第23話

千鶴子はその後、何故かアンジェリンの部屋に又来る様になる。何故そんな恐ろしい事をしたのか?               もしかしら千鶴子に憑依した狐の霊がそうさせたのかもしれない。          それはこうした事柄だった。居達さんと話した数日後に、ドアを外から叩く音がした。「誰だろう?」             基本、自分の部屋に来るのは恵梨香位しか いなかった。後は皆、アンジェリンの知り 合いや友達はカフェテリアで会い、そこで 話したりした。又はアンジェリンが恵梨香の部屋や他の部屋へ行った。基本、恵梨香の 部屋へ行く事が多かった。        特に、千鶴子が部屋を覗いていてからは、 彼女は気味が悪いので来なかった。そして 千鶴子がサンタモニカの英語学校ヘ移る事を話してからは、彼女は千鶴子が移るのを心待ちにしていた。             あんなに気持が悪い、悪霊が着いた女がアンジェリンの部屋の隣にいるから遊びに行けないし、又そんなのが自分とも同じドーム中に住んでいるのを非常に嫌がっていた。   だからドアを叩くのが誰だか分からない。 閉まっている窓から覗いたが誰も見えない。                  アンジェリンは奥の自分のベッドに座った。だが又ノックがあった。         誰だろう?嫌な予感がする。だが千鶴子なら普段はバスルームのドアを中からノックする。まさか外からまで来ないだろう?幾ら 何でも?!               もしかしたらアメリカ人の大学生が他の誰かの部屋と間違えたのかもしれない?    彼女は気になったから思い切ってドアを開けた。すると開けたドアの入り口の横には千鶴子が立っていた。            アンジェリンの顔色が変わった。     その瞬間に千鶴子が彼女を押し退けて飛び 込んで来た。              「アンジェリン、来ちゃった〜!」    手にはクッキーの箱を持っている。    「ねー、これ一緒に食べよう?」     「何それ?」              「クッキーだよ?見ての通り。」     「分かってるけど、何でそんな物を持って 来たの?」               「勿論、アンジェリンと食べようと思って。だからさっき買ったの。」         アンジェリンは千鶴子が何を考えているのかと、用心しながらジッと顔を見た。    「ねー、大丈夫だから!毒なんて入って  ないから。だってまだ開けてないんだよ、 これ?」                「何で私と食べようと思ったの?」    「だって私もうサンタモニカに行っちゃうんだよ?だから、こうしてアンジェリンと何かを食べたかったんだよ。前にアンジェリンにはチェルシーをもらったし。なのに私、何にもお返ししてなかったんだもの。」     アンジェリンは黙っていた。       「ねー、だから食べよう?」       千鶴子はクッキーの箱を開けて一枚をアン ジェリンに差し出した。         「いいよ、自分でやるから。」       アンジェリンは千鶴子が怒らない様に優しく言いながら、箱から一枚出して口に入れた。                  すると千鶴子もその手にしたクッキーを口に入れた。                「美味しい〜!」            嬉しそうに声を上げた。         「アンジェリン、美味しい?」      「うん、美味しいよ。」         「良かった〜!!」           結局無くなるまで二人はそこでクッキーを 食べた。千鶴子の方が沢山食べたが、クッキーは美味しかったし、千鶴子も食べ終わると部屋に戻った。             千鶴子はそれから2日後に、バスルームの ドアからノックをしてきた。       「なあに?」             「アンジェリン、開けて?」       アンジェリンは困った。クッキーをもらった手前、開けなければ怒っていつまでも叩くだろう。                 アンジェリンは、思い切って言った。   「千鶴子、私もう疲れたからもう寝ようと してたの。だから今日は駄目。ごめんね?」「嫌だぁ!!開けて、アンジェリン?何も しないからぁ。私、もう本当に悪いと思ってるんだよ?アンジェリンに色々と迷惑かけて。酷い事をして。だけどもう行くんだから、此処にはいられないから、少しでも長くアンジェリンと話したり、一緒にいたいんだよ。本当なんだよ。」           千鶴子はこうした事をしつこく繰り返した。アンジェリンは段々と千鶴子が哀れになってきた。                 もうあれは憑依してないのかな?サンタモニカに行くのだから、誰か違う人間に付いたのかな?それとももう最後だから又私を狙っている?

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