第10話 胴を知ろう(単語解答)

 「ドウ」「胴体ドウタイ」は頭(首を含む)と手足を除いた部分を指します。


 主に「胸」「背」「腹」「腰」「尻」が収まっています。

 「ドウまわり」のことを「胴囲ドウイ」「ウエスト」と呼びます。




 「胸」は首と腹の間の前面、「背」は首と腰の間の後面を指しています。


 一言で「胸」と言っても「胸がどきどきする」は心臓、「胸を患う」は肺、「胸がつかえる」は胃を指します。けっこう汎用性のある単語です。


 胸部を取り巻く「肋骨ロッコツ」に囲まれた骨格を「胸郭キョウカク」と呼びます。「肋骨」と書いて「あばらぼね」とも読みます。

 「肋骨」同士の間は「肋間ロッカン」と呼びます。「肋間神経痛」で知っている方も多いですね。

 「胸郭」の内部は「胸腔キョウコウ」です。医学用語では「胸腔キョウクウ」と読みます。息を吸い込むと「胸腔」が膨らむのです。


 胸のあたりを「胸元むなもと」「胸間キョウカン」と呼びます。「胸元をはだける」という言葉も、胸のあたりを露出することを指していますよね。「胸倉むなぐらを掴む」とも表記しますね。「胸元」は肌のほう、「胸ぐら」は服のほうに焦点があります。


 胸が前に突き出ている様子を「鳩胸はとむね」と呼びます。「鳩胸はとむね|ちり」とは女性が和服を凹凸なく綺麗に着られないのでスタイルが良くないとされていました。ということで「鳩胸出っ尻」は基本的に女性に用いる言葉です。


 「胸郭」の前面で平らな部分を「胸板むないた」と言います。たくましい男性を「厚い胸板」と表現しますよね。


 では「胸郭」の中央のくぼみをなんと呼ぶでしょうか。鳥の名前が当てられていますよ。

 そう「鳩尾」ですね。「みぞおち」「みずおち」と読みます。ちなみに「鳩尾」は形が似ているところから当てられたので、可能であればかな書きしてください。では「みぞおち」と「みずおち」はどちらが正しいのか。語源は「水落ち」とされていますが、現在の日本語として確立しているのは「みぞおち」です。

 「みぞおち」のあたりを「胸先むなさき」「胸前むなさき」「胸落むなおち」と呼びます。

 「胸先むなさき三寸サンズン」と書く方もいますが、本来は「むね三寸サンズン」です。これは「胸三寸」と「舌先三寸」が混同した言い回しから生じています。うまいこと書こうとして失敗したパターンですね。


 胸の周囲は「胸回むねまわり」と呼び、その長さを一般に「胸囲」「バスト」と呼びます。


 「手と腕」でも書きましたが、「胸郭」の側面を「脇」と呼びます。「脇に抱える」「脇に挟む」「両脇を締める」など、「腋の下」とは別の部位を指す言葉なので、気をつけてくださいね。




 母乳を出す器官にはさまざまな呼び名があります。

 一般的には「おっぱい」と呼ばれていますね。これはあまりいやらしさを感じません。婉曲して「胸を隠す」と書けばさらにいやらしさはありませんね。

 学術的には「乳房ニュウボウ」一般には「乳房ちぶさ」と読みます。

 また「乳」と書いて「ち」「ちち」と読ませるのもよくあります。「ちちが張る」と使います。

 大きいものを「巨乳」や古くは「デカパイ」、小さいものを「ペチャパイ」と呼んだりします。現在では単に大きい、小さいと書いたりカップ数で表すことも多いですね。


 乳房の先の母乳を出す部分は一般的には「乳首ちくび」ですね。

 読み方を変えた「ちちくび」「ニュウシュ」はあまり一般的ではありません。

 学術的には「乳頭ニュウトウ」と表記されます。

 いやらしさのない書き方だと「乳房」を「胸」と言うように、「胸のつぼみ」と書くこともありますね。単に「つぼみ」とも書きます。


 乳首を丸く囲んだように茶色くなった部分は一般的に「乳輪ニュウリン」文語では「乳暈ニュウウン」と書きます。後者はあまり読めませんが、だからこそいやらしさが減りますね。




