第82話「合同パーティーの結成!」
剣姫アナストレアが、古の森のモンスター退治を引き受けた。
これで、問題は解決したようなものだ。
「マヤもセフィリアも、それでいいわよね」
「まあ、せやな。古の森に魔王軍の残党が流れて行ったのは、うちらのせいでもある。Sランクパーティー『高所に咲く薔薇乙女団』の仕事としては悪くはないやろ」
聖女セフィリアも、もちろんと頷いた。
「良かったねローリエさん。アナストレアさんたちに任せておけば、間違いはないよ」
ケインは、嬉しそうにそう言った。
「ありがとうございます。人間でも、ケイン様なら信用できます!」
感激したローリエにそう言われて、ケインは苦笑いを浮かべる。
「いや、俺には何もできなくて申し訳ないんだけどね」
ケインだって、できることなら自らの手でローリエを助けてあげたい。
だが、Dランクの『薬草狩り』に、古の森で暴れまわってるような強いモンスターの相手は荷が重すぎる。
せっかく剣姫たちがやる気になってくれているのだ。
ここは、Sランクパーティーに任せておくしかなかった。
「もちろんケインも来るわよね!」
「俺は一緒に行っても、足手まといになってしまうだろうから」
「ケインが、今回の討伐隊のリーダーなんだから当然よね!」
「えっ?」
剣姫に、そう話を振られてケインは驚く。
またアナ姫がケインに面倒をかけようとしてると気がついて、慌ててマヤが止めに入った。
「アナ姫、ケインさんはどうやろか……」
「はぁ? マヤも何言ってるのよ。そこの、使い魔だかなんだか知らないのがいるでしょ」
「テトラだ!」
肉が残り少ないなと、スープ鍋をさじでかき混ぜていたテトラは、剣姫にそう言われて牙を剥く。
「あんた。古の森の魔王軍が潜伏してる場所、心当たりあるわよね?」
「そ、それは……」
マヤは、驚きのあまり目を見張る。
元魔王軍の幹部であったテトラから、その情報を聞き出そうとはマヤも考えていた。
それにしたって、いつも力押ししかしないアナ姫が、珍しく知恵を働かせているとは!
これは何か不吉なことが起こる前触れではないかと、マヤは恐ろしくなった。
当の剣姫は、テトラと何かゴニョゴニョと小声で相談している。
なんと、剣姫はテトラの説得に成功した。
「うん、わかった。古巣の情報を漏らすのは気が引けるが、あるじのためであれば仕方がない」
「これで決まりね! 使い魔のテトラはケインのためであれば動くと言ってるわ。つまり、今回の討伐に、ケインは絶対に必要ってことよ」
なんだかんだで、ケインの参加が決定してしまった。
冬は薬草採取の仕事も少なくなるので、暇がないわけではない。
ローリエを助けるために自分が必要と言われたら、お人好しなケインは行くしかない。
「じゃあ、俺が手伝えるところは手伝うよ」
「ふふ、そうこなくっちゃ!」
「俺のことは、荷物持ちぐらいに考えてくれればいいから」
「何言ってるのよ。ケインがこのハイエルフを助けるって決めたんでしょう。私だってケインがやるっていうから行くのよ。ケインが、今回の討伐隊のリーダーだから!」
そうケインに詰め寄るアナ姫に負けじと、テトラも言う。
「我もあるじが行くというから手伝うのだ。普通に考えて、あるじが合同パーティーのリーダーだろう」
「うーん、そうか。みんながそう言うなら、それでいいけど」
こうして、古の森のモンスター討伐のための臨時結成とはいえ……。
ついに剣姫は、ケインを同じ冒険者パーティーに入れるという野望を成し遂げたのだ。
「ちょっと、アナ姫……」
「何よ」
アナ姫の袖を引っ張って、聞き取りするマヤ。
「一体何を考えてるんや。テトラに何を吹き込んだんや」
義理堅いテトラは、昔の仲間を裏切るような真似は嫌っていたはず。
だからマヤも、情報を聞き出すのに苦労していたのだ。
「何って、私はただケインがリーダーになって魔王軍の討伐に成功すれば、ケインの名声が高まると言っただけよ」
テトラもニヤッと笑って答える。
「北方の古の森は、獣人族も多い我が故郷だ。そこで、あるじの武威を鳴り響かせるというのだろう」
「そうよ。今回の討伐は冒険者ギルドも通して大々的にやるわ。あのバカどもに、ケインの実力を思い知らせてやるのよ!」
「我もギルドカードというのをもらったが、お前たちがSランクで我がAランクであるのに、あるじがDランクだという判定に、前から納得がいかなかったのだ」
「あんた、意外に話がわかるじゃない」
「ふん。お前たちに協力するのは癪だが、あるじのためであれば、やぶさかでもない」
あかん、こいつら同類やと、マヤは気がついた。
剣姫アナストレア、聖女セフィリア、使い魔テトラ。
こいつら結託して、なんか妙なところまでケインのおっさんを押し上げようとしとる。
もはや、どうなるかマヤでも予想がつかない。
ううーんと、マヤは腕を組んで悩む。
古の森の魔王軍残党をなかなか根絶できなかったのも事実で、テトラが協力してくれるならば敵のアジトを叩くのも容易になるだろう。
ここは、リスクを取っても剣姫の提案に乗るべきか。
「堪忍やで、ケインさん」
そうと決まれば善は急げだと、何も知らずに荷造りに励んでいるケインに向かって、マヤは心で拝んだ。
なんかまたいろいろと迷惑かけてしまいそうだが、フォロー入れられるところは入れようと思うマヤであった。
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