第4話

「小学校卒業する時に、中学校入ってもずっとうちらは一緒だって、五人で約束したの。でも私は他の四人の誰とも同じクラスにならなかった。それで、別の友達を作ろうと思ってたとき、綾ちゃんと気が合ったの。ずっと一緒だって言ってたこと、私はまさか他の友達を作らずにうちらだけで仲良くしようって意味だとは思わなかった。だから仲間外れにされたの。綾ちゃんと友達になったから。綾ちゃんも、私がそんな大切な友達を捨てた奴なんだと思って、私から逃げて瑠璃ちゃんのところに行った。それがいつしか、綾ちゃんがみんなの中心になってた。瑠璃ちゃんも鳳蝶ちゃんも朱音ちゃんも蘭ちゃんも、私のこと約束破りの悪い奴扱いするくせに、自分は昔のことなんか忘れちゃったんだよ。でも、どれも私が誤解してたのが原因。馬鹿でしょ、私。」

「そんな友達なんて、下らねえ。いらねえよ。さっさと捨てちまえ。」

「私だって、こんなのおかしいって思ってる。でもみんなを捨てたら、ずっとぼっちになる。あんたはいいよ、お気楽に生きていられて。」

「ぼっちだって悪くないぜ。俺の姉ちゃんだって、昔はずっと、」

「りくちゃん、何やってんの。結ちゃんを泣かせて。」

「え、お姉さん」

「泣かせてなんかねえよ。」

「なかなか戻って来ないから、気になって見にきちゃった。なんか、よく見たら結ちゃんが泣かされてるというよりあんたと一緒に泣いてる感じだね。ごめん、姉ちゃん邪魔だね。」

「あ、いや、その、これは違くて。」

「どこからどう見てもりくちゃんと結ちゃん泣いてるわよ。これは一体何があったのよ。」

「ちょっと言い合いになっちまっただけだぜ。」

「我が弟ながら、情けない男だな。で、何があったの?」

優しい声でお姉さんは尋ねた。

「姫野、言ってもいい?」

「絶対秘密にするって約束してくださるなら。私と園田くんとお姉さんだけの秘密。」

「大丈夫。秘密は守るわ。」

「姫野さ、学校でハブられてんだよ。それで辛くて、今日こいつが一人で河原にいるところを俺が見つけて、その後家に連れて行った。

それで、ハブられてる理由が約束を破ったからなんだってよ。」

「小学校を卒業してもずっと一緒だよって言ってたのに、私がその言葉を誤解して他の子と仲良くなった。福原さんや新藤さんっていう約束してた子たちは、他の誰とも仲良くならずに中学でもずっとうちらだけで仲良くするつもりだったんです。」

「姫野は他の子とも友達になって、福原や新藤とも仲良くするっていうつもりだったらしいぜ。ひでえよ、女子たち。ちっせえよ。」

「そういうことか。思ったより単純だった。結ちゃんは腕に怪我してるし二人で泣いてたし、どんなシリアスな話聞かされるかと思ってたよ。要するに、友達関係のゴタゴタで悩んでるってことでしょ。」

「ノリが変だったし。」

「今は普通に喋ってるじゃない。あんたたち、結構相性いいんじゃないの。」

お姉さんは茶化しているのか本気なのか、私には分からなかった。

「な、何だよ姉ちゃん。そんなことあるわけないだろ。」

「むきになるなって、りくちゃん。結ちゃんなら大丈夫っしょ。」

「そんな簡単におっしゃらないでください。」

「そんな重い約束するくらいなんだし、今はこじれちゃってるけど、お互い大好きだったってことでしょ。それなら大丈夫。ちゃんと話せばいつか分かってもらえるよ。誤解をとけばいいの。」

「でも、どうやって」

「結ちゃんにとっての本当のことをそのまま話せばいいんじゃない。明日、早速やってみれば。早い方がいいっしょ。」

「無理ですよ。」

「なんで?」

「私は文句なんて言える立場じゃないんです。」

「そんなこと誰が決めたの。無視しちゃえ。いいから言えばいいの、明日。お姉さんと約束。」

小指を差し出され、もうどうにもならないと観念した私は仕方なく指切りをした。

「がんばれ、結ちゃん。でもね、どうしても苦しかったら、諦めたっていいんだよ。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る