我々の最終決戦
俺たちがダンジョンの穴から出て来ると、バリーデリーの町は大混乱に陥っていた。
「深度24のゴツゴツコロガリムシが逃げ出したぞォォォ!!」
「この世の終わりだぁあああ!」
大砲が羅列され、ゴツゴツコロガリムシ討伐に全力をあげる冒険者ギルド。
どこか見覚えのある光景の中、俺たちはゴツゴツコロガリムシが皆の注意をひいてくれているあいだに、ダンジョンを脱出した。
「ああ!! なんで私がハウスマスターに就任した途端
頭をかきむしるハウスマスターの背後を通りぬける。
あとでゴツゴツコロガリムシは処理しておこう。
「あのムシは俺がやっておきます。お二人はどうぞ休んでください」
「そうさせてもらおう! 勇者カノウ、勇者メブキ、君たちはご機嫌最高だ! 本当に素晴らしい攻略だった!」
「それはどうも」
「ありがとうございます」
「この4日間は攻略家としてとても誇らしく貴重なものだった! 君たちとの攻略は近日発売の『マンチェストのダンジョン生活 4巻』にて語らせてもらおう!」
「その時はちゃんとロイヤリティをもらいますよ」
「大人ですからね」
「君たちは本当にお金にはちゃんとしているな……はっはは、もちろん、言われなくても出版社にしっかり
マンチェストはそう言って「では、また会おう! ご機嫌最高な勇者たちよ!」と宿屋へ帰っていった。
「加納さん、わたしも休ませてもらいますね……」
芽吹さんはぺこりと頭をさげて帰っていく。
町では砲撃の音が鳴りやまない。
芽吹さんの安眠を守るためにも、後始末をつけてこようか。
ゴツゴツコロガリムシが森へ逃げこみ、皆が討伐を諦めた段階で、こっそりと災害『ザ・マーチ2』を追いかけてマッサージしておいた。
今回も誰にも見られていない。
ミッション完了だ。
「どうも」
「あ、エージェントG。どこから湧いてきたんですか」
「あの強大な深淵の下僕を倒してしまうなんて驚きです」
「深淵の下僕、そういえばそんな名前でしたね」
「ミスター・加納、よろしければ現在のステータスを見せてもらえますか?」
エージェントGはカササっと近寄ってくる。
──────────────────
加納豊
レベル401
HP 42,255/42,255
MP 35,255/36,700
補正値
体力 38,255
神秘力 36,200
パワー 38,021
スタミナ 36,001
耐久力 34,741
神秘理解 8,012
神秘耐久 7,699
ユニークスキル
≪肉体完全理解者≫
アビススキル
深淵の先触れ
深淵の鑑定
深淵の囁き
深淵の辺境
スキル
ゴッドフィンガー lv3
疲労回復秘孔 lv3
ジェントル・フィンガー lv3
装備品
『追跡者の眼』
『下僕の手記』×10
『7人の騎士』
『無限外套』
─────────────────
やばいよ。もう止まんないよ。
さっき体力が2万の大台に乗ったばっかりなのに。
もう4万イキそうになってんじゃん。
深淵の辺境なるアビススキルが増えてるし。
これまで通りならスキルレベルをあがる『深淵の先触れ』や『深淵の囁き』と同系統のスキルだとは思うのだが。いかに。
──────────────────
『深淵の辺境』
消費MP:3,000
十分な熟練度に達したスキルを深淵のチカラで進化させる。
効果:スキルレベルを3→4に突破させる
解放条件:深淵の下僕を3体倒す
──────────────────
案の定そうだった。
俺は持てるスキルを順番にレベルアップしていった。
幸いにしてMPはかなり余裕があるにで一気にレベルをあげることできた。
エージェントGの傍らでステータスをいじくる。
──────────────────
ゴッドフィンガーlv4
消費MP:18
突いた相手の気力と体力とMPを回復させる
効果:気力16回復 体力16回復 MP16回復
快楽度10
──────────────────
────────────────────
疲労回復秘孔lv4
消費MP:16
波動秘孔を突いて蓄積した疲労を回復させる
効果:疲労回復16
快楽度20
────────────────────
────────────────────
ジェントルフィンガーlv4
消費MP:50
波動秘孔へ指圧を成功させると快楽度3.5倍。
効果:快楽度60
────────────────────
すべての指圧技が強化された。
戦闘による消耗はすべてゴッドフィンガーと疲労回復秘孔さえあれば問題ないだろう。
そして、攻めはジェントルフィンガーだ。
完璧なスキル構成である。
「……なんというステータスをしているんですか……」
エージェントGはようやく声をだせるようになったらしい。
「ぶっちぎりで歴代勇者の中で最強です。というかほとんど人間をやめているとしか思えません」
「誉め言葉ですか?」
「誉め言葉です」
「ありがとうございます」
「どういたしまして。ミスター・加納、最奥アーティファクトはありますか?」
「もちろん。どうぞ」
「『大悪魔の鍵』間違いなく頂戴しました」
「それで大悪魔に会えるんですか?」
「はい。問題なく」
エージェントGは鍵を異空間へと大事にしまい込む。
「20日後、結晶ダンジョンで会いましょう」
エージェントGはそう言うと、いつものごとく霞のようになっていく。
「待ってください」
「ぐへっ」
消える前に首根っこを掴んだ。
「な、なにをミスター・加納」
「いや、毎度その消え方されるとマッサージしたくなっちゃうんですよ」
「っ!! そ、それは脅しですか……! 脅しですね、ごめんなさい許してくださいなんでもしますから」
「ん? 今……まあいいでしょう。なんで20日後に結晶ダンジョンに来て欲しいのかしっかり理由を言ってから消えてください」
エージェントGを離してあげる。
「10日後に結晶ダンジョンの運営が再開されます。20日後に特別な攻略部隊が秘密結社ダークスカイの計画で送り込まれます。その時こそ結晶ダンジョンを攻略する好機です。ダンジョンの最奥にこそ、我々の怨敵、大悪魔は眠っているのですから」
「それじゃあ、そのカギをもって結晶ダンジョンを攻略しろと?」
「ミスター・加納のレベルなら大悪魔を倒せると確信しました」
最初は横暴な態度だったエージェントGがこんなに話してくれるようになるなんて。それに口調もいつからか柔らかくなったし。
この覆面氏も変わった。
「では、最終決戦は地で会いましょう」
エージェントGはそう言って、今度こそ霞となって消えてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます