第81話本多佳子と本多美智子が教会に到着

シスター・アンジェラは、春麗を別室に呼んだものの、事件の具体的な内容を伝えることはしなかった。

「もったいぶるようで、不安にさせてしまうけれど」

「とにかく、簡単に説明ができない内容」

「事件が動いている最中でもあるので、もう少し待ってね」


春麗は、素直に頷く。

「それで、当面の私の役目は、どのようなものに」


シスター・アンジェラは

「もう少しすると、本多佳子さんと言う女性と」

「その娘さんで、本多美智子さんが、教会に来ます」

「私たちも対応しますが、春麗にも、それを伝えておこうかと」


そして、声を低くした。

「元君には、まだ、言ってはいけません」

「元君の実の祖母と、お母様になります」


春麗の目が大きく開く。


シスター・アンジェラは、また低い声。

「夜には、元君の、実のお父様の山岡さんも、教会に来られます」

「詳しい事情は、今の段階では言えません」

「とにかく、3人とも、当面は、来客対応をお願いします」


春麗は、「わかりました」と、素直に頭を下げた。



シスター・アンジェラとの約20分の話を終え、春麗は別室を出た。

表情は、全く変えていない。


美由紀が不安なのか、春麗に尋ねた。

「何かあったの?」


元と奈穂美も、見て来るので、春麗は答えた。

「お客様が、3人来るから、その対応もということ」


元は、あまり興味がない。

「明日、本番だから、弾いて来ていいか?」

と、練習をしたい様子。


春麗は、笑顔に戻った。

「うん、そうだね、私も声を出しておく」


美由紀と奈穂美も、異論はなかった。

そのまま、4人で、明日の集会のための練習をするため、ホールに向かった。



少しして、本多佳子と、本多美智子が、同時に教会に到着した。

マルコ神父とシスター・アンジェラ、そして中村が出迎えた。


マルコ神父

「ありがとうございます、いろいろと事件がありまして」

「今、元君は、ホールで練習をしております」


本多佳子は、深く頭を下げた。

「本多にございます」

「マルコ神父様、シスター・アンジェラ様、それから中村様」

「元の命を救っていただいて」

「何から何まで、ご面倒をおかけいたしまして」


元の実母、本多美智子は、既に泣いている。

「ごめんなさい、ありがとうございます」

としか、言葉に出ない。


シスター・アンジェラが、二人を抱いた。

「事件のことは、今は進行中」

「全てお話しますが、夜にでも」

「ホールで元君を見ましょうか?」


中村の目も、かなり潤んでいる。

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