第101話 島田拓三
「凄いですよ島田さん!」
「グッドタイミングです!」
「めちゃくちゃ格好良かったです」
「うう、重いぃ……退いてくれぇ」
シルバーキングに腕を掴まれ、もう駄目だと死を覚悟した時。
島田さんが攻撃してくれたお蔭で奴を倒すことができた。
つい感極まって彼に抱き付いてしまったけど、まさか灯里と楓さんも一緒にダイブしてくるとは思わなかった。
流石に鎧を纏った三人にのしかかられたら苦しいよな。
俺たちは島田さんから退いて、手を差し伸べて引き起こす。
「いや~ごめんねぇ、なんか良いとこ取りしゃったみたいでさ」
「何言ってるんですか! 島田さんが攻撃してくれなかったら俺なんて死んでましたよ!」
「そうですよ、間違いなくMVPは島田さんです」
「でもびっくりしちゃった。まさか島田さんが攻撃してくるとは思わなかったもん」
俺たちが褒め称えると、島田さんは照れ臭そうに頭をポリポリ掻きながら、
「いや~、魔力もポーションも尽きてもう自分ができることはないと思ってたんだけどさ、皆が必死に戦ってる姿を見ていたら身体が勝手に動いちゃってたよ」
「「……」」
島田さんの想いを聞いた俺たちは、顔を見合わせて笑顔を浮かべる。
彼はヒーラーだし防御力も低く、もしシルバーキングの攻撃を一撃でも喰らっていたら死んでいたかもしれない。
そのリスクを顧みず、俺たちと一緒に戦ってくれたことが凄く嬉しかった。
「でもちょっと申し訳ないんだよね。ラストアタックが僕だったから、アイテムとかドロップしてないっぽいし」
そういえばそうだな。
シルバーキングを倒したが、アイテムがドロップしている様子はない。キングモンスターとかは通常モンスターよりドロップし易い方なんだけど、今回はドロップしなかった。
それは恐らく島田さんの武器が幸運値を0にしてしまっているからだろう。
幸運値が低い者がラストアタックをしてしまうと、ドロップする確率が低くなってしまうのだ。
申し訳なさそうにしている島田さんに、俺は何言ってるんですかと告げ、
「ドロップなんて気にしてませんよ。それより、みんなが無事に勝てて良かったです」
「そう言って貰えると助かるな」
「あれ、みんなと言えばメムメムは?」
灯里が首を傾げて問いかける。
そういえばメムメムがいないな。あいつどこにいるんだ?
「メムメムさんなら向こうで力を使い果たして倒れてますよ」
「えっ!? 攻撃を受けて気絶したとか!?」
「いえ、キングトレントを倒すために切り札を使ったのですが、それを使ってしまうと動けなくなって魔術も使えなくなってしまうそうです」
「あー、やっぱりあれはメムメム君の仕業だったのかぁ。凄かったもんね、一瞬でキングトレントを倒しちゃったし」
楓さんの説明を聞いて、島田さんが驚いている。
へぇ~、俺が気絶している間にそんなことがあったのか。起きたらキングトレントの姿がなかったから皆で倒したのかと思ったけど、メムメムがやったのか。
切り札ってあれかな……ユニークスキルの【消滅魔術】だろうか。
島田さんの反応から余程凄い魔術だったんだろうし、俺も後でダンジョンライブを見てみよう。
俺たちは揃ってメムメムのところに向かう。
すると、メムメムは大の字で呑気に寝ていた。
「おーいメムメム、起きろー」
「ん……ああ士郎か。その様子だとあの猿を倒したみたいだね」
「なんとかな。メムメムは切り札を使ってキングトレントを倒してくれたんだろ?」
「本当はこんな芸のない欠陥だらけの魔術なんかに頼りたくなかったんだけどね。パーティーのためなら、プライドなんてドブに捨ててしまえって先生の言葉を思い出したんだよ」
メムメムはずっと【消滅魔術】を使おうとはしなかった。
何か理由があるのかなーと疑問に思っていたが、デメリットがあったんだな。でも彼女のお蔭で俺たちは勝つことができたし、しっかりと感謝の言葉を伝える。
「ありがとな。立てそうか?」
「いや、ちょっと無理っぽい。おぶってくれ」
「はいはい」
「ねえ皆、これってキングトレントのドロップ品じゃないかい?」
メムメムをおんぶしていると、島田さんがアイテムを拾ってくる。
彼の手には大きな魔石とぶかぶかとした法衣があった。
「そっちの魔石は王魔石かな」
「この服はなんだろ?」
「結構大きなサイズだね」
「ちょっと【鑑定】してみますね」
【鑑定】スキルを持っている楓さんが法衣を鑑定すると、こんな内容だった。
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『キングトレントの法衣』
・回復スキルを獲得している職業の防御力を上げる。
・回復魔術の能力を上昇させる。
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性能的にはヒーラー専用の防具だった。
ということで、この法衣は全員一致で島田さんに使って貰うことにした。
「いいのかい? 僕が使っちゃって」
「遠慮しないでくださいよ。島田さんのためにあるようなものなんですから」
「そ、そう? じゃあありがたく使わせてもらうよ」
そう言って、島田さんは法衣を羽織る。
大きくてぶかぶかだったけど、身長の高い彼が着るとピッタリだった。やっぱり島田さんが使うべきものだったんだな。
「そういえばレベルが上がったんでした。この際なのでステータス確認してしまいますね」
「私も!」
「僕もだよ」
俺もそうだけど、全員レベルアップしたみたいだ。
まあそれもそうか。キングモンスターを一気に二体も倒してしまったんだから。
お決まりのワードを言って、ステータスを確認する。
「「ステータスオープン」」
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許斐 士郎 コノミ シロウ 26歳 男
レベル:21
職業:魔法剣士
SP:20
HP:150/410 MP:60/310
攻撃力:370
耐久力:315
敏 捷:320
知 力:305
精神力:315
幸 運:300
スキル:【体力増加2】【物理耐性2】【筋力増加1】【炎魔術3】【剣術5】【回避2】【気配探知2】【収納】【魔法剣1】【思考覚醒】
ユニークスキル:【勇ある者】
称号【キングススレイヤー】
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使用可能なSP 20
取得可能スキル 消費SP
【体力増加3】 30
【物理耐性3】 30
【筋力増加2】 20
【炎魔術4】 40
【魔法剣2】 20
【回避3】 30
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ステータスがちょっとずつ上がっているだけで、大きな変化はないな。
新しいスキルを獲得してる訳でもないし。使用可能SPは20と少ないので、今回は新しいスキルを獲得せずに貯めておこう。
スキルの確認を終えると、島田さんがステータスを見て驚いていた。
「あっ、僕も称号に【キングススレイヤー】がある!」
「おめでとうございます。最後に倒したのが反映されたのかもしれませんね」
「いいな~私も欲しいなぁ」
「まあ、またすぐにキングモンスターと戦うことになるさ」
「用が済んだら早く帰ろうぜ。眠くて仕方ないよ」
「そうだな、帰ろう」
ステータスを確認した俺たちは、二十一階層への階段を上がらず、自動ドアを潜ってギルドに帰還したのだった。
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