16

 ナホっ! どうしたんだよ!? お前っ!!

 ユウコちゃんが! ユウコちゃんがっっっっ!!

 私が、どうかしたの?

 っっ!?

 ……ナホ……ちゃん?

 って、え? な、何? どうしたの?

 ユウコちゃん!? ねぇ! ホントにユウコちゃんなの!?

 ちょっ、まっ、どういうこと? えっ、ナホちゃん! どうしちゃったの!?

 だ……だって……今…………

 ……えっと……ちょっと、よく分からないんだけど、私……何か、したの?

 ……いや。した、と、言うよりは……その……。

 どうしたんですか? ヤスさん。

 その……言いにくいって、言うか……。

 何ですか? 逆に気になってしまうんですけど。

 あ、あのね、ユウコちゃん。

 ナホちゃん?

 ……怒らないで、聞いてね。

 え? あ。うん。何? どうしたの?

 ……あのね……実は……さっき…………


 ユウコちゃんが、ピエロに   るのを見ちゃったの……。


 え?

 も、もちろん、気のせいだったんだと思うよ! だって、現に今、こうやってユウコちゃんは無事なワケだし!? で……でも……なんて言うか……その……

 それを見たのはナホだけじゃねぇよ。俺も見た。確かに、アンタの後ろには変なピエロが居て、アンタが狂ったように笑った後、ソイツがアンタを背後からバッサリやったのを見たんだよ。

 え? でも、私、どこも怪我なんてしてないですよ?

 ……そう……だな……。

 やめてください。そんな冗談!

 冗談……なの……かなぁ……

 そうだよ、冗談だよ。ね? ナホちゃん。

 う……うん…………。

 だってほら。私、こんなに元気だよ? どこも怪我なんてしてないでしょ?

 うん。そうだよね。

 ……じゃあ、アレは、単なる見間違いってやつか?

 ……そう……なのかも……。

 ……でもなぁ…………。

 …………………。

 見間違いにしては、やけにリアル過ぎるっていうか……その……。

 それじゃあ、何ですか?

 え?

 私は、貴方たちが言うように、ピエロに殺されてるって。そう言いたいんですか?

 あ。いや。そう言うわけじゃねぇんだけどよ。

 おかしいじゃないですか。大体、ピエロなんて何処に居るんです? 私の後ろ? 試しに振り返って見ましょうか?

 い、いや。そこまでしなくても…………

 ほら。振り返りましたよ? でも、何処にもピエロなんて居ないじゃないですか。私の後ろ? 何処です? 何処に居るんです? 数メートル先? あの建物の影? まさか地面に消えてしまったとか、そういうことは無いですよね? そもそも、本当にピエロなんて居たんですか? 貴方たちの見間違いですよね? だって、もしピエロが居たとしても、そんなに目立つ格好をしているなら、直ぐに目につくはずですよね? なのに全く姿が見えないなんて、そんなことあります? おかしいですよね? だって、見たって言ってから数分しか経ってないですよ? 一番近い建物だって、結構走らないと辿り着かないほど遠いじゃないですか。そのピエロ、足が速いんです? 一瞬で移動出来るくらい早く移動できるんですか? 無理ですよね? 不可能ですよね? 有り得無いですよね? だとしたら、やっぱり貴方たちの勘違いですよね? だって、私は今、こうやって元気に貴方たちの前に立っているじゃないですか。見て下さいよ。何処にも怪我なんてしてないですよね? 切られたって貴方たちは言っていましたが、服が着れていたり血が付いていたりなんてことは一切ないですよね?

 ……ゆう……こ……ちゃん…………

 大体、ホラースポットに来ているんだから、怖い怖いって勝手に思い込んで何かをピエロに見間違えてるだけなのでは? ほら、言うじゃないですか。怖いと思っていたら揺れているカーテンですら幽霊に見えるってよくありますよね私だって経験がありますから学校で一人遅くまで残っていると誰も居ない教室の窓が開きっぱなしで強く風が吹いた瞬間人影が映った気がして大きな悲鳴を上げてでも良く見てみたらただ単にカーテンが大きく動いただけでそこに出来た影がカーテンに映ったためにそれが人の形に見えたんだってそういうことちょっと考えたらああ何て事は無いって思うじゃないですかだから貴方たちが言っているピエロもそんなもんですよねそうじゃないですかそうじゃないとわたしがこうやってげんきにここにたっていることがありえないってことになるじゃないですかあなたたちとこうやってはなしをすることもおかしいってことになっちゃいますよねそうなるとわたしがここにいることじたいがおかしくなってしまうのでそれはとてもつごうがわるいってことになっちゃいますよねそうなるとあなたたちてきにもふつごうがおこってるということになってしまうのでとてもよろしくないですよねだとしたらどうやってこのげんしょうをせつめいするのですかぴえろってなんですそもそもなぜびょういんにいたのにぴえろのはなしなんてでてくるんですおかしいですよねだれかせつめいできますかできないですよねだってびょういんとぴえろなんてまったくかんけいないじゃないですかなのになぜぴえろなんですかぴえろがどうしたんですかぴえろなんていないじゃないですかぴえろぴえろってうるさいですよねぴえろがいたらなんですかぴえろがわたしとぴえろでぴえろだからぴえろにぴえろとぴえろのぴえろをぴえろあぴえろふぉおおあちぇいとあたおばいおわちうたちゃわおちやとうぃあつおちょ…………

 ユウコちゃんっ! 止めてっっっっっっ!!

