第11話 番人
その後もルイシャ達はダンジョンの罠を次々と突破していった。
火の海を渡り、流れくる水を押し除け、迫りくる魔獣を屠っていった。
そしてダンジョンに潜って3時間も経った頃、ルイシャ達はとうとうダンジョンの最深部にたどり着いたのだった。
「うわあ、広いところだね」
そこははとても広いドーム状の部屋だった。
天井は20mはあり、部屋の全長は100m以上ありそうだ。
そして部屋の中心部には何やら光るものが浮いていた。
「これがお宝なのかな?」
それに近づくルイシャ達。
その光るものは赤く輝く球体で拳程度の大きさだった。
何が起こるか分からないので少し離れたところで立ち止まり球体を観察するルイシャ達。
すると急に球体の光が強くなり、ルイシャ達に聞こえないくらいの小さな声を発し始める。
『……生命反応を検知。これより勇者因子の測定を開始する』
そう声を発した球体はルイシャ達の周りを回り始める。
そして時折赤い光をルイシャ達に浴びせる。
「い、いったい何をされてるの!?」
「お、俺だって分かんねえよ! こんな仕掛け見たことねえ!」
その赤い球体はジャッカルですら見たことも聞いたこともないものだった。
ルイシャ達は敵意があるのかすら分からないのでそれを攻撃するわけにもいかず、ただただ飛び回る球体を目で追っていた。
そしてしばらくルイシャ達を観察するように飛んだ球体は元の位置に戻ると再び声を発する。
『……分析完了。該当者二名。転送開始』
そう言った次の瞬間、不思議な光がルイシャとシャロを包み込む。
「うわっ!」
「きゃ! なにこれ!?」
突然のことに戸惑う2人。
己の主人の危機に気付いたアイリスが「ルイシャ様!」と叫びながら手を伸ばす……が、その手が触れる事はなかった。
なんとルイシャとシャロの二人は光に包まれ消えてしまったのだ。
「消え……た?」
混乱する一同。
そんな中アイリスがマクスの襟を掴み、まくし立てるように質問する。
「いったいあれは何ですか!! ルイシャ様はどこに行ったのです!!」
「ちょ、痛いって嬢ちゃん!」
そのあまりの剣幕に怯えるマクス。見かねたカザハとシオンが止めに入り二人を引き離す。
「やめぇやアイリスはん。そんなやつあたりした所でルイシャはんが戻るわけでもないやろ? ウチらに今求められとるんは冷静にこれからどうすることか考えることや、違うか?」
「……いえ、あなたの言う通りです。取り乱しました。すいません」
冷静なカザハに諭され落ち着きを取り戻したアイリスは、素直にマクスに頭を下げる。
それを見て「よし、ええ子や」とアイリスをなでなでしたカザハは、再びマクスに問いかける。
「で、マクスはんは今のに心当たりはあるんか?」
「……正直全く見当がつかない。でも二人の消え方は『転移魔法』の消え方によく似ていた。多分二人はどこか別の部屋に転移させられたんだろう」
「転移……よかった……」
ルイシャが無事な可能性が出たことでアイリスはほっと胸を撫で下ろす。
しかしカザハとシオンの顔は険しかった。
「気づいとるかシオンはん。なんか嫌ぁな気ぃを感じるわ。ウチの子達もびびっとる」
「そうだね、どうやら僕たちは選ばれなかった側のようだ」
二人の意味深な言い方にマクスは尋ねる。
「選ばれなかった? どういうことだ?」
「さっきの球体は僕たちを観察していた。そしてその上でルイシャ君とシャロ君を転移させた。つまり基準はわからないけど二人は合格し、次に進めた。そして僕たちは選ばれずここに残された」
「なるほど……いや待てよ。つまりもう俺たちは……!!」
「そう、用済みということになるね」
シオンがそう言った次の瞬間、彼らの前方に突如大きな何かが落ちてきてドゴオオオオォォン!! と轟音を立てる。
「ふふ、おいでなすったね」
落ちてきたその塊、それはなんと大きさ10m程のゴーレムだった。
そのゴーレムは赤い瞳をギン! と光らせシオン達を睨みつけたのだった。
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