上半身と下半身

オカルト雑誌の記者である俺は、とある廃病院を訪れた。

「ここで大勢の患者が医者の医療ミスの所為で亡くなったのか」

その噂はあくまで噂であり本当に起こった出来事なのか確かめるべく廃病院に残っているだろう資料で調べるつもりでここを訪れたが、果たしてどうだろう。

何の躊躇もなく廃病院の入り口から入る事に。

外の空気とは違い明らかに異様な空気を感じる。

今まで数々の心霊スポットを訪れたが、ここはかなりヤバい。

恐怖というより興奮が収まらない。

何せ心霊スポットの王道と言えば、"病院"だよな。

さぁ、どんな恐怖が待っているのか。

記事を書きたすぎてウキウキが止まらない。

あれこれ記事の内容を考えていると、あっという間に出来事の発端である手術室に辿り着いた。

廃病院なので、当然荒れ果てており、手術台と手術道具が無造作に置かれていた。

俺は、色々と踏まないよう注意しながら資料を探す。

「お、あった」

当時の物と思われる新聞記事が机に置かれていた。

読み進めると確かに出来事は本当に起きた事であり、噂ではなかった。

「やっぱりな」

デマではないと知った俺は、帰ろうかと思い、新聞を机に置こうとした時、机に文字が書かれている事に気付く。

そこには……


『今から下半身があなたを襲う』


と書かれていた。

どういう事だ?

困惑していると足音がうっすらと聞こえてくる。

俺の他にも人がいるのか。

鉢合わせしたら色々と大変だ。

俺はバレないように出口へと向かう。

にしてもさっきの文字、何だったんだ……?

手術室を出て薄暗い廊下を歩いていると、

ペタ……ペタ……という足音がはっきりと近くまで聞こえてくる。

裸足で来たのか? 危ないだろ?

そう疑問に思いつつさっさと出る事だけを考える俺。

すると、どんどんと俺の方へと近付いて来る足音が凄いスピードで駆けていく。

何なんだっ!?

廊下の暗さに慣れたころ、遂に足音の正体が判明する。

それは……


下半身だった。


は? 何なんだあれは!?

文字通り襲いかかってきた下半身に逃げ隠れしながら撒こうとする。

下半身は俺の足音だけを頼りに探している。

一体……どういう状況なんだ?

俺はただ記事の為にここに訪れたのに何故こんな目に遭うんだよ!

クソっ!!

ヤケクソになりながらもやっと出口付近へと辿り着いた。

これが希望の光というものか……!

これで……出れる……!

胸を撫で下ろし、記事の事を考えていると出口付近の壁にある文字が書かれていた。

それは……


『お前も道連れにしてやる。次は上半身があなたを襲う』


遠くの方から上半身らしきものが凄いスピードで俺の方へと駆けて来る……。

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