幕間Ⅱ

資料

「おーい、友よー。起きろー。朝だぞー」


 そんなことを言いながらゆっさゆっさとアテナの体を揺さぶる□□□□。


 暫くしてアテナが「うう……」とうめき声に近い声を上げて、椅子の背もたれから体を起こし、


「なに?休んでるんだから、起こさないでよ……」


「いや、それは分かるけど、ほら。資料持ってきたから、例の〈途中〉の子の」


 そんな言葉を聞くと、アテナは実にうっとおしそうに体を起こして、□□□□が持ってきた資料とやらに目を通し始める。


「っていうかこれ、どうしたの?なんか面白い形だね?」


「ゲーミングチェア」


「げーみんぐちぇあ?」


「そ、なんかはなの世界とかで結構流行ってるみたいだから、コピーして使ってるの。意外といわよ。そのまま寝られるし」


 □□□□はかなり大きく倒された背もたれを眺めて「確かに……」と呟いたのち、


「いや、寝ないでよ。もー◇◇◇◇はすぐサボろうとするんだからー」


 折角力はあるのになーと呟く。その間アテナは淡々と資料に目を通し、


「ふぅん……なんか結構めんどくさい人生送ってきてんのね、華」


「そうみたいだよーあと、華ってだれ?」


 アテナは資料をひらひらさせながら、


「この子。向こうだと笹木華って名前してるのよ。華ってのは私が考えたのよ。いいでしょ」


 と、ドヤ顔をする。


 □□□□は軽く受け流すように、


「はいはい。良くできました。それで?どうよ、現状は」


 アテナは「良い名前だと思うんだけどなぁ……」と呟いたのちに、


「まあ、順調って感じじゃない?華ってああ見えて人たらしっぽいから、仲良くなるのは難しくないと思うわ。けど、」


「けど?」


 アテナは再び資料をぱらぱらとめくる。


 暫くして、手元の机でトントンとまとめて、


「その分だけ、苦労するかもしれないけどね」


 そう、呟く。□□□□は「かもねー」と笑いながら、


「ま、取り合えずそれ、置いてくから、使ってよ。それじゃーねー」


 とだけ告げて、あっさりと〈退出〉する。


「相変わらず自由だこと」


 アテナは一言だけ呟いて、


「ま、せいぜいがんばりなさいな。“佐々木ささき小太郎こたろう”くん」


 届くはずもないエールを送った。

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