第39話
コウダイくんとの約束場所は、お互いの学校の中心地点にあるファミレスだった。
約束時間までまだ10分もあるけれど、つい早く到着してしまった。
先に席に座ってコウダイくんに連絡を入れる。
《コウダイ:あと5分で到着するから、好きなもの注文してて!》
その文章にまた自然と頬が緩んでしまった。
こんな風にメッセージをして待ち合わせをするなんて、まるで本物のカップルみたいだ。
ちゃんとしたデートを産まれて初めて経験したあたしは胸の高鳴りを抑えることができなかった。
ノドカの彼氏だということはわかっているけれど、それでも楽しくて仕方ない。
ドリンクバーを注文してオレンジジュースを一口飲んだ時、コウダイくんは姿を見せた。
「ごめんおまたせ」
片手を上げてさわやかな笑顔で言う。
「ううん、大丈夫だよ」
そう返事をすると自然と頬が熱くなるのを感じた。
きっとあたしの顔は今真っ赤になっていることだろう。
コウダイくんはあたしと同じドリンクバーを注文すると、コーヒーを持ってきた。
「すごいね、ブラックで飲むんだ」
「うん。こっちの方が健康的だって母親に言われてさ」
コウダイくんはそう言うと照れ笑いを浮かべた。
「それで、さっそく本題なんだけど」
コーヒーを一口飲んだコウダイくんが、真剣な表情でそう言いカバンからノートとペンを取り出した。
「霊感があるってことは、幽霊が見えるってこと?」
あたしに質問しながらノート開く。
そこには都市伝説や怪奇現象などがズラリと書き込まれていた。
「そのノートはなに?」
質問に答える前に、あたしはそう聞いた。
「これは趣味のノートだよ。俺、オカスト系が本当に好きなんだ」
そう言えば前に会った時もそういったことを話していたっけ。
それにしても、いろんな出来事をノートに書きつけていくほど好きだとは思っていなかった。
「あたしの話なんて大した内容じゃないけど……」
気送れしてしまい、あたしは言った。
するとコウダイくんはブンブンと左右に首をふる。
「ただのオカルト好きと、実際に霊感があるのじゃ全く違うよ。どんな話でも聞いてみたいんだ」
コウダイくんは目を輝かせてあたしを見つめる。
その目があまりに真っすぐなので、ついそらせてしまいそうになる。
「で、質問なんだけど、幽霊が見えるの?」
コウダイくんは先ほどの質問を繰り返した。
「うん……まぁ……」
あたしは曖昧に頷く。
それでもコウダイくんは興味津々で身を乗り出してきた。
「それって、ずっと見えてるの?」
「う、ううん。チャンネルみたいなのがあってね……」
あたしは今日クラスメートにしたのと、同じ説明をする。
随時見えると説明してしまうと『ここにはなにかいる?』『あっちにはなにか見える?』と、質問責めにされそうで面倒に感じたからだ。
「へぇ! テレビと同じで霊感にも局番があるって考えればいいんだな!」
「まぁ、そうだね……」
あたしのデマを喜んでノートに書き込んでいくコウダイくんに、あたしは苦笑いで返事をする。
実際に見える見えないを切り替えることができるかどうかなんて、あたしは知らない。
「今までどんな幽霊を見たきたの?」
「最近ではクラスメートたちが見たがるから、チャンネルを合わせて見ることが多いよ」
あたしはオレンジュースを一口飲んで答える。
「人から頼まれて見るの?」
「う~ん……その時々だけどね」
首をかしげて答える。
こういう質問は、どう答えるのが正解なのかよくわからない。
「そうなんだ。それなら、俺のお願いとかも聞いてもらえるのかな?」
「お願い?」
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