推薦図書
「あれ? 吉川が恋愛小説読んでるの珍しいね」
いつも通り図書室を訪れると、吉川が難しそうな顔で恋愛小説と睨めっこしていた。
吉川は普段ミステリやファンタジーが中心で、僕は恋愛小説を中心に読んでいる。
「図書委員からの推薦図書を何冊か選んで紹介文を書くように言われちゃってさ。本をあまり読まない人に推薦するならこういうのも入れないとなって」
「なるほどね。良さそうなのあった?」
「うーん、いくつか冒頭だけ読んでみたけど、ピンとくるのはなかったかな。……佐藤くん、お薦めの本ない?」
僕は頷いて書架へ移動し、本を数冊適当に見繕って戻ってきた。
「おー。ありがとう! ついでにその本を使ってビブリオバトルしてくれない? 選手は佐藤くん一人だけど」
「普通に『内容紹介して』で良くない?」
呆れつつもネタバレにならない程度に内容を掻い摘んで紹介する。
吉川はその中で興味のそそられたらしい本を二冊を読んでみることにしたようだ。
嬉々として選んだ本を読み始めようとする吉川の機先を制すように僕は言った。
「どうせなら僕にもお薦めしてくれよ」
「ん、わかったよ。ちょっと待っててね」
しばらくして戻ってきた吉川に例の如くビブリオバトルさせ、僕も二冊を選んだ。
そして次の日――
「佐藤くん、これ面白かったよ!」
「吉川こそ、これ面白かったわ」
読書家の性と言うべきか、それから当然のようにお互いに感想を話し合って一頻り盛り上がった。
「お互い楽しめたみたいで何よりだね。もう少し候補挙げたいし、今日もお互い紹介し合わない?」
「だね。そうしよう」
昨日に引き続きお互いが思い思いの本を選んで集まったとき、はたと思いついたことがあり問いかける。
「これって分担して紹介文書いたらダメなの?」
「……だってそれだと佐藤くんと感想語り合えないもん」
顔を赤らめてぷいと横を向いた吉川に、なんだか面映ゆい気持ちになりながら改めて今日もお互いに本を紹介し合った。
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