占い

「なあなあ、司。よく当たる占いについてちょっと話があるんだが」

「なんだよ唐突に」

大学の講義中、隣に座っている友達の信二が突然話し掛けてきた。

「駅前に胡散臭い占い屋があって、興味津々で入ったんだけど、それがよく当たって」

「はぁ? そんなの絶対信じねぇ」

「いやいやそれがマジなんだって!」

「えーたまたまじゃね?」

俺は、占いとか幽霊とか信じないタイプの人間だ。

占いは当たる訳ないし、幽霊は見間違いだ。

胡散臭いにも程がある。

しかし、俺は同じタイプの親友の信二が勧めてくれたよく当たる占いというのには少しばかり興味がある。

「まさか占いとか信じないお前がそんなに言うとは驚きだな」

「俺も驚いたよ! 俺の性格、最近の悩み全部当たってすげぇと思ったよ」

「そんなに凄い占いなんだな」

「司も行ってみろって! 凄さ分かるから」

「んー明日暇だし行こうかな」

「絶対すげぇと思うぜ!」

だが、その占い屋に行った事を俺は後悔している。

まさかあんな事になろうとは……。


次の日。

大学の講義が終わり、俺は駅前に行く事に。

「どこだ?」

信二から聞いた情報を頼りに駅前をうろうろしながら、占い屋を探す。

「あ、あれか」

ようやく見つけた俺は、占い屋に入る。

信二が言っていた通り、とても胡散臭い占い屋だった。

「本当によく当たるのか?」

「当たりますよ」

「うわっ!」

突然、謎の女性が目の前に現れた。

「今日はあなたですか」

と、ジロジロ俺の事を見てくる。

すると……


「あなた、憑いてますね」

「は?」

憑いてる?

何が?

「相当危険ですね」

「あの、何がですか?」

「かなりの危険の量の"不幸"が憑いてますよ」

不幸?

「あなた、この占いが終わったらすぐに家に帰って、安静にした方がいいと思います。それか 、神社でお祓いするしか生き延びる方法はありません」

は? お祓い?

こいつ、何言って──

「私の言う事を信じた方がいいですよ」

先程とは違った圧が女性から伝わってくる感じがする。

「全部説明するから、まずここに座って下さい」

女性は、俺を椅子に誘導する。

俺が椅子に座ると、対面状態になるように女性も椅子に座った。

「やはりお祓いした方がいいと思います」

「お祓いって?」

俺に幽霊が憑いているみたいな言い方だった。

「お祓いしないと、あなた死にます」

っ!?

「嘘ですよね」

「いえ、嘘じゃないです。ここまで不幸が憑いている人なんて初めて見ましたから」

「じゃあ、俺はどうすればいいですか?」

「ここから神社まで、1時間くらいかかりますから……それまでに何とか避けないといけません」

「何とか避ける……」

「はい。あなたに不幸が降りかかるからそれを全部避けて下さい」

「そうしないと……死ぬ?」

「確実に死にます」

冗談じゃねぇ!

「俺、帰ります」

痺れを切らした俺は、帰ろうと立ち上がる。

「待って下さい」

女性が俺を呼び止める。

「これを持って神社に行って下さい。必ずです。寄り道はしないで下さい」

渡されたのは、お守りだった。

「分かりました。これを持ってればいいんですね」

「えぇ。このお守りは、あなたを守ってくれます。どうか死なないで下さい」

女性はそう言って奥に入っていく。

はぁ……。

やっぱり胡散臭かったな……。

そう思いながら俺は、占い屋を後にする。


にしても、不幸……か。

信じられねぇな。

すると……

キキーッ!

「危ねぇな」

目の前に自転車がぶつかってきた。

間一髪俺は、避けた。

「すみませんすみません!」

自転車の運転手が俺に何度も謝る。

「前見て運転しろ!」

そう言い、俺は歩き始めた。


ドンッ!

急な衝撃音で、俺は後ろを振り向く。

自動車が俺の真後ろの電柱に衝突していた。

あと一歩遅ければ俺は、事故に遭っていた。

「どうせ偶然だろ?」

俺は、気にせず自宅の道へ歩みを進める。


ガシャン!

俺の目の前でデカい看板が落ちてきた。

「チッ、危ねぇな」

ガシャン!

っ!!

歩き出そうとしたところ、工事用の敷鉄板が落ちてきた。

「これ、まさか……」

絶対ありえないと思っていたが、偶然ではないと俺は察する。

「ヤバい!!」

俺は、神社に方向転換した。

そして、無我夢中で走り続ける。

道中、何もないところで躓いたり、階段から落ちそうになったり、悪戦苦闘しながらも俺は、走り続ける。


「ハァ……ハァ……。もうすぐ神社だ……」

ボロボロになりながら俺は、神社近くの道を通る。

すると……

「火事だー!!」

は?

突然、近くの家が火事になった。

炎に包まれてる家を前に俺は呆然と立ち尽くす。

唯一の神社の道が人だかりで塞がってしまった。

「クソがっ!」

どうしようもなくなった俺は、ヤケクソで近くの石を蹴る。

「どうすりゃいいんだよ!!」

そう言うと、持っていたお守りがまるで神社の道を教えてくれるように俺を誘導した。

俺の事を、引っ張ってくれている。

このまま行けば……!


グサッ!

え……?

『通り魔が人々を包丁で刺している事件が巷で起きています。外に出掛けていく際は、ご注意下さい』

というニュースを今朝見た。

はは、通り魔に刺されて終わりかよ。

でも、俺はまだ死にたくない。

童貞で、彼女いない歴=年齢の俺は、死ぬまでに絶対彼女つくるって決めたんだ。

「俺は……まだ……諦めねぇ……!」

俺は、残りの力を最大限振り絞る。

うぉぉぉ!!

その時、持っていたお守りが光り始めた。

「何だ……」

眩しすぎて思わず俺は目を瞑った。

すぐに目を開けると……

いつの間にか神社に着いていた。

「ハァ……ハァ……ハァ……」

バタッ!

着いた喜びか、俺は力尽きるように倒れた。


それからよく覚えていないが、現在俺は元気だ。

通り魔に刺された傷は、あっという間に治った。

不思議な力って、あるんだな。


この経験から思ったことがある。

占いって、信じた方がいいんだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る