オレカバトルから運ゲー要素が消えたそうですので陰キャ戦法で厨パに立ち向かってみましょう

七簔 ましふ

陰キャ戦法の下準備

失われた小銭への怒り

――――某日、大型商業施設にて。


「『☆☆☆→☆☆☆☆』が『こうげき!』に変わりそうだ!」


…????(半ギレ)

また良化しなかった。確かに3リールで止めるやり方もあるけど、だったらこうげき!を経由するまでもなくお目当てのものに変えてよ、って思う。

ハイ、次の方。


「『必殺の一撃』が『ためる』に変化しs」


ハイ没。

2リールの必殺は重たいんだし、理論上☆☆→☆☆☆への劣化があるんだから…わざわざためるに変える理由がないよね。

ラス一、頼みの綱。これが良化しないとまた1クレ無駄になってしまう。頼むよホントに。


「『☆→☆☆』が『ためる』に変k」


…キレそう(涙目)

今日5クレ分スキャンしたのに、ずっと同じところを劣化させようとする…しかもそこの移動、この前やっとこさ提案が来て、過呼吸になりながら写真撮って排出したっつのに…


で、結局また全く同じカードを排出。称号、ガッタイオー(笑)。もちもの、変更なし。

今日で何枚このカード作っただろう。家にこれ何十枚あるだろう。

所持金的にリベンジは不可。仕方ない…撤退しますか…


とぼとぼ帰りながら、さっき録画したプレイ映像を見返す。駅までは専用の通路ができているから、学校帰りでも雨が降ってても短時間でオレカに向かうことができる。快速を恨めしく思いつつ見送り、各駅停車に乗り込む。すいてて助かった。リュックは背負ったまま、編集アプリを起動。相手チームのモンスターのコマンドや元ネタの豆知識を、先ほどの動画へひたすら字幕に起こしていく。それにも飽きて、端末の画面を暗くして…ふと思う。


「……オレカバトルにリールって概念がなかったらなぁ……」


おそらくオレカバトラーなら誰もが一度は頭をよぎるであろうこの考え。特に推しが良化しないときとかめちゃくちゃ思ってしまう…ありますよね?え、ない?

…ないならないでいいんですけどね。僕はめちゃくちゃ思いますよ。

オレカバトルの世界に行ったらリールなんてなくて、自分の頭で戦略を練って動くんやろなぁ…リールキャパシティとか考えずにどんなモンスターでも輝けるんやろなぁ…って。



…はぁ、行ってみたいなぁ、オレカバトルの世界。
















…で、ラノベだったらここでパンドラが脳内に直接話しかけてきたりするんでしょ!?さっきから待ってるんだけど!!来なくない?!


これラノベだよ?!きていいでしょそろそろ!!!


「とぼとぼ帰りながら」のあたりからずーーーーーーーーーーーーーっと待ってんのにさぁ!!!筐体がしゃべらないかなぁとか!!画面の中に吸い込まれないかなぁとか!!!椅子の座面に魔法陣かかれないかなぁとか!!!!






…はい、ないんですね。そういうの。わかりました。パンドラさん、すごく残念です。このラノベのためにこちとらいろいろ考えてきたんですよ?バビロア王国とメソタニア王国の戦争をしれっと終わらせて魔王軍に立ち向かわせようとするプロットとか、星の存亡の危機に際して四大陸の魔王全員で立ち向かうプロットとか、そりゃあもういろいろ…



どうですパンドラさん?そろそろ異世界召喚する気分になってきませんか?もう最寄り駅ついちゃったけど、今ならまだ間に合いますよ?

こうして家までの道をにやけながら歩いてたら横断歩道で信号無視してトラックに轢かれて…っていう転生ものでもいいですよ?どうします?ねぇねぇどうする?あっ水路が見えてきたねぇそろそろおうちついちゃうよ?今のうちに魔法陣の準備しないと間に合わなくな…










ザッバァアァァアアァァァァァァァァァァァァアアア!!!!!!!!









……何だ今の。そこの水路かな…?前一回だけクジラの死体が流れ着いたこととかあったし…ホホジロでも来やがったか…?これニュースになりそうだし今のうちに見に行っとかないと規制線貼られそうだな…


駆け足で数分歩く。人だかりは…なし。これでもし某お祭り男が隣にいたら「ええええええええ!?」って叫んでくれて盛り上がったかもなぁ…なんて思っていると。







地球には居る筈のない、モンスターが一体、視界にうつる。





「ッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




そこにいたのは、少し暗みを帯びた青色のチューブのような体、特徴的すぎるヒレ、緑と黒でデフォルメされた目玉。間違いない。












「レヴィアタン……?」

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