パスタの姫騎士セモリーナ

おどぅ~ん

終章1:かくて姫騎士は魔城に突入す

※前回までのあらすじ……特になし

「そりゃ無いわよね、前回ってどこよ?書かれてないでしょ?どういうこと?!」


 多分なんやかんやと色々あったのかも知れないが、正直考えるの面倒くさいので一切は謎のまま。ついにセモリーナは魔王城の城門にたどり着いた。辺りは真っ白な霧に包まれ、そそり立つその巨城以外何も見えない。

 彼女の名は「パスタの姫騎士セモリーナ」。

 ここだけの話、ぶっちゃけ二、三日前に作者が名前だけ思いついたキャラクターである。容姿や能力、経歴諸々は今書きながら決めていく予定、乞うご期待!

「や、ちょっと?意見表明?意見表明なの?そういうことしてるタイミング??」

 これ以上無い投げっぱなしである。正直物語の体を成していないが、そうは言ってもこの際、彼女のやるべき事は当面一つ。

「ふぅん……『魔王城』、ね。で?わたしが行きたくないって言ったらどうするつもりなのかしら?」

 それは困る。何の為に【辺りを霧で包んだ】と思っているのだ。他に行き場をなくすためではないか。どうやらこの姫君、忖度とか思いやりと言う言葉を知らないらしい。第一そこに行かないで何をするつもりなのか。他に出来ることがあるとでも言いたいのか。ふて寝?ふて寝なのか?どうやらこの姫君、そもそも思慮に欠けるきらいがあるらしい。端的にバカなのではあるまいか。

「……ドストレートにメタで困ってるんじゃねーわよ!『思いやりを知らない』とか?何の言い草??ていうかバカで悪かったわね!!こちとら頭の出来すら設定されてないんですけど?!」

 そう、それがバカのバカたる所以である。「容姿や能力、経歴諸々は今書きながら決めていく」とはっきり書いたというのに。ここまでの展開で「自分の反応で今後のキャラ付けがリアルタイムに成されていく」ということに気が付かないのだろうか。

「なっ……」

 絶句したセモリーナは苦い諦め顔でとぼとぼと城門に向かって行った。どうやら納得したらしい。結構なことである、これ以上前置きが長いのはダレるだけだ。

 しかしせっかくの主役、せっかくのタイトルロールなのに、どうして彼女からはこうも覇気を感じないのであろうか。

「この状況でどうやって覇気とかプリプリひり出せっていうのよ……力みようが無いわ……って?!勝手に『意外と下品ネタ好き』とか決められてなくない?」

 その辺がライブ感というものである。キャラ付け全く無しでは書き進めることは困難だからだ。なおこれはどうやら一例に過ぎない。行く手にどんな困難が待ち受けているのか、その時の彼女には予想もつかなかった。

「わたし知ってるわ!遠回しな脅迫ってヤツねそれ!」


 魔王城には数々のモンスターが巣くっていたらしい。

 だが全て割愛。この姫君、強い事だけは間違いないようだ。いや、万一弱いとなると、なぜここまでたどり着けたのか、特別な理由を考えて描写しなければならなくなるではないか。それはあまりにも面倒である。

 なので彼女は強い。問答無用でメチャクチャTUEEEEのだ。大サービスでそう決めた。決めたといったら決めたのである。

 そして。セモリーナは今、魔王城の中心、玉座の間の入口にたどり着いた。

「取り敢えず移動が楽なのだけは有難いわね。すぐに『たどり着いた』だもの。

 さて!『魔王城』なんだし?ここに『魔王』とかいうのがいるのよね。わたし取り敢えず『TUEEEE』んでしょ?じゃぁまぁどうにかなるかな……たのもー!!」

 玉座の間に通じる大きなドアが、ゆっくりと開いていく。大勢の家臣を集めて一度に謁見や号令ができる大広間らしいが、ここもまた霧に包まれていている。なぜ室内に、と思うだろうがそこは描写の簡略化を狙ったものであると同時に、なんとなく神秘的な不気味さを演出できるからであろう。

