第6話
弘子とは同室になってからは仲良くなった。彼女は自分の事をドリーと呼ぶ事にした。 だからアンジェリンも直ぐにそう呼ぶ様に なった。 KBSでは自分達の事を、アンジェリンの様にアメリカンネームで呼ぶ様にする生徒達が 多数いた。それは、そのクラスの担任の教師に寄ってそうさせる場合もあった。日本名だと覚え難いだとか言い辛いからの理由でだ。又は自分達が、せっかくアメリカに来たのだからその国の名前を名乗りたいしそう呼ばれたい、と思ったからだ。ドリーこと弘子も その一人だった。 だからアンジェリンは後からドリーにその 真実を聞いてからは驚愕した。 ドリーの話は違うエピソードで詳しく話すが、取り敢えずは何が理由でそうしたデタラメの作り話をしたかを記そう。そうすれば 千鶴子に付いて、もっと説明ができるからだ。 ドリーは千鶴子と同室になってからは、彼女が物凄く嫌だった。千鶴子は大声で話し、 いつも好きな時にしつこく話しかけたりと、かなり図々しかった。そして机の上や自分側の部屋に服や荷物を酷く散らかしていた。 ドリーは綺麗好きで几帳面だったから、こうした千鶴子に我慢がならなかったのだ。それで何とかして千鶴子を追い出したかった。だがハッキリとそんな事を言えない。 だからそうした作り話を考えた。 アンジェリンが幼稚っぽいから芝やんが嫌がっていると言う事にしたい、と芝やんに頼んだ。あの大人しいアンジェリンならそんな事を言っても怒らないし、黙って従うだろうと芝やんに持ちかけた。 芝やんはそれを承諾してくれた。自分はアンジェリンでも千鶴子でもどちらでも構わない、どちらも嫌いではない。 アンジェリンは大人しいから嫌じゃないし、千鶴子とは同じ出身地だし、冗談を言い合ったりして話すし気が合う。だからだ。 それでは上手くアンジェリンに話したらば良い、だが自分はその場にいない。自分の考えでは無いのだから、そんな事を言われるアンジェリンを見るのも可愛そうだからと。 そうしてドリーの思惑通りに事は運び、千鶴子も自分が嫌われているのを知らず、アン ジェリンが原因で部屋を代わってやるのだからと、満足して出て行った。そして部屋を 交換した。 だから千鶴子はドリーを恨んだり嫌ったりをしない。ドリーは千鶴子の悪意を受けるのは避けられた、と言う訳だ?!なんとまあ…。しばらくの間は幾ら感が働くアンジェリンでも,こんな陰謀を企てられたのを露知らず、ドリーとは毎日仲良く過ごしていたのだから…。 そして千鶴子に付いてだが、その前に話さなければならない事がある。 千鶴子と部屋を入れ替わってから少しした ある日、まだアメリカに着いてから一ヶ月と少しが経った頃だ。アンジェリンは居達さんにカフェテリアで話しかけられた。 彼はたまに大学に、皆の様子を見に来ていた。寮ヘ夕方に来てみたり、又は朝や昼食の時間にカフェテリアに来た。そしてアンジェリンや他の生徒達に話しかけたり、又はそこで一人で食事をしたりした。 そんな時に、アンジェリンは彼から話しかけられた。今夜、夕方の5時にカフェテリアに来る様にと。その時にドリーも連れて来る様にと。 アンジェリンは訳が分からなかったが勿論 承諾した。
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