宇宙漂流お父さん

T-Akagi

【短編#1】プロローグ

 宇宙を漂って何年になるだろう。

 今が何時かも、何月何日かもわからない。

 朝も昼も夜もない。だからといって真っ暗でもない。

 散りばめられた星たちが、天然のプラネタリウムになっている。


 何年も前から、私は宇宙ステーションから切り離された宇宙船に乗っている。


 地球にいる家族に想いを馳せながら、今日も宇宙を漂っている。


ー・-・-・-・-・-・-


 お腹空いたなぁ。


 何年も同じようなものしか食べていない。


 テクノロジーで空間内の成分を循環させる事に成功。

 人が食べるものも水分も、成分の循環機能で絶え間なく再現出来るようになっていた。


 ただ、同じ成分から出来る食べ物なんて、同じような味のものばかりだ。とっくに飽きている。


 それでも、食べるものを絶やすわけにもいかない。

 今日も、同じものを同じ量だけ食べていく。


 この宇宙船内にいる限り、食べ物に困る事はない。体力低下用の用具もある。疾患も自動検出して治してくれる。


 唯一無二の不自由と言えば、誰もいないことだ。


 正確には、私以外に誰もいないこと。


 宇宙ステーションから離れてから、途中まで繋がっていた通信も、いつの間にか途絶えてしまった。


 私は地球から離れ続けている。



 いつか、


 いつか誰かに会えるのだろうか。



 明日、もしかしたら、誰かと会えるかもしれない。


 その希望だけは捨てずに、今日もまた同じような食事を頬張る。


ー お父さん、お父さん、起きて ー


 遠くで誰かの声が聞こえた気がしたが、私はそれでも宇宙を漂流し続けていく。

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