「小説の書き方」コラムのドリル

カイ.智水

体の呼び方と動作を学ぶ

第1話 手や腕を知ろう

 今回から皆様と一緒に「小説の書き方」コラムの派生版「ドリル」に取り組んでいきたいと思います。


 小説にはさまざまな語彙が求められます。

 もちろん知っている単語の組み合わせでそのものを表せる場合もありますが、そのものズバリの単語を知っていると表現が広がります。


 ぜひ的確な単語や動詞を憶えて、表現を磨いていきましょう。

 私もこの不定期連載で言葉を磨こうと思います。


 第一回は「手や腕」の単語や動詞について語彙を増やしましょう。


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 手や腕にはさまざまな名前が付いています。


 たとえば右手と左手、少し大きくとると右腕と左腕。

 これ、指すものが異なるのですが違いはわかりますか?

 また前腕と上腕、二の腕はどちらを指しますか?

 二の腕があるということは「一の腕」もあるの?


 腕にかかわる関節としては肩、肘、手首があります。

 そこにつながる骨や筋肉の名前はわかりますか? ボディビルダーを出すのなら知っていないと的確には書けません。そういった特殊な職業以外でも、「上腕二頭筋」「上腕三頭筋」ってどう違うのでしょうか。

 筋肉の怪我を書くときは、筋肉の呼び名を知らなければなりません。

 「右腕の筋肉を痛めた。」もありですが「右手上腕二頭筋を損傷した。」と書けばどこに故障が生じたか的確に伝わります。


 たとえば採血で注射器を刺す「肘の反対側」はなんて言いますか?

 わきの呼び方にもさまざまありますよね。

 腋と脇って同じ「わき」だけど、指しているものが違いますよね。


 手のひら((掌)には掌紋というのがあります。

 そこには手相で有名な感情線や生命線などがあります。どの線がなに線かわかりますか? 占い師を出したければ知らないと「らしさ」が出ませんよ。

 手のひらの裏側はなんて言いますか? 手の甲ですよね。


 親指、人差し指、中指、薬指、小指。第一指はどれでしょうか? 紅差し指は? 食指は?

 第一関節と第二関節。指先に近いのはどちら?

 手のひらと指がつながっている関節はなんていうの? 「人差し指の付け根」と呼ぶ場合が多いですね。

 指先の爪の反対側は「指の腹」って知っていましたか? 指紋があるのも「指の腹」です。

 指紋は左右合わせて十指ですべて異なっているのを知っていますか?


 指と指の間には「水かき」の名残が残っています。


 げんこつだったり平手だったり、形によっても名前がありますよね。

 「霊丸の構え」と書くとパクリですが、「親指と人差指を立てて握った手」と書けばどんな形かわかるはずです。



 あなたにとって、手や腕で知らない名前や呼び方はありませんか?

 知らなければならない名前や呼び名を記憶していないと、小説で的確に指定できません。


 類語辞典を開いて、肩、腕、肘、手首、手、指にかかわる単語を読んでみましょう。




 また物を握ったり絞ったり開いたり払ったり、はたいたりたたいたりなぐったりはじいたり引っ掻いたり、投げたり捕ったり、押したり引っ張ったり、上げたり下げたり、振ったり止めたり、関節を極めたり、つまんだりつねったりひねったりまわしたり撫でたり。ピアノをいたり、ギターを爪弾つまびいたり。

 動作にかかわる語彙も増やすべきです。


 あなたの小説をレベルアップさせるには、まず体の描写に凝りましょう。


 その始めの一歩が「手と腕」です。



 人間は二本の足で立ち、両手を自由に操って進化してきました。

 あなたの小説も、手を自在に用いて動作を増やすのです。


 「頭を掻く」と書くだけでも、どんな動作をしているかわかりますよね。


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 本「ドリル」は当面「体」について見ていきます。

 人間が最も知りたいのは、人間そのものです。

 部位の呼び方や動作を的確に書かなければ、表現力の乏しい作品にしかなりません。


 また知っているだけで書かない書き手もかなりいらっしゃいます。

 そこまで細かく書かなければならないのか。

 そうお考えですよね。

 私もそう思います。


 ですが知っているだけなのと、書いて読み手に伝えるのとは大きく異なります。

 読み手は文字にして書かれていなければなにも想像できないのです。

 多少くどくなってもよいので、細かく書ける部分は書きましょう。

 書いた後に読み直して「ここは書かなくても伝わるから省こう」と考えればよいのです。

 説明不足よりも説明過多くらいのほうが読み手に伝わります。

 書き手と読み手が同じものを想像するには、書かなければなりません。

 書かないで共有できたらあなたはニュータイプです。


 しかしほとんどの「小説賞・新人賞」の選考さんはオールドタイプなので、書かなければなにも伝えられません。

 だから書くのです。


 賞レースで勝ち抜くには、あまり他の方が書かないものをしっかり記す「説明力」が求められます。

 小学校で習うものばかりで書いた作品の底は浅いのです。

 大学生になってようやく習うようなものばかり書いていたら、ライトノベルの主要層である中高生にはなんのことだかわかりませんよ。

 このさじ加減を学んでいきましょう。



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