半時夢一夜

川字

灯台

 こんな夢を見た。


 さざ波の鳴る砂浜を歩いていた。

 足元は暗く、落ち窪んだ足跡がより一層色味いろみを下げる。顔を上げた先には灯台がある。

「熱源灯台とは珍しい」

 そうして、砂を沈め続ける。

 いくらか時が経っただろうか。灯台は大きさを増してゆく。風はいつしか向きが変わって、草の立ち込めるみずみずしいにおいが漂う。

 寄せる水面と揺すられる木の手が、ざぁざぁ、ざぁざぁと私を挟んで共鳴する。

 またいくらか歩が進んだのだろう。石造いしづくりの塔は視界に収まらなくなっていた。

「なるほど、これだけ材料があるのだものな」

 時折り突き出す岩肌を横目に、灯台は近づいてゆく。

 遠目に見えていた輪郭にはなかったニュアンスが滲み出すと、建造物は口を開けていた。

「登らぬも不作法なのか」

 切り欠きの階段に足を乗せ、目指される光へ進む。この塔には部屋が用意されていないのか、溢れ出す光に吸い込まれ、吸い込まれる。

 硬い石段を踏み切ると、すぐには光があった。光源は細かく、その数多の点が飛び回る。一つ取ろうかと、光源をいただく皿に手を伸ばすと、ちゃぷんと音を立てた。水をひとすくいして、光源を集める。

「あぁ、そうか。ここは蛍だったな」


 私はその言葉に肯き、せせらぎに耳を寄せる。

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