『ゆうれいさんお断り』

やましん(テンパー)

『ゆうれいさんお断り』

  

  『これは、フィクションです。』





 うつうつしながらの、お散歩帰りに、なんだか、やたら、お腹がすいたので、いつものおばちゃんの店でおうどんか、おそばを頂こうと思ったのです。


 夕陽が、もう、落ちようかという、秋の空でした。



 そこで、長年親しんだ入口の戸を開けようとしたとき、これまで見たことがない張り紙がありました。



  『ゆうれいさんお断り』



 『な、な、なんだろう。』



 まさか、おばちゃん、認知症の兆しかしら、とか思いながら、中に入りました。



『あら、いらっしゃい。珍しい時間に現れましたね。』


 『ははは。お散歩です。』


 『それはそれは。』


 『あの、やはり、てんぶらうどんね。』


 『あいよ。』


 『おばちゃん、あれ、なに?』


 『あれ?』


 『あれ。あの、張り紙。』


『ああ、あれね。それがねぇ。最近、ゆうれいさんが食べに来るようになってねぇ。いやね、代金払ってくれるなら、ゆうれいさんでも、お客様だよ。でも…………』


『むせんいんしょく、ですか。』


『まあ、なんていうか、たべたら、消えるんだよね。支払いする前に。入るときは、玄関からちゃんと入るのにね。いくらなんでも、礼儀が出来てない。それは、だめだから。』


 おばちゃん(おばあちゃん)は、昔から、若い人の礼儀には、厳しいのです。


 僕くらいの年になると、もう、文句は言わないのですが。


 『あんたくらいの年代は、基本が出来てるから。』


 だそうです。    🍜



『なに、たべるの? ゆうれいさんは。』


『うーん。好きなのは、うなどん付きそば、だね。』

           


『ぼくが、年に一回しか食べない、あの、プラチナメニュー❗』


『あい。』


『そりゃ、おばちゃん、断らなきゃ。』



 『そら、あんた、断れる雰囲気だと思う?』


 『いやあ。だって………』


 『あれみたら、はやく、食べて帰ってください、て、思うよ。なまごみだあ。』



 『実際に食べるんですか?』


 『まあね。食べるというか、通過するというか。ね。』


 『ぶ❗ あと、掃除になる?』


 『なる。なる。』


 『はあ〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️ 😦』



『でも、現れる前には、しゃりん、しゃりん、と、鈴みたいな音がするんだ。』



      🎐



   『しゃりん、しゃりん、』




『う。きた。』



            🎐



 ぼくと、おばちゃんは、固まりました。



 夕闇が迫る中に、何かが店の前に立ったのです。



 それは、しばらく、じっとしていました。



 固唾を飲んで見つめるふたり。


 


    しゃりん、しゃりん、  🎐


  


 その音は、去ってゆきました。



 『あらま。効いたかしら。』


 おばちゃんとふたり、顔を見合わせたのです。



 すると、



 『うなどん付きそば、してくらさい。』



 『わ!』



 ぼくの席の真ん前に、それは、突然、現れたのです。



 突然に。ですよ。



 ショートカットで、分厚いメガネ👓。



 眼窩は深く落ち込んでいて、真っ暗な深淵がそこから、覗いていました。



 あちこち、お顔が、潰れているような。



 『うな。うな。うな、つき…………です、か。』

 


 『うなどん付きそば、です。はい。』



 それは、はっきりと、そう、注文したのです。


 

 おばちゃんは、ロボットみたいに、調理場の中に入りました。


 

 ぼくは、お見合いみたいに向かい合うかたちになったのです。



 そこで、ぼくは、とっさに、手元にあったメモ帳にささっと、走り書きして、それ、の前に差出しました。




  『御代、払って くださいね。』




 その『ひと』は、反応しませんでした。



       🍜



 おばちゃんは、律儀に、うなどん付きそば、を、作ってきました。



 それは、割り箸を、ぱか、と、割り、しずしずと、食べたのですが…………



 なかみは、そのまま、床に直行でした。



 そうして、少し、悲しそうな顔をして、やがて、、、🕯️、、、消えたのです。



 『ふう………………』



 おばちゃんは、となりの席に座り込みました。



 ぼくは、目の前に、何かが残っていることに、きがつきました。



 『おばちゃん、これ。』


 おばちゃんは、触らずに、目を近くに寄せて眺めたのです。


 『これは、指輪だね。ダイヤモンドかな。』



 『うーん。そうきたか。』


 ぼくは、さきほどの、メモを、テーブルの上に乗せました。



 『は〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️。』



 ふたりは、ため息を出しました。  




  ・・・・・・・・・・・・・・・ 




 おばちゃんは、指輪を、落とし物として、警察に届けたそうです。


 聞くところでは、それから後は、現れていないらしいです。



 やがて、その指輪✨💍✨の所有者がわれました。


 なんでも、ある大学の、研究助手さんだったそうですが、現在、行方不明なんだそうです。



 指輪は、婚約者という人が、プレゼントしたらしいですが、この方も、行方不明だとか。


 なにが、あったのでしょう。


 指輪自体は、紛れもない、ダイヤモンドで、それなりの価値があり、うなどん付きそばならば、133・33333、お代わりくらいは出来るらしいです。


 

 

  ・・・・・・・・・・・・・・



       😞💨




 で、それから、少しして、ぼくは、行方不明になりました。



        🧗




 さんにんで、うなどん付きそば、を、食べに行く話しになったからです。


        🍜



 『おばちゃん、うなどん付きそば、みっつ。お願いしまふ、まだ、余裕だよね。』



 



           おしまい


 


 



 


 

 


 

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『ゆうれいさんお断り』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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