞いてくる中山。
「付き合っていたら、馬鹿にされないでしょ?」
「そっか、ごめん。」
中山との会話はその後、一度も無かった。
🏫
そして、あっという間に一年が過ぎた。
昇降口に張り出されるクラス表。俺はまたもや六組。クラスカラーは同じなので、ハチマキやリストバンドを買う必要はない。助かったな。
今度は祐一と同じクラスだ。ちなみに本田も同じだ。もちろん江川も付属品なだけあって同じクラス。
今度は二年間、同じクラスか…。
憂鬱だ…。
教室に入り席に着くと、早くもグループは出来上がっている。
俺は相変わらず、どこにも所属はしない。
そして、お決まりのように一軍女子、江川は俺の黒歴史の発表をする。
「成瀬ってさ、小六の時に本田にラブレターを渡したんだぜ!」
江川の発表に皆は無関心だ。そりゃそうだろう。二年前の話だからな。しかも小学生の時の話だし。
「成瀬、また同じクラスだね。」
話しかけてきたのは中山 夏菜。
「そうだね。」
「しかも、またまた最初が隣だね。」
「出席番号順だからね。ナ行だし。」
「そっか! だからか!」
気がつけよ…。
そんな中、祐一が話しかけてきた。
「
「さすがに今は本田も気にしていないだろ?」
「浩も気にしていないのか?」
「中学を卒業したら、リベンジかな。」
「すげーな。一途だな。」
「え? 成瀬は今でも好きなの?」
俺と祐一の会話に入ってくる中山。しかも小声だ。こいつ、良い奴だな。
「手紙まで出したんだぜ。しかも江川に邪魔されて。諦められるわけないだろ?」
「そうだったんだ…。一軍女子、恐るべしだね…。」
あれ? 中山と話すのって一年ぶりだな…。
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