「そのさ?いちいち説明するのもメンドくない?だいたいわかったよその辺のことは、『今までの流れ』で!とっとと『魔王』とか言うのに会わせなさいよ?」

「呼ばれて飛び出て、ジャジャジャジャーン!!」

 昭和ノリの声が部屋の奥から、大広間の空間に満ちる大音声でとどろいた。しかし深い霧でその姿は明瞭には見えない。茫漠たるそのシルエット。

「よくぞここまで参った。余が『魔王』である」

「あのぅ……なんであなた、昭和ノリなんですか?」

「おぬし、この状況で最初に聞きたいのはそこか?」

「いや、だって!一番気になるじゃないですかそこが?」

「よかろう、教えてつかわす。おぬしも今までの流れは把握しておるな?すなわち!

『隙を見せるとおかしな属性を付けられる』。だったら先に濃いのを自らつけてしまえばよいではないか?」

「そういうもの?」

「おぬしも早く開き直れ。その方がやってて楽だぞ。第一わからぬか?先ほどから小うるさい『地の文』が出て来なくなっておるであろう?我らが積極的に適時、ネタを突っ込んでおけばそういうものは書かなくて済むからだ。

 ……正直こんなクソみたいな物語に長い時間関わりたくもないわ。おぬしとてそれは同じと思うが?ともかくさっさと終わらせる。それにはな、不本意ではあるが『こちらからノる』しか他に術は無いのだ」

「あーまぁ、それはわかるかな。正直クソですもんねこれ。それとも寝ゲロ?」

 言いたい放題、まったく黙って居ればいい気になる姫君と魔王である。どちらも見た目は花も恥じらう乙女であるというのに。

「……え?『魔王』って?あなたそうなの?」

「ふん、声を聞いていてわからぬか?」

「いやそりゃわかんないわよ、小説だから字が見えてるだけだもの」

「では見せてくれよう、我が真の姿。そして我が名を聞け!我こそは……」

 一面の霧が薄れていく。姫君の前に現れた『魔王』のその姿。

「『下着の女王・ランジェリカ』!!ババーン!!」

 呆れて&昭和ノリにつられて一瞬外れたままになった顎の骨を急ぎはめ直すと、姫君は魔王に問うた。

「えと……もしかして……あなたも最近『思い付き』で?」

「わかるか?」

「ええ、まぁ何となく……ちなみにお生まれになったのはいつ頃?」

「誕生以来放置プレイだったのでよく覚えておらぬが、一ヶ月ほど前のことかな。だから特別何かをした覚えもないのだが、地の文との付き合い方はお主より多少はわかっているつもりだ」

「それは頼もしいかも。でも最後の『ババーン』って何ですか?」

「単なる登場効果音である。昭和ノリの続きだ、そう気にするな。というかだな、お主はいちいちポイントがずれておる。もっと肝心な聞くべきところが他にあるだろうに……余は見ての通り『下着の女王』なるぞよ?『んん?』と思わぬか?」

「う~ん、先ほどの声の件もそうですけど、ただそれだけ書かれていてもピンとこないんですよねぇ……説明不足というか?もっとディティールが無いとぉ?」

「ふむ、それはもっともかも知れぬな。よし。

 其処なる地の文!斯様な次第である、我ら二人の容姿についてここで語れ」

 なんたる傲慢。作中登場人物が地の文の内容について直接に要望するなど、いかに『魔王』の肩書を持つ者とはいえ、やりたい放題が過ぎる。

「何を言う?『むさくるしい男ではPVが稼げそうにないから登場人物は女子二人にした』、そういう話ではなかったか?」

「ああコレ、そういう事なんですね?なるほどそれで……」

「なのに一番重要な点について語らぬとは実にけしからぬではないか。余が勝手なのではない、お主が地の文として怠慢なのだ!

 もっとも?ここまで読まれているのかはあやしい話だがな。余が読者であれば冒頭数行でこんな寝ゲロとっくに見限っておるわ。だが!せめてもの情けと思って機会をくれてやっているのだ。

 ……せいぜい見目好く我らを描写せい!!」

(続)

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