第19話 正体

 男達を無力化させ安全を確保したルイシャ達はまず女性二人を解放し大通りに逃した。

 二人はルイシャと離れるのを嫌がっていたが非常事態だからとお願いしたら渋々引き下がってくれた。住所の書かれた紙をルイシャが受け取ることを条件にして、だが。


 一方ヴォルフはしっかりと三人を落ちていた縄で縛り付けていた。

 路地裏に落ちていたボロっちいロープなので少々心許ないが無いよりは全然マシだろう。


「で、ここからどうすんだ大将?」


「そうだね、まずは彼らが何者なのかをハッキリさせないと」


 そう言ってルイシャは唯一意識がある、最初にヴォルフが蹴っ飛ばした男に詰めよる。


「いったいあなたは何者なんですか?」


「俺が何者かだって? はっ、なんでそんな事話さなきゃなんねえんだよ」


 そう言って男はそっぽ向いて堅く口を閉ざす。どうやら話すつもりは毛頭ないらしい。

 それを見たヴォルフは拳をポキポキ鳴らした後、男の胸倉を掴み持ち上げる。


「いてぇ思いしたくねえんだったらとっとと吐きな。言っとくが俺ぁ大将みてえに優しかねえぞ」


「くく、イキがるなよガキが。お前ごときがいくら凄んだ所で怖くもなんともねえよ」


 男はあくまで余裕の姿勢を崩さない。いったいどこからこの自信が出てくるのだろうか。

 ヴォルフはそんな男を見て言葉で口を割らせるの不可能と判断する。


「そうかい、だったら痛い目見てもらうしかなさそうだなっ!!」


 左手で胸倉を掴んだまま、ヴォルフは右手で思いきり男の顔面を殴りつける。

 その遠慮ない一撃に男は後ろの壁に頭部を思いきり打ち付け、後頭部と鼻からダバダバ血を吹き出す。明らかにダメージを受けてはいるはず……なのだが男は余裕の笑みを崩さなかった。


「へっ、もしかしてこれは尋問のつもりかい? こんなんじゃ雑兵だって口を割らんぜ」


「ちっ……! こりゃ思ったより苦労しそうだぜ」


 思いもよらぬ男の口の堅さに歯噛みするヴォルフ。

 どうすればこの男の口を割れるか……そう考えていると、今までじっと観察していたルイシャが男の元へ近づいていく。


「なんだい? こんどは僕が遊んでくれるのかい?」


 以前余裕の態度を崩さない男。そんな彼の元に近づいたルイシャは、座り込む男の頭に手を乗せる。


「あ? なんのつもりだ?」


「巧妙に隠されてて分かりませんでしたが……ようやく分かりました」


 そう言ってルイシャは男の頭に置いた手に魔力を込め、一気に解き放つ。

 すると今まで普通の人間にしか見えなかった男の頭に大きな一対の紫色の角が出現する。


「……やはり魔族でしたか。あなた達は街中に出るのを禁止されてるはずです。いったいなぜ街中にいるのですか?」

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