第4話胡散臭い聖女 sideシオン
俺は勇者パーティの一員として、新しくメンバーに加わる癒しの聖女とやらを観察していた。
フェニール王国の神殿のホールで俺たちを見て立っている、聖女と呼ばれる女は、プラチナブロンドの長い艶やかな髪をした綺麗な女だった。
その聖女ーーーフェルマは深いアメジストの色をした瞳を目いっぱい開いて、信じられないものを見たような顔で、イグニスを見つめている。
その頬は赤く染まっていて、ああ、こういう反応はよく見るな。
俺を見た時にはイグニスの時とは対照的にぎょっとした顔をしていた。
まあこのフード姿では当然の、こっちもよくある反応だ。
どっちにしろ思っていることが全部顔に出ていたから、神殿育ちで、世間ずれしてない、うぶな女なんだろうなと思った。
実際、その言動はいかにも聖女といった感じで、控えめで丁寧で慈愛に満ちた聖母みたいだった。
けど、一緒に旅を始めると、俺はその『聖女』の貌が、なんだか造られたもののように感じた。どこか、無理やり繕っているような違和感。こいつ、胡散臭いなと思った。
その聖女然とした顔の下で一体何考えてやがるんだ?
俺がそんな薄っぺらい演技に騙されるとか思ってるのか。
そう思うと、フェルマが聖女然とした顔で話しかけて来ても、つい、邪険に扱った。
胡散臭いとは言っても、まだフェルマは何もやらかしてはない。戦闘の時だって、助けてもらうこともある。だから一応、仲間としての最低限の礼儀は守らないと、とは思うんだが、俺は自分に嘘を付くのが苦手だ。
胡散臭いと思ってるのに、ニコニコとイグニスみたいな対応は出来ない。
まあ、イグニスがフェルマのことをどう思ってるのかなんて知らないが。
まあ、そのうち、その化けの皮を剥がしてやりてえな。とか思っていたら、さっき、なんかすごいものを見た。
夕食の時に、酒に酔ったリアナがイグニスに絡み始めて、フェルマが先に帰った。
まあ初対面の時にフェルマはイグニスを見て赤くなってたから、この光景は見ていたくなかったんだろう。
俺は何も言わずそれを見送ってたが、そういや一人で帰して大丈夫だったか?とふと思った。
そう言ったって、宿はここから目と鼻の先の近さだ。
だから別に心配ないと言えば心配ないんだが、一応、仲間だし。
俺は、確認だけしておくことにした。
トイレに行くふりを装って、酒場の扉を開けて外を見てみたら、
フェルマが3人の男に絡まれてるようだった。なんだよ、やっぱり大丈夫じゃなかったじゃねえか。
慌てて助けようと思ったら、フェルマが男を一人吹っ飛ばした。
え?と思ってる間に、残りの二人もぶっ倒した。
え?今の何?
きっと顔がはっきり見えていたら、俺の顔はぽかんとあほ面を晒していただろう。
そうしたら、急にフェルマが振り返って、俺とフェルマの目が合った。まああいつからは目なんて見えないはずなんだが。
フェルマの顔が一瞬固まったあと、
「この方々転んでしまったようですわ。どうか助けて差し上げてくださいませ。それでは私は宿に戻っておりますね」
そう言ってものすごい速さで歩いて行った。
ーーーーーえ?何今の?
俺はまた同じ問いを自分に発していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます