第8話
翌朝、ベティ達フローレス家は朝の支度を済ませ、礼拝のため教会に向かった。
「おはようございます、司祭様」
「おはよう」
教会には、すでに人が集まっていた。
ベティ達は後ろの方の席に座った。
礼拝が終わると、なにやら聞き覚えのある声がしていた。
「あら、クライド様!」
「やあ、おはよう。ベティ様。昨日は白いチューリップとお手紙をありがとう」
「いいえ、こちらこそ素敵な花束をありがとうございました」
フローレス夫妻はクライドと話すベティを見て、先に帰ることにした。
「クライド様は毎朝礼拝にいらっしゃっていたのですか?」
「いいえ、いつもではありません。今日はなんとなく、礼拝に参加した方が良い気がした物で」
「私もですわ」
クライドとベティが笑顔で話していると、カールとハリエットに出くわしてしまった。
「ごきげんよう、ベティ」
「呼び捨てはもう、およし下さい。カール様」
クライドの鋭い目が一層、カールを強く睨み付ける。
「失礼致しました。ベティ様」
カールの冷たい目がベティを見つめていた。
「いいえ、カール様。おはようございます」
ベティはひるまず笑顔でカールとハリエットに応対した。
「カール様、行きましょう」
ハリエットは冷たく言い放った。
「ごきげんよう、ハリエット様」
クライドは冷たい微笑みで、カールとハリエットを見送った。
「ベティ様、ヘザートン家の税は重いらしいですね」
「……カール様は仕事が厳しくて有名ですから、そうかもしれませんわ」
「あまり、領民を苦しめていなければ良いのですが」
クライドの眉間に皺が寄った。
「クライド様、カール様のことはあまり考えても仕方ないのではありませんか?」
ベティは困ったような笑顔で言った。
「そうですね、なにか起きたときには善処致しましょう」
クライドはベティの手を取り、フローレス家へと歩き出した。
「あの? クライド様?」
「ベティ様をお屋敷まで送らせて頂きます」
ベティはつないだ手がかすかに震えているのを感じて頬を染めた。
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