イキり芽吹
深い森を芽吹さんと並んで歩く。
「大悪魔、強いんでしょうかね?」
「国が滅ぼされるくらいには強いんじゃないですか?」
「うぅ、なんだか自信無くなってきました……」
「大丈夫ですよ。俺がいます」
「そんな自然に恥ずかしい言葉がでてくるってよほど良い性格してるんでしょうね……」
芽吹さんは深くため息をつく。
「良い性格なんて言われたことないですけどね。たいていは『ミスター発情させ期』『全身逆性感帯男』『殺す気か!』と客にも親族にも罵倒浴びせられまくってました」
「ゆ、許せません! 加納さんのことをそんな風に言うなんて!」
実際問題、俺の才能はあまりにも厄介だ。
俺のせいで日本が一時的に核保有国として扱われていた時期があったくらいだし。
なぜなら、隣国が『歩く核弾頭』と俺を戦略核弾頭としてカウントしたからだ。
「あ、モンスターがいますよ」
行く先に四つ足のトカゲみたいなのがいる。
見るからに凶悪である。
芽吹さんは白い太ももを撫でるように手を滑らせると、黒いスカートの下に手先をいれて、マチェーテを引き抜いた。流石は四次元スカート。すかさず投擲して、モンスターが破裂する。そういえばこの人はなんでマチェーテを投げるんだろう。
「死にましたね」
分厚い刃のマチェーテは、斬られたら致命傷なのは間違いないが、投げられて当たっただけでも普通に致命傷になる恐ろしい武器だ。
単純に質量があるので、鉄の塊を投げてるのと一緒なのである。
「その武器何本隠し持ってるんですか?」
「普段は4本だけなんですけど、ユニークスキルのおかげで無限に出せるようになりましたね」
「十分チートでは?」
芽吹さんは死んだモンスターを指さす。
モンスターに突き刺さっていたマチェーテが黒い霧となって消えていく。
実態はあれど、神秘由来の物質なんだろう。
いや、でも人体も光の粒子と化していたし、この世界では物理法則が大きく書き変わっている可能性はあるのか。
「ふっふふ。わたしのステータス、見ます?」
「いや……」
いいです、と言いかけて思いとどまる。
最初の頃は彼女を信用できなかったから見せなかったし、見ることもなかったが、今ではずいぶんこの人のこともわかったきた。
もう彼女をまったく信用できない訳ではない。
「じゃあ、せっかくなので見せてくれますか?」
「っ、はい! ステータス」
──────────────────
レベル65
HP 1000/1000
MP 719/719
補正値
体力 900
神秘力 709
パワー 750
スタミナ 547
耐久力 706
神秘理解 609
神秘耐久 607
ユニークスキル
≪重刃の殺し屋≫
スキル
ウォーターボール
致命の一撃
キルカウンター
アタックカウンター
──────────────────
「ウォーターボールは見たことあるやつですよ。ほら、深度1で使ったやつです。致命の一撃は敵に不意打ちを仕掛けると5秒間だけ補正値が全て+200アップになって総合強化できます!」
芽吹さんは自慢げに胸を張る。
確かに強力なスキルだ。
「キルカウンターは?」
「それは一度敵を殺したらカウンターが始まって10秒以内に次の敵を殺すと、補正値すべてに+10ずつ加算されていきます! アタックカウンターはわたしが攻撃するたびに補正値すべてに+1ずつ加算されていきます! こっちの継続時間は10秒です!」
「ただのチートでは?」
悪用できそうなイメージしか湧かないのだが?
この人もこの人で、なんかヤバいスキル身につけてたんだなぁ……。
「えへへ、わたしって殺し屋の血が流れてるのでやっぱり強くなることを、本能的に望んでるんですよねー!」
「そうですか」
「加納さんのも見せてくださいよ!」
「いや、その」
芽吹さんは明らかに得意になっている。
ちょっと調子に乗っていると言っても過言じゃない。実際それだけ勢いづいても仕方ない強スキルを持っているのは確かだろう。
しかし、はっきり言って俺のステータスの方が強い。強いというか段階が違う。
彼女を落胆させるくらいなら見せないほうがいいのではないだろうか?
「俺のステータスは、その、大した物じゃないっていうか」
「見せてくれないんですか……?」
芽吹さんの瞳からハイライトが失われそうになっている。これでは確定的にヤンデレルート背後から致命の一撃をされかねない。
俺は覚悟を決めてステータスを開いた。
──────────────────
加納豊
レベル249
HP 10,798/10,798
MP 6,902//6,902
補正値
体力 7,798
神秘力 7,402
パワー 7,560
スタミナ 7,007
耐久力 7,179
神秘理解 2,701
神秘耐久 2,653
ユニークスキル
≪肉体完全理解者≫
アビススキル
深淵の先触れ
深淵の囁き
スキル
ゴッドフィンガー lv2
疲労回復秘孔 lv2
装備品
『追跡者の眼』
『下僕の手記』×10
『7人の騎士』
──────────────────
「……ぁ、ぁはは、いやー、やっぱり、流石に加納さんにはかないませんねー、あはは」
芽吹さんは頬を赤く染めて、わざとらしく明後日の方向へ顔を向ける。声はうわずり、目は潤んでいる。俺にはわかる。
「や、やだなぁ、わたしったらなんかはしゃいじゃって! あんな雑魚スキルでイキってて馬鹿みたいだなーなんちゃって!」
「すみません、悪気がはなかったんです」
「ぅぅ、謝らないでくださいね。余計みじめな気分になりますから」
「はぃ……。あ、そうだ」
「?」
自分のステータスを眺めてみて思い出した。
俺にはスキル突破のためのアビススキルがあったのだったな。
「カクカクシカジカ──というわけで、このアビススキルを使えばスキルレベルを上げられるんですよ」
「それをわたしに使ってくれるんですか?」
「もちろん。芽吹さんは仲間ですから」
「か、加納さん……っ!」
──────────────────
レベル65
HP 1000/1000
MP 719/719
補正値
体力 900
神秘力 709
パワー 750
スタミナ 547
耐久力 706
神秘理解 609
神秘耐久 607
ユニークスキル
≪重刃の殺し屋≫
スキル
ウォーターボール lv2
致命の一撃 lv2
キルカウンター lv2
アタックカウンター lv2
──────────────────
「はい、これでオーケーですよ」
「凄いです! 全部一気に突破できちゃうなんて! というか突破という要素がある事が凄いです!」
1→2には1,000MP使うが、総量は7,000MP近くあるのでまだ余裕すらある。
クリスマスプレゼントを受け取ったように目をキラキラさせて喜ぶ芽吹さんを見ていると、良いことをした気分になれた。
と、その時──
「来るな! 来るなぁぁ!」
どこからともなく危機的な声が聞こえてきた。
俺と芽吹さんはうなづき合い、声のする方向へと駆け出した。
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