第37話

 ベティとクライドは手をつないで町を歩いていた。

「ほう。素敵な毛糸がありますよ、ベティ様の瞳と同じトルマリン色の緑の毛糸です」

「まあ、本当。珍しいですわ」

 ベティは窓の外から淡い青緑の毛糸をじっと見ていた。


「お店に入りませんか? ベティ様」

「いいんですの?」

 ベティは喜んでお店に入っていった。

 お店の中には上等の毛糸や、毛糸を編む道具が並んでいた。


「こんにちは。おや、ベティ様。お珍しい」

「こんにちは。最近はロージーに買い物を頼むことが多かったですわね」

 ベティは店主にあいさつをすると、ショーウインドーに飾られたトルマリン色の毛糸の値段を尋ねた。


「お目が高い。あちらの毛糸は、上質の羊のやわらかい毛だけで作られているんですよ」

 そう言って店主はショーウインドーから、毛糸を取り出しベティの手の上に置いた。

「まあ、軽くて柔らかくて温かいですわ」

「それでは、そちらを頂きましょう」

 クライドは、店主にそう言うとあっという間に会計を済ませてしまった。


「はい、ベティ様。これはベティ様の瞳と同じ色の毛糸です」

「ええ。これで、クライド様とお揃いのマフラーを編みますわ」

 ベティは嬉しそうに毛糸の入った包み紙を抱きしめると、クライドに微笑みかけた。

「ありがとうございます、クライド様」


 ふたりは買い物を終え、馬車に乗った。

「今日は楽しかったです」

「クライド様、こちらこそ楽しかったですわ。プレゼントをいただいてしまって、申し訳ありません」

「いいえ、お気になさらず。気に入った物が見つかって良かったです」


 話をしていると、馬車がベティの家の前に着いた。

「それではまた、お会いしましょう」

「ええ、クライド様。その時にはこの毛糸で編んだマフラーをしていると思いますわ」


 ベティは馬車を降りて、自分の屋敷に入っていった。

「ごきげんよう、クライド様」

「ごきげんよう、ベティ様」

 クライドはベティの姿を見送ると、自分の屋敷に帰っていった。

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