第6話 魔法学園生徒会

 魔法学園では多種多様なクラブ活動が行われている。

 魔法を研究するクラブや、魔法を使ったスポーツのクラブ。中には異世界発祥の球技なんかも存在する。

 ルイシャたちのクラスにもそういったクラブ活動に参加する者はいる。

 しかし大半のクラスメイトはルイシャの開く教室『ルイシャ塾』に参加したがるので、熱心にクラブ活動に参加する者はいない。


 ルイシャも色々な才能を持ったクラスメイトから学ぶことは多い。

 なので彼は今日も放課後、いつもみんなが集まる校舎外の広場に行こうとしてたのだが……それを遮る者が現れる。


「君がルイシャ君だね?」


 そう言って現れたのはオールバックの黒い髪に黒縁の眼鏡と堅物そうな生徒だった。

 彼の後ろには二人の生徒が付き従っている。


「あなたは確か……生徒会長さん、でしたよね」


 ルイシャはその人物に見覚えがあった。

 彼とその後ろに付き従っている二人の生徒は『魔法学園生徒会』のメンバーだ。彼らはこの学園のあらゆる行事を仕切り、風紀を守る役目を負っているのだ。

 とても多忙で大変な役目なのだが、見事卒業まで生徒会をやり切ると就職の面でかなり優遇されるらしい。なので生徒会に入りたい者は多いのだが、実際に入れる人は少ない。

 その理由は単純、生徒会に入るにはかなり高い能力が必要なのだ。


 つまりこの目の前の生徒会長も、かなり高い能力の持ち主なのだろう。


「ふふ、今をときめく有名人である君に顔を覚えられているとは光栄だよルイシャ君」


「何回か活動してるのをお見かけしましたからね。僕の方こそ生徒会長さんに覚えていられるなんて嬉しいですよ」


「ほう……噂では笑顔で生徒を次々と打ち倒した、血に飢えた獣のような戦闘狂だと聞いていたのだが存外理性的な好青年じゃないか」


「そ、そんな噂流れてたんですか……」


 尾ひれだけじゃなく背びれまで付いた自分の噂にルイシャはガックリと項垂うなだれる。確かに最近知らない生徒に「ひいっ」と出会い頭にビビられることがよくある。何でだろうと思ってたけどこの噂のせいなんだろうなあ、とルイシャは理解する。


「それでその生徒会長さんが僕に何か用ですか? お忙しいんじゃないですか?」


「まあそう邪険に扱わないでくれたまえ。マイト、例の物を」


 生徒会長に呼ばれて彼の後ろに控えていた人物が前に出てくる。

 その人物は筋骨隆々の男だった。とても子供とは思えない筋肉のつき方をしている。スキンヘッドに浅黒い肌、とても道ですれ違ったら目を合わせられないほど厳つい見た目だ。


 そんな彼は手に持った長い板をルイシャの目の前にズドン! と音をたてて突き刺す。その板には何やら文字が書いてある。


「なになに……『生徒会三番勝負』……?」


 その聞き覚えのなく、意味も分からない単語にルイシャは頭をひねる。

 いや何となく意味は分かる。しかしなぜ勝負をするのか、なんの勝負をするのかが全く分からなかった。

 戸惑ったルイシャは一緒にいたシャロとアイリスとヴォルフの方に顔を向けるが三人とも分からないと首を横に振る。


 するとそんな気まずい気配を察知した生徒会長が説明を始める。


「オホン! 生徒会三番勝負とは魔法学園に伝わる伝統行事だ! 挑戦者として認められた者は生徒会のメンバーと戦い、全員に勝利したとき次期生徒会長として認められるのだ! そして光栄なことに君は挑戦者に選ばれた。もちろん嫌とは言わないよな?」


「えぇ、嫌なんですけど……」


 ルイシャは力なくそう呟くのだった。

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