寝るのが厭に
寝るのが厭になった。
寝ていると肩が痛くて仕方がないのである。
数年前に左肩が五十肩となり、程なく痛みは去ったが左腕の可動範囲は、その後数年なかなか元に戻らなかった。この頃になってようやくスムーズに動かせるようになってきたと思っていたら、今度は反対側の右肩にどかんと来た。
初めのきざしは、一年程前からだろうか、腕立て伏せなどの軽い筋トレの際に、右肩に些少の痛みを感じ、だましだまし行っていたのだが、一、二ケ月前あたりからその痛みが募ってきた。それで、腕立て伏せは止しにして、代わりにプランクを行っていたのだが、それすらも近頃では無理になった。
医者に掛かり、数年前の左肩の既往を話し、今度は右肩が――と言ったら、さっそく右腕の動きを確認され、痛さに顔を歪めるのを見てニヤリとされた。その後レントゲンを撮り、その写真を前に、またも先生はニヤリ。
レントゲン上、何も異常は無いそうな。
「肩関節周囲炎」なる診断名を宣告されるまでも無く、シップを渡されて、はい終わり。
それから約二週間、家人に頼んで肩と背中にシップを貼ってもらう対処療法を毎朝続けているが、根本的な痛みの改善にはつながっていない。
辛いのは、冒頭にも書いたように夜間である。寝ていて、右肩の痛さでしばしば目が覚める。それに、右を下にして寝ることができないため、寝返りもままならない。仰向けと左向きにしかなることができず、同じような姿勢を続けることで、体全体的に節々の具合がどうもよろしくないのである。
もともと、僕は眠りが浅いたちだと思う。
寝つきの方は非常に良く、横になるとすっと意識が遠のくので、眠れずに布団の中で煩悶するようなことはほとんど無いのだが、代わりに、しばしば夜中に目が覚めるのである。そして、そんなときは大体何か夢を見ている。
それも大抵が仕事の夢。
夢でまで仕事をしなければならないのは本当に敵わない。それに面白おかしく仕事をしているのならまだしも、ほとんどが思うように物事が進まなかったり、困ったことになっていたりする夢なのである。
仕事以外の夢であっても、思うとおりにならない夢ばかり。
一方、家人はと言えば、夢をほとんど見ないのだと言う。また、たまさか見る夢も、スターに好意を寄せられたりする愉快な夢があるらしい。
こんな不公平が、世の中にあっていいものだろうか。
このように、ただでさえ寝ていても良いことが無く、慢性的に寝不足感を抱える僕に、この頃は更に肩の痛みまでが加わって、本当に寝るのが厭になった。
否、寝るのが厭というよりも、寝続けるのが苦しくなったと言った方が正確なようである。床に入ってすうっと眠りに落ちるのは良いのだが、二、三時間ほどすると目が覚める。
脳裡に去来するのは、面白くもない、どっと疲れる夢。肩も非常に痛い。凝り固まったようになっている腕を、そろそろと動かして痛みの緩和を試みる。
寝返りを思うように打てないので腰などもやや痛むような勝手の悪さ。左を下にして丸まってみたり、また仰向けになって膝を立てたり。
さあ、それからは、一、二時間おきに目が覚め、そのまま寝ているのが厭になる。
最近のトータルの睡眠時間は、平均して四、五時間程度だろうか。
子供の頃や若い頃は、どれだけでも寝ることができた。寝ることがむしろ幸せであった。
三、四時間ほどしか寝なかったというナポレオンの逸話を聞いて(その逸話の真偽は知らないが)、子供の頃はとても自分には出来ないと感心したものだが、今の僕であれば、難なく実現できそうにも思われる。
今日も夜中に何度か目が覚めたり、用便に立ったりしている内に、寝続けるのが苦痛になり、布団の中でしばしスマホを眺め、到頭、起き上がって、PCを立ち上げた。
そうやって、今これを書いているのである。さあ夜も明けてきた。
ところで、今日はお酉様の日。
家人と近くの神社に詣でて、ささやかな熊手を買うつもりである。
僕が書いたものを読んで下さる人がたくさん集まりますように――
そうだ。ついでに安眠祈願、そして肩痛平癒祈願もやってこよう。
<了>
二〇二一年十一月二十一日(日)
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