はじまる決戦の攻略
ハウスマスターに連れられて、資料室に通してもらった。
マンチェストの言っていた資料室とはここのことだったのだろう。
S級ダンジョンのダンジョンハウスにしかない人類にとってわりと重要な場所だ。
「まずは俺のお気に入りのアクセサリーからお願いします」
「加納さん、前々から思ってましたけど、そのネックレス似合ってないですよね」
「ちょっと静かに、芽吹さん」
「……」
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アーティファクト
『7人の騎士』
亡国の騎士がつけていた銀鎖の首飾り。
消費MP:500
効果:使い魔『亡国の騎士』を召喚できる
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資料をひっくりかえして調べてもらった結果、こんな情報が明らかになった。
どうやらチュートリアルの最終試練で手に入れたアーティファクトは、亡国の騎士と呼ばれるモンスター(?)を召喚して、手となり足となり、主人のお手伝いをさせることができるらしい。
芽吹さんも俺と同じアイテムをもっているので効果は一緒だと思われる。
「あれ、だけどわたしのは『亡国の騎士』って名前ですけど。
「使ってみればわかるんじゃないですか」
というわけで早速召喚を行った。
青白い光とともに、大柄の騎士がでてくる。
甲冑を着ていて、十字架を肩にかついでいる。
最終試練で戦ったのと同型のボスである。
俺は続けて召喚を行い、合計7体の亡国の騎士を召喚した。7体が最大みたいだ。
ハウスマスターは「なんということじゃ、太古に滅んだといわれる大国の騎士をこうも簡単に蘇らせるなんて……」と感嘆している。
「加納さんは7人も召喚できるみたいですね」
「7人との戦いが最終試練でしたから」
「え? わたし一人でしたよ? ていうか、あれ7人同時に相手してたんですか? それでわたしより早く終わってたんですか? バケモノですかね? あ、バケモノでしたね」
「バケモノだなんて。俺は一介のマッサージ師にすぎませんよ」
指をパチンっと鳴らして亡国の騎士たちをネックレスに戻した。消費したMPは1体につき500だ。
「流石はカノウ君だね、これほどの超一級アーティファクトを保有しているなんてね」
「まだ見てもらいたいものがあるんですよ」
「え?」
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アーティファクト
『岩竜の魂』
静かに眠りについている。耳をあてると胎動している。
消費MP:200
効果:スキル『穴を掘る』を習得する。
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「これは岩窟ダンジョンの深度20のボスドロップだね。……え? 深度20のボスドロップ? なんで持ってんの?」
ハウスマスターは目を丸くした。
「まさか……君たちが『ゴールドラッシュ』で最深部に到達してくれていたのかね?」
「ええ。マンチェストさんと一緒に」
「S級3位のマンチェスト!!? 姿が見えないと思ったら君たちと攻略していたのかね。そうか、やはり、君に『無限外套』を渡して正解だった。見込んだ通り、ダンジョン制覇をしてしまうほどの逸材だったわけだね」
ハウスマスターに残りの深淵アーティファクトを査定してもらい「君が何者なのか知ったら消されそうな気がするよ」と、震えた声で言われた。
それから、俺たちは結晶ダンジョンへもぐった。
『岩竜の魂』で使えるスキル:穴を掘るは、なんと階層を移動することができるスキルであった。
もし下へ進むタイプのダンジョンなら無双できるすさまじいスキルだ。
残念ながら、結晶ダンジョンはうえへ登る階層タイプなので使えない。
とはいえ、レベリングして帰ってくるときにスキル:穴を掘るを使えば、30分で帰ってこれるため、帰り道がとても楽ちんだ。
そうこうして、芽吹さんのレベリングの傍ら俺もちょこちょことレベリングをしつつ、あっという間に10日が過ぎた。
最終決戦に備えて、徹底的に鍛え上げた俺たちはもはやかつての殺し屋とマッサージ師のバディではない。
「行きましょう、芽吹さん」
「ええ、加納さん」
約束の日はやってきた。
「カノウ君、メブキ君、君たちをS級冒険者に任命し、11位と12位の序列を与える。攻略家としてB級ダンジョン『岩窟』の制覇をマンチェスト氏とともに成し遂げた功績は、人類の明日を切り開くにふさわしい」
ハウスマスターはギルドに申請をして、この10日の間に、俺たちを特例でS級冒険者に昇級させていた。
おかげでギルドで受けられるサービスが充実した。具体的にはモーニングサービスを無料で受けれる。
「エージェントGもついてくるんですか?」
「私はダークスカイでも指折りのエージェントですから、荒事も得意です。役に立てるかもしれません」
エージェントGと合流して、俺たちはダンジョンハウスの前へやってきた。
俺たちのほかに、ダンジョンハウスの前には400名以上の攻略家たちが集まっていた。
臨時で設営された騎士団駐屯地からは、ジェスター王国の正騎士50名が出兵され、本日より長期的な『結晶』攻略計画がスタートする。
一般向けには『第二回ゴールドラッシュ』という名目で多くの民間戦力を集め、国家も力をそそぐ。
「誰がはやく最奥へたどり着けるか、だれがS級ダンジョン制覇の名誉を手にいれるのか、すべてはダンジョンの神だけが知っている! さあ耳を傾けるのだ! ダンジョンの声を聞き逃すな! 我々はすべての神秘を暴く者! さあ行くぞ、深淵の最奥へ!」
此度もはじめよう、ダンジョン攻略を。
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