第38話 第4試合(後)

 ギラの生徒との乱戦を終えたルイシャたちはクラスメイトが待つ控室へと戻った。

 派手に暴れたが裏で動いてくれていたユーリのおかげで大事にはならなそうであった。何よりコテンパンにやられた生徒たちがルイシャたちに恐怖を抱いており反撃する気を失っていたのが大きかった。


「ただいまー」


 控え室の扉を開け、中に入るルイシャ。

 するとその中には部屋を出た時よりもだいぶ顔色の良くなった友人の姿があった。


「おかえりルイシャ、みんなもお疲れ様」


「チシャ! もう大丈夫なの!?」


 驚き駆け寄ったルイシャは椅子に腰掛けている彼の肩をぐわんぐわん揺らす。


「ちょ、ちょっとととと、そんなに揺らすとおろろろ」

「わ! ごめん大丈夫?」

「うええ、吐くかと思ったよ……」


 げっそりとした表情をするチシャ。しかしその顔には暗い雰囲気はなく、笑みが見てとれる。

 しばしルイシャと下らない話をした後、彼の表情が真面目な顔に切り替える


「僕のせいで迷惑をかけてごめんね、みんなの迷惑にならないよう頑張ったんだけっど結果的に危ない橋を渡らせる羽目になっちゃってごめん」


 チシャは深く頭を下げたあと、視線をクラスメイトの一人パルディオに向ける。


「特にパルディオは揉め事こういうの苦手なのにごめんね」


「フーフフ、何を言ってるんだ我が友よ。このパルディオ、友のためなら悪に立ち向かうことへ一切の躊躇いなどないのだよ」


「本当かあ? さっきまで足ガックガクだったじゃねえか」


「ちょっとヴォルフ君?? それは言わない約束だったじゃないか????」


 思わぬところからの突っ込みに驚き抗議するパルディオ。

 そんな騒がしい彼らに釣られ気が張っていたクラスメイトたちも笑う。

 そんな中ルイシャはチシャにだけ聞こえる声の大きさで話しかける。


「チシャ、もしかしたらみんなに申し訳なく思ってるのかもしれないけど、この中にそんなこと思ってる人なんて誰もいないよ。チシャだって逆の立場だったら同じことしてたでしょ?」


「……そう言われたら何も言い返せないね。でもありがとう、おかげですっきりしたよ」


 その言葉に満足そうに頷くルイシャ。

 するとタイミング良く控え室の扉が空き、中に三人の人物が入ってくる。それに気づいたルイシャは三人に向かって言葉をかける。


「あ、お疲れ様です。先輩方・・・


 三人の先輩、生徒会長のレグルスと上級生のシオンとリチャードは手をあげてルイシャに返事をする。


「あ゛ぁ、疲れた」

「ははは、ギリギリでしたね生徒会長」

「生徒会長だなんて呼ばないでおくれよリチャード、我らはあの苦難を共に乗り越えた仲じゃないか」

「かいちょ……いやレグルス。確かにあの戦いを乗り越えた俺たちは親友ダチと言っても過言ではないな!」


 暑苦しくガッチリと握手をするレグルスとリチャード。

 ルイシャはそんな二人とは少し離れたところにいるシオンに話しかける。


「お疲れ様ですシオンさん。試合はどうでしたか?」

「やあルイシャくん、もちろん快勝したよ。当然だろう?」


 そう言って涼しげな笑みを浮かべるシオン。

 相手は強豪校だったにも関わらず疲れた様子は見られない。やはりこの人は侮れないなとルイシャは再認識する。


「先輩方が試合に出てくださると言っていただいて助かりました。おかげでこっちの用も無事片付きました」


「そうかい、それは良かった。僕としてもこのまま一試合も出られないのはつまらなかったからね。それほど面白い相手じゃなかったけどまあまあ楽しめたよ」


 チシャが襲われる事件が発生した時、次の試合の時間が迫っていた。

 なので生徒会長のレグルスは年長者三年生と二年生のみで四回戦に出ることを提案、ルイシャもそれを承諾し別れて行動することになったのだ。


「トラブルはあったけど無事決勝戦に行けて良かったね。決勝は明日、今日はゆっくりした方がいい」


「はい。先輩方の頑張りに応えるためにも今日はゆっくりします」


 色々あったせいですっかり疲れたルイシャは、決勝に備えて体を休めるのであった。

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