『勇者パーティと魔王軍の日常』
日傘差すバイト
大魔王、世界征服に乗り出す
魔王城の玉座の間にて――。
大魔王は、五人の配下と共に決意を新たにしていた。
「昨今、絶滅危惧の魔物が増える一方だ。
その原因は、必要以上に魔物を狩り続けるニンゲンの所為に他ならん。
よって。
私は、これ以上、ニンゲンの好き勝手にさせるつもりはない。
やはり、世界は、この大魔王テレスが、統べねばならぬ」
テレスはこぶしを握り締め、さらに宣言する。
「心せよ、皆の者。これより、我が魔王軍の使命は、世界征服となる!」
大魔王のお言葉に、御前に跪く四天王の統括。
――元魔王であり、現参謀のビルフェが答える。
「しかし、それには目障りなやつらがおります」
うむ、と大魔王。
「そうだ……我らが宿敵……勇者リノとその一行のことだな」
そこでふと、大魔王は疑問を覚えた。
思わず言葉が砕け、声も数段高くなる。
「って……宿敵ってほど? アイツら?」
「ええ、やつらは今までどんな強力な魔物をぶつけても討伐することはかないませんでした、正式に勇者となった今、ニンゲンたちへの影響も図りかねます」
と、参謀ビルフェ。
そして四天王の一人、炎帝カーデインが進言する。
「今はまだしも、いずれは最大の障害になる恐れがあります」
「……そうか。ならば、お前たちの意見を汲み、まずは勇者を潰すことで、世界に我が存在を示すとしよう」
ハッ!
部下たちの短い返事が、玉座の間に木霊した。
「それともう一つ、ございます閣下」
「なんだ、ビルフェ?」
「ええ、現魔王城は既に老朽化が激しく、勇者を迎え入れるにも、大魔王様がお使いになるにも、相応しいとはいえません。そこで、現魔王城を解体し、新たに作り直したく思います」
「ほう」
確かに、現在の魔王城は建物のそこかしこがヒビだらけで、不気味な古城という雰囲気を醸し出している。
大魔王は、この古城のような姿が結構魔王城っぽくて好きだったのだが、言われてみると、今にも崩れそうなほどに老朽化は目立っていた。
少し考え、
「よかろう。我が城の再建は、ビルフェに任せよう。決して、この大魔王の尊厳を損なうようなモノにするでないぞ」
ハッ!
再び、ビルフェの短い返事が、城内に響くのだった。
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