 やめない。よ。

 っっ!!

 だって、もう、げぇむは、はじまってるじゃない。

 ナホ!!

 ねぇ、なほちゃん。きづいて、た?

 ナホ! こっちだっ!!

 ここはね、『ゆうえんち』なんだよ?

 煩せぇっ!! 何が遊園地だよ!? この場所が何だって言うんだよ!!

 ちがうよ。『ゆうえんち』だよ。

 だから遊園地なんだろ!?

 ちがうよ。『幽縁地』だよ。

 遊園地じゃねぇのか!?

 なにをいってるの?

 何をって、お前こそ何馬鹿な事言ってんだよ!!

 ゆうれいとえんをむすぶばしょで『ゆうえんち』だよ?

 …………なっ……

 まちがっちゃだめだよ。ここは『ゆうえんち』。だから、あなたたちはここにきたんでしょう?

 なに…いっ……て……

 あなたたちがのぞんだんじゃない。ゆうれいとえんをむすびたいって。だからあれはそれにこたえたんだよ? よかったじゃない。むかえにきてもらえて。

 まっ……言ってる意味が、わかん……ない、からっ。

 みたんでしょう? 『夢』を。きづいてるんでしょう? ずっと。のぞんでんでしょう? それを。だから、こたえるためにここにきたの。あなたたちがそれをのぞんだから。ちがう? あたっているよね? ちがわない。それがこたえなんだもの。

 ゆう…………きゃあああああっっ!!

 にげ……ら……れ……な………いよ…………

 ナホ! 見るな!!

 いやっ……いや……だ……ユウコ……ちゃん……ユウコちゃん! ユウコちゃんっ!!


 いやあああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっっっっっ!!


『……ま……ぁ……ず、ひ……とぉ………りぃ………………』


『……ザッ…………ザザッ…………ザッ…………』


 …………………………。

 …………………………。

 …………………………。

 …………………………。

 …………………………。

 …………………………。

 …………………………。

 …………………………。

 ………………う…………。

 …………うぅ………んっ………。

 …………こ……こ……は…………。

 ……………………や……す……? やす……ゆき……?

 …………………………。

 …………ねぇ……やすゆき……どこ……? どこに、いるの……?

 ……ねぇ……ねぇ、やすゆき……どこ……? どこにいるの? ねぇ!!

 ……やだ……やだよぉ……くらい……なにもみえない……こわい……こわいよぉ……ねぇ! ねぇ!! みんなどこぉ? どこにいるの! ねぇ!!

 やだよぉ……ひとりに、しないで…………おねがい…………。

 ……ここは、くらいの……なにも、みえないの……どこにいるのか、ぜんぜん……わかんなっ……っく……うぅ……うぁ……ぁ…………う……ああああああああああああああああああああんんんっっっ!!

 やだぁあっっっ!! いやだぁあああああっっっ!! なんでっ!? どおしてっ!! こんなんじゃなかった!! こんなこと、ちがうっ!! あたし、そうじゃないっ!! ちがう、ちがう、ちがう、ちがう、ちがうのぉぉっっっ!! ちがう! そうじゃないからぁああっっっ!! ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさい……ゆるして……おねがい…………。

 ……おね……がい……ゆるしてよぉぉ…………なんでぇ………なんで…………なんで、こんなっ……っく……うぅ……う……ぁ………あぁ…………。


『おまえ、が、…………んだ……の……か……?』


 ひぃっっ!!


『おまえ、が、…………んだ……の……か……?』


 ……ちがっ……ちが……う…………。


『ちが……う……の、か……?』


 ……ちがう……ちがうっ! ちがう、ちがう、あたしじゃないっっ!!


『なら、おまえ、いら、ない』


 っっ!!


『おまえ、もう、きえ…………? ……なん、だ、それ……は……』


 え?


『…………それ…………そう、か。それ。……なら、おまえ、ちが、う。おまえ…………さ……ない……』


 どう……いう、こ……と?


『おまえ、もって、る。ちいさい……もの……』


 ちいさい……こ、これ?


『そうだ。それ、だ』


 これが、なに?


『それ、いみ、ある。おまえ、げぇむ、さんか。しない』


 げーむにさん……か?


『げぇむ、さんか、しない。おまえ、ちがう。だから、おまえ、…………さ、ない』


 …………………………。

 …………………………。

 ……ね、ねぇ! 何なの!? ねぇ!!

 …………………………。

 …………………………。

 ……だれ、誰か!! 誰か居ないの!? ねぇ!! 誰か!! お願いっ! 応えてよ! ねぇっっっ!!


『……おまえ、さんかしゃ、ちがう。ほか……いく……』


 ねえっっっっ!! みんな!! 何処行ったの!! ねぇっっっ!!

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