第9話 鬼ごっこ
「鬼ごっこ……ですか?」
「その通り。まさか知らないってことはないよね?」
「いやまあ知ってはいますが……」
鬼ごっこはポピュラーな子どもの遊びだ。
その歴史は古く、元を辿れば三百年前に伝説の赤鬼に出会ってしまった人間が、なんとかその鬼から逃げおおせた逸話が鬼ごっこの発祥らしい。
今やこの遊びは誰もが知っており、田舎村出身のルイシャも子ども時代はよくやっていた。
もっとも、いつも幼馴染みのエレナにすぐタッチされていたので楽しかった記憶はないが。
「ルールは簡単、
「……なるほど。ちなみに僕は生徒会長さんが逃げてから何秒後に動いていいんですか?」
「そうだな、十秒後でどうだ? 時間の計測は君が動いてからで構わないよ」
「分かりました、その勝負お受けいたします」
ルイシャがそう言って勝負を飲むと生徒会長はニヤリと笑みを見せる。
「私は過去何十回とこの勝負をしているが……一回も負けたことはない。果たして君にその記録を打ち破ることが出来るかな?」
そう言って生徒会長はルイシャから少し距離を取り宣言する。
「三年Aクラス所属、生徒会長レグルス=ファニードの名において第三勝負『学園鬼ごっこ』の開始を宣言する!」
その言葉と同時に生徒会長レグルスは走り出す。
自信があるだけあって彼の足は速く、ルイシャとレグルスの距離はグングン離れていく。
しかしそれは普通の生徒と比べたら速い、といったレベルの速さだ。
ルイシャや俊足のクラスメイト、メレルと比べたらたいした事はない。
「よし、行くよ……っ!」
十秒待ったルイシャは駆け出そうとする。まだ視界の内に生徒会長の姿を捉えている、これならものの数秒で捕まえることができるであろう。
しかしルイシャが一歩踏み出した瞬間驚くべきことが起きる。
「えっ……!?」
なんと走っていた生徒会長の姿がフッと一瞬で消えてしまったのだ。
(これは認識阻害魔法!? ひ、ひとまず魔力探知しなきゃ!)
ルイシャは焦りながらも魔力探知で生徒会長の魔力を探知する。
しかし彼の魔力反応は学園の至る所から感じられた。
「ど、どうなってるの!?」
混乱するルイシャ。そんな彼に一戦目でスモウ勝負をした生徒会メンバーのマイトが話しかけてくる。
「
「なるほど……つまり普通の手段では捕まえるのが難しいってわけですね」
こうしている間にも時間は刻一刻と過ぎていく。
常人であれば慌てふためいてしまう場面だが、ルイシャは落ち着きを取り戻していた。
それは師匠であるテスタロッサの言葉が頭に残っていたからだ。
『いいルイくん? ピンチの時こそ冷静になるの。絶対に解決できない問題なんてこの世に無いのだから』
「――――分かってるよテス姉、必ず何か方法があるはずだよね」
ルイシャは思い返す、これまで教わってきた全ての
「……よし、これならいけるはずだ」
ルイシャはそう確信を持って呟くと、先ほどペーパーテスト勝負をしたユキに話しかける。
「すみません。一つ、質問してもいいですか」
「え、あ、はい」
ルイシャの反撃が始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます