タイムスリップ

@mikuru3939

第1話 黒ずくめ男ナトリア

蝉が泣き、蒸し暑い夏が来た。

中学三年生の春樹は夏休みを迎えた。これだから夏は嫌い。暑く汗が出り、蝉はうるさい。といっても文句は言ってもしょうがない。虫なんだから。

俺は暑すぎて腹が立ったので、

「行ってきます。」

ドアノブをひねり、家を出た。

やっぱり外も暑いけど、家の蒸し暑さには勝つ。






俺は受験生でもあり、親に対してのプレッシャーがある。俺は頭が悪いものだから、そこら辺の高校でも落ちるかもしれない、提出物だって出さないし、もちろん定期テスト勉強だってしていない。でも私立はお金がかかるし、奨学金と言っても働いて返せと言われても、どうせ底辺になる人間だし、親にも頼れないから勉強をするしかなかった。でも勉強は嫌だった。縛られている気がして、とても無理だった。俺はワガママだった。

学校ではいつも1人で友達なんかはいない。休み時間も放課後も1人。それで良かった。






少し歩き、ある古びた公園に着いた。そこには遊具があるけれど、古すぎて錆びている遊具がほとんどだった。

「小さい頃よく来たなぁ…」

小さい頃は友達もいて、何不自由なく過ごしていた時、よく友達と遊んでいた公園。



ところが小学校低学年終わりぐらいはテレビゲームなどにどハマりし、休日とかは公園で遊ぶではなく、一日中ゲーム三昧だった。このころから徐々に友達は減っていった。


その思い出を思い出しながら足先をみていると、黒い靴が見えてきた。


(ん?なんだ…?)


『こんにちは。今日は暑いですねぇ。』


(え…なんだ!?) 俺はびっくりした。


黒い帽子、黒いスーツ、黒い靴。黒ずくめの男。


「い、いや…そんな格好していたら暑いに決まっていると思いますが…」


『そうですよねぇ』

黒ずくめ男はにっこり笑った。


(何だこの人…)


『ところで、貴方は未来が過去、どちらに行きたいですか?』


「え?」


『えっと、どちらに行きたいですか?』


会って数秒、こんな質問は本当びっくりだ。


「か、過去です。」

(え…?!俺何言ってんだ…本気で答えてしもた!)


『そうですか。過去に行きたい人が本当、いっぱいなのですねぇ。』

と黒ずくめ男は頭を縦に振った。


『ああ、!!申し遅れましたね、私はタイムトラベラーの案内人、ナトリアと申します。』


「な、なとりあ?」

(最初はこの人は何かのアニメのコスプレイヤーの方なのかなと思ったけれど、背は人間を超えているほどの高さ、スーツから飛び出している翼は本物のようだ。)


『貴方のお名前は?!』


「あっ。高畑春樹です。よろしくお願い、、します。」


『ものすごくいい名だ。素晴らしいですね。』

ナトリアさんはニヤリと笑った。

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