 「背」はあまり語彙がありません。

 「」「背中せなか」が一般的で、文語で「背部ハイブ」と書いたりします。

 曲がった背は「猫背ねこぜ」です。

 「背筋せすじ」は「背骨せぼね」に沿って縦に長くくぼんだ部分を指します。




 「腹」は胴のうち胸腔と骨盤の間で、胃腸などを含む部位です。

 「はら」「腹部フクブ」のほか、女性語の「御腹おなかがすく」、罵って「土手どてぱらに風穴を開けるぞ」、幼児語で「ぽんぽん」とも言いますね。


 腹の側面は「脇腹わきばら」「横腹よこばら」。「片腹かたから痛い」「脾腹ヒばらを突く」など慣用句で使われるものもあります。

 腹の下の部分「下腹したばら」「したぱら」「下腹カフク」「下腹部カフクブ」「小腹ショウフク」など。

 腹の周囲またその長さ「はらまわり」「腹囲」でとくに女性は「ウエスト」とも呼びます。一般に「胴回り」が「ウエスト」ですが、これはずんどうな男性に使います。女性は「腹回り」を「ウエスト」としています。くびれていて「胴」でいちばん細いからです。

 布袋様のように太って前に突き出ている大きな腹を「布袋腹ほていばら」、太鼓の胴のように丸く張り出した腹を「太鼓タイコばら」、脂肪で段がつくように突き出た腹は「三段サンダンばら」と呼びます。

 シワの寄った老人の腹は「しわばら」です。


 腹部の中央にある穴のようにくぼんだところ「へそ」と言います。「ほぞを噛む」のように慣用句で用いるものもあります。

 突き出たへそは「出臍でべそ」ですが、これは「(小児)サイヘルニア」の俗称です。

 へそから指幅三本分くらい下にある丹田と呼ばれる心身の精気が集まる場所を「臍下セイカ丹田タンデン」と呼びます。これは魔術や僧侶や修験者などで用いる機会の多い単語ですね。


 生殖器セイショクキは学術的な名称だとあまりいやらしさは出ませんが、妙な生々しさが出ることもあります。

 「性器」「外陰部」はとくに外部生殖器を指す言葉です。

 「陰部」「恥部」「局部」は婉曲した言い方で、さらに婉曲して「下腹部」と呼ぶ場合もあります。「前を隠す」のように「前」だけで表現することも。

 外陰部と肛門との間を「会陰エイン」と呼びます。手術の際にここを切開する手法があります。




 「腰」は「背」の下で尻の上を指します。

 「腰部ヨウブ」ですね。「小腰こごしをかがめる」は「腰をちょっとかがめる」意なので、単なる「腰」とは少し異なります。


 左右の細いところは「弱腰よわごし」といい、腰の上の帯を締めるところを「帯縛おびしばり」略して「おびし」とも。

 女性の腰が細いことを「細腰サイヨウ」と呼びますが「ほそごし」と読む方もいらっしゃいます。これは「腰細こしぼそ」が転じた呼び方です。

 女性のしなやかな腰つき「柳腰リュウヨウ」訓読みすると「柳腰やなぎごし」と言います。「腰細こしぼそ」とも。

 蜂のようにくびれた「蜂腰ホウヨウ」も美女の形容です。


 老人の曲がった「海老えびごし」「弓腰ゆみごし」「二重腰ふたえごし」と呼びます。ときに「腰折こしおれ」とも称しますが「へたな文章」を指す言葉でもあるので、現代ではあまり使われませんね。


 相撲や柔道などで粘り強い腰を「二枚ニマイごし」「ねばごし」と呼びます。


 腰のあたりは「腰間ヨウカン」「腰元こしもと」、その格好を「腰付き」「腰ばせ」と呼びます。


 骨盤のある腰部の周囲を「腰回り」「ヒップ」と呼びます。




 「しり」は骨盤の背面部にある大臀筋などで覆われた部位です。

 「臀部デンブ」俗語で「ケツ」と言いますが、これは「穴」の音読みから転じています。尻の肉の多い部分を「しりっペた」と呼びます。「御居処おいど」は古語でもとは女性語です。「ヒップ」はお尻そのものを表し、また「腰回り」の寸法を指します。

 尻の格好は「しりき」

 突き出た尻は「ちり」「出尻でじり


 「肛門コウモン」は「しりあな」「けつの穴」「アヌス」と呼びます。



 ここまで「胴」にある五つの部位の類語を書きましたが、それほど多くなかった印象があります。

 やはり人間はあまり動かない「胴」に惹かれないのでしょうか。

 「動作の語彙」はそれなりにありますが、やはり手足と比べれば少ないほうですね